憲法条文シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
まずは問いに答えて、それから解説を読みます。さらに、発展的な内容については<発展>という項目で解説を試みます。社会科が苦手だなと思う人は<解説>まで。得意だという人は<発展>まで読んでみてください。
復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。
日本国憲法第11条(穴埋め問題)
第十一条
国民は、すべての( )の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、( )の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
日本国憲法第11条(解答)
第十一条
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
日本国憲法第11条(解説)
簡単に言えば、「基本的人権はむちゃくちゃ大事です」ということです。
基本的人権(きほんてきじんけん)とは、人が生まれながらにして持っている権利のことを言います。
条文の中では2つのことを言っています。
- 基本的人権は不可侵(ふかしん)の権利 (条文の中では「侵すことのできない」の部分)
- 基本的人権は永久(えいきゅう)の権利
それでは、日本国憲法にはどのような人権が書かれているのかを簡単に見てみましょう。
基本的人権の概要
まずは基本的人権には4つの種類があるんだということを記憶しましょう。
数を記憶する!
最初に数を記憶しておけば、「何だっけ?」とその内容を思い出そうという感覚になると思います。数を覚えてから項目を記憶するようにします。
最初はざっくり!後でしっかり!
最初から完璧に記憶しようすると、パンクしてしまいます。
なので、数を覚えた後は項目だけを暗記してしまいます。
だいたいOKだなと思ったところでようやく内容に入っていきます。
自由権について
自由権(じゆうけん)とは、国家権力から自由になる権利です。国家権力が「こういう思想を持ちなさい!」とか「こういう宗教を信じなさい!」などといったことを言われない権利です。
内容については後にくわしく勉強しますが、自由権と言われたら「国家権力に対して自由にさせろ!放っておいてくれ!」と言える権利のことをいうのだとざっくり押さえておきましょう。
「自由権」という権利は、かつて国王が絶対的な権力を握っていて一般庶民がそれによって苦しめられたので、できるだけ国家権力から自由になりたいという発想から生まれた権利です。「国家権力から自由になりたい」と主張してイギリスやフランスやアメリカなどで起こったものが市民革命(しみんかくめい)です。
ですから、市民革命がおこった後の社会は、国は国民に対してあまり関わらない(タッチしない)ような社会になっていきました。この状況がその後どうなったのかは、この後、社会権のところでご説明しましょう。
社会権
次に社会権(しゃかいけん)です。社会権と言われたら、国家権力によって弱者の力を引き上げることだと思ってください。
自由権と比較すると、自由権は「国家権力さん、あっちに行ってください!」という権利でしたが、社会権は「国家権力を利用して」いる権利です。内容を見てみましょう。
社会権の内容をイメージで言うと、それぞれ次のような感じになります。
- 「生存権」は生活水準の低い人たちを国家権力によって引き上げる権利
- 「勤労権」は働きたいと思っている人が職に就けるように国家権力が助ける権利
- 「教育を受ける権利」は国民が教育を受けられるように国家権力が国民に対して努力することで、学校を作ったり先生を育てたりだれでも学校に行けるように義務教育の授業料を無償にしたりしています。
- 「労働基本権」は立場的に強い立場に立つ企業に対して労働者が発言する権利を国がバックアップする権利です。
最後になぜ社会権が生まれたのかを説明します。自由権ばかりだと、格差が大きくなってしまうと説明されます。自由に商売したりすると儲かる人と儲けられない人が出てきます。儲かった人はよいのですが、儲からずにお金に困った人たちが増えてくるとその人にとってもつらいですし、社会全体も犯罪が増えたりしてよくない方向に行きがちです。社会権がなく自由権があった時には現にそのようなことが起こっていました。それではマズいということで、社会権が生まれました。20世紀の話です。くわしくは社会権のところでやります。
参政権
参政権(さんせいけん)は、国の政治などに参加する権利です。イメージとして分かりやすいのが選挙権(せんきょけん)ですね。それから立候補できる権利である被選挙権(ひせんきょけん)もこれにあてはまります。
受益権
受益権(じゅえきけん)とは、国民が自分の利益のために国家の積極的な行為を要求する権利です。
請願権(せいがんけん)、国家賠償請求権(こっかばいしょうせいきゅうけん)、裁判を受ける権利及び刑事補償請求権(けいじほしょうせいきゅうけん)の4つですが、くわしくはその単元に行ったら簡単にふれます。
まとめ
いま、簡単に見てきましたが、このような人権はすごく大切だと言っているのが憲法第11条です。
くわしくは条文解説シリーズの別の条文や本編の解説でそれぞれをしっかりと解説していきます。