「誰が議員になれるの?」– 憲法第44条が定める選挙のルール

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日本国憲法の中でも、選挙に関わる規定は民主主義の根幹を支えるものです。

特に、憲法第44条は、国会議員の選挙に関する重要な原則を定めており、誰が議員になれるのか、そして誰が議員を選ぶことができるのか、という基本的なルールを明確にしています。

「国会議員ってどうやって選ばれるんだろう?」

という素朴な疑問を持つ方も多いかと思います。

憲法第44条は、私たち一人ひとりが選挙に関わる権利と、議員として選ばれるための要件を決めており、私たちの生活にも深く結びついている条文です。

選挙において重要なのは、すべての人が平等に選挙に参加できること、そして、議員になるための基準が公正であることです。

憲法第44条は、こうした民主主義の根本を支える理念を形にしたものです。

この条文を理解することは、選挙がなぜ重要なのか、どのように国民の声が政治に反映されるのかを考えるきっかけになります。

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日本国憲法第44条(条文)

第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。

日本国憲法第44条(解説)

統治機構の条文を見る際の前提

統治機構の勉強をする場合には全体像を把握しながら学習をしていきましょう。

日本型ガヴァナンスの図
日本型ガヴァナンスの図

権力分立の話をする場合、必ず上の図が頭に入っていなければなりません。「権力者」の中の話をしているのだという前提が必要です。日本型統治のありかた「シラス政治」の解説は別のコンテンツにあるので参照してください。日本の教科書からはほぼ抹殺されていますが、とても大切な考え方です。

その上で、「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「権力分立」の図を頭に置きながら、どこの機関の何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。

参政権について

この条文は、私たちが持っている人権の中の「参政権」を具体化する条文だという認識を持っておきましょう。

基本的人権の内容
基本的人権の内容

くわしくは、日本国憲法第15条の条文を復習しておきましょう。

憲法第44条の文言とは逆になりますが、選挙人の資格と議員の資格について、解説していきます。

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両議院の選挙人の資格

両議院の選挙人の資格は、公職選挙法という法律に定められています。通常、これを選挙権と言いますね。

(選挙権)
第九条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。

公職選挙法第9条第1項

つまり、18歳以上の者には、衆議院議員と参議院議員の選挙権があるということです。

一方で、一定の人には選挙権が制限される場合があります。高校入試や大学入試ではまず出るレベルではありません。ここからは参考資料としてご覧ください。

(選挙権及び被選挙権を有しない者)
第十一条 次に掲げる者は、選挙権及び被選挙権を有しない。
 削除
 禁以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者
 禁以上の刑に処せられその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
 公職にある間に犯した刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十七条から第百九十七条の四までの罪又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律(平成十二年法律第百三十号)第一条の罪により刑に処せられ、その執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた者でその執行を終わり若しくはその執行の免除を受けた日から五年を経過しないもの又はその刑の執行猶予中の者
 法律で定めるところにより行われる選挙、投票及び国民審査に関する犯罪により禁以上の刑に処せられその刑の執行猶予中の者

公職選挙法第11条第1項

ちょっとわかりにくいので表にまとめてみました。

公職選挙法第11条犯罪の種類選挙権・被選挙権の
制限期間
執行猶予中の
選挙権・非選挙権の
制限
第2号禁錮以上の刑に処せられた人刑が終わるまでなし
第3号禁錮以上の刑に処せられ、その執行を受けることがなくなるまでの人(執行猶予中は除く)刑がなくなるまで(執行猶予中は除く)なし
第4号公務員や公職にある人が賄賂を受け取ったり、自分の職務を利用して不正な利益を得ることに関する犯罪刑が終わってから5年間あり
第5号選挙や投票に関わる犯罪をした人刑が終わるまであり

まずは公職選挙法第11条第1項の2号と3号についての解説です。冒頭で登場する「禁固以上の刑」についての説明です。そもそも刑罰には、「死刑」「懲役刑」「禁固刑」「罰金刑」「拘留」「科料」「没収」の6種類あり、刑罰はいま挙げた順番に重いとされています。話を戻して、「禁固以上の刑」というのは、「死刑」と「懲役刑」と「禁固刑」を指します。それぞれの刑罰についての説明は長くなるのでここでは省きます。このような人たちは選挙権が制限されます。犯罪の種類は問われません。

4号はいわゆる「賄賂に関する罪」で刑罰を受けている人のことを指します。これらの罪は「懲役刑」しか存在しません。その上、刑が終わってから5年間経たないと選挙権や被選挙権の制限が外れなかったり、執行猶予中も制限されるので大変重く扱われていると言えます。

5号はいわゆる選挙関係がらみの罪で「禁固以上の刑」に処されている人のことを指します。5号についても執行猶予中の人も含まれるので、選挙関係がらみの罪の場合はちょっと重く扱われていますね。

両議院の議員の資格

次に議員の資格について解説します。

いわゆる被選挙権ひせんきょけんのことを言っています。こちらも公職選挙法という法律に定められています。

(被選挙権)
第十条
 日本国民は、左の各号の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有する。
 衆議院議員については年齢満二十五年以上の者
 参議院議員については年齢満三十年以上の者

公職選挙法第10条第1項

衆議院議員には満25歳以上の人、参議院議員については満30歳以上の人が立候補することができます。

被選挙権が制限される人について簡単に触れておきます。こちらも高校受験や大学受験で出題されることはおそらくほぼありません。ここからは参考資料としてご覧ください。

(被選挙権を有しない者)
第十一条の二
 公職にある間に犯した前条第一項第四号に規定する罪により刑に処せられ、その執行を終わり又はその執行の免除を受けた者でその執行を終わり又はその執行の免除を受けた日から五年を経過したものは、当該五年を経過した日から五年間、被選挙権を有しない。

公職選挙法第11条の2

賄賂に関する罪で処罰された人は、その刑の執行が終わってからも5年間は被選挙権を有しないとされています。要するに、前の条文と合わせて考えて、10年間は被選挙権を制限されるということです。賄賂をもらった方はより厳しくしているということですね。

まとめ

それでは最後に表でまとめてみましょう!

比較点衆議院参議院
選挙権満18歳以上満18歳以上
被選挙権満25歳以上満30歳以上



選挙は、皆さんがこの国の未来にどう関わっていくかを決める重要な機会です。未来を作る力を持っているのは、他の誰でもなく、皆さん一人ひとりです。ぜひ、その力を使って、自分の未来に向けた一票を投じてください。

 

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