今回は、国民の祝日「成人の日」について取り上げたいと思います。
「成人の日」は、年が明けてから2番目の国民の祝日です。
「成人の日」には、「新成人」の問題行動がニュースで取り上げられますが、「成人の日」に改めて「成人」とは何か?について改めて考えてみたいと思います。
成人の日については「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。」と法律に定義されています。「みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」という意味を込めて、この場を借りて新成人の皆様にメッセージを送りたいと思います。
なお、この記事は船橋市内の小学校で校長を務めていらっしゃり、「日本が好きになる!歴史授業」の名プロデューサーの渡邉尚久先生のお話を参考に作成いたしました。心から感謝申し上げます。
「成人の日」制定の経緯
「成人の日」は、日本において若者が大人としての自覚を持ち、社会の一員としての責任を果たすことを誓う大切な日です。
かつては20歳が成人の節目とされていましたが、令和4年(西暦2022年)の法改正により、現在では18歳が成人年齢となりました。これにより、高校卒業するぐらいの年齢の若者が法律的に大人と認められ、選挙権の行使や契約の締結など、幅広い権利が認められるのと同時に多くの責任を負うことになりました。
成人の日は、もともとは1月15日に祝われていました。これは、古来から行われていた「元服」や「裳着」といった成人儀礼に由来しています。元服は貴族や武士の子が大人として認められるための重要な儀式であり、正月に多く行われていました。特に1月は、新年の始まりとともに新たな節目を迎える象徴的な時期であり、家族や親族が集まる中で元服が行われることが多かったのです。
また、武家社会では正月11日に「鏡開き」と並んで元服の儀式が多く行われていたため、この伝統を踏まえて1月中旬に成人の日を設定する考えが根付いていました。昭和23年(西暦1948年)に「国民の祝日に関する法律」が制定される際の議論でも、公家や武家が行っていた元服の慣習を尊重しつつも、公家の行事や武家の行った正月11日を避け、「正月が一区切りついた後の1月15日」が選ばれました(参議院文化委員会「祝祭日の改正に関する調査報告書」(昭和23年7月3日)より)。
1月15日は、「小正月」と呼ばれ、年神様を送り新年の行事が終わる節目の日でもあります。このため、「新しい年を迎えた若者を祝うのにふさわしい日」として、特に意味のある日と位置づけられました。
しかし、平成12年(2000年)からは「ハッピーマンデー制度」によって、成人の日は1月の第2月曜日に変更されました。日にちが毎年変わることに違和感を覚える人も少なくありませんが、「大人になったことを自覚し、自ら生き抜こうとする青年を祝い励ます日」であることには変わりありません。この日を迎える若者たちは、社会の一員としての責任を再確認し、未来への決意を新たにする必要があります。
成人年齢が18歳に引き下げられた背景
かつては20歳が成人の節目とされていましたが、令和4年(西暦2022年)の法改正により、現在では18歳とされています。
成人年齢が18歳に引き下げられた背景には、世界的な動向と日本国内の少子高齢化問題があります。世界的には、18歳を成人年齢とする国が増加しており、日本でも平成28年(西暦2016年)に改正公職選挙法が施行され、選挙権年齢が18歳に引き下げられました。この流れを受けて、令和4年(西暦2022年)に民法が改正され、成人年齢が20歳から18歳に変更されました(民法第4条)。
この改正には、若者が早期に社会に参加し、社会の活力となることが期待されているという狙いがあります。18歳で成人とされることは、単に年齢の節目を迎えるだけでなく、自立し、社会の一員として責任を果たす覚悟を持つ重要な転機となります。
さらに、成人年齢の引き下げにより、18歳から親の同意なしに契約を結べるようになり、社会での判断力や責任感が一層求められるようになります。これにより、若者の権利と責任が拡大し、経済活動や社会活動においてより主体的に行動する機会が広がります。
かつての「成人式」と「成人」に対する考え方の一例
かつての「成人式」 – 元服と髪上げ
日本では古くから成人式のような儀式が行われており、その歴史は「元服」と呼ばれる儀式にまで遡ります。
元服は、平安時代の貴族や武士階級において、15歳前後の男子が大人として認められるための儀式でした。「元」は首を意味し、「服」は成人の服装を指します。この儀式では、初めて冠をかぶり、名前を成人名に改めることで、社会的に成人として認知されました。女子には「髪上げ」や「まゆはらい」などの儀式があり、これも成人としての自覚を深めるものでした。
幕末に活躍した橋本左内が15歳の時に立てた5つの誓いがすごい!
日本には多くの偉人たちがいますが、今回は幕末に活躍した橋本左内さんを紹介したいと思います。
橋本左内は、天保5年(1834年)に福井藩で生まれました。
橋本左内は、幼い頃に自分の性格について「何をしてもおろそかで、注意が行き届かず、しかも弱く、成長がない。このままでは国や藩のために役に立てない」と分析していたのだそうです。そして、そのような自分を変えようと決意し、15歳の時に「啓発録」という文章を書きました。
「啓発録」には、立派な大人になるための5つの心得が書かれています。その内容を紹介します。
- 「稚心を去る」:子どもっぽい心を捨て、自分の運命を自分の力で変えようとすることが大事です。
- 「気を振う」:負けない心を持ち、常に努力し、油断しないことが大切です。
- 「志を立てる」:目標をしっかり持ち、それに向かって努力を続けることが必要です。
- 「学を勉める」:学ぶことは重要であり、それを世の中のために活かすことも大切です。
- 「交友を択ぶ」:自分を高めてくれる友達を選び、その友達を大切にすることが重要です。
橋本左内は、後に蘭学を学び、緒方洪庵に師事し、福井藩の藩医として活躍しました。その後、福井藩主松平春嶽の側近となり、幕政の改革を推進しましたが、安政の大獄に巻き込まれ、安政6年(1859年)にわずか26歳で処刑されました。彼の生涯は、知識と行動力を兼ね備えた人物として評価されています。
「成人」を迎えるにあたって2つのものに「感謝」しよう – 山田宏 元杉並区長の新成人の挨拶より
Youtubeでも130万人以上の再生数を誇る新成人へのメッセージとして有名なのが元杉並区長の山田宏さんの挨拶です。
この内容を紹介したいと思います。
山田宏元杉並区長は、成人式において若者たちに向けて、毎年心に響くメッセージを伝えていました。その中で特に強調されたのが、2つの感謝の心です。
1つ目は両親への感謝です。「成人したことを一番喜んでいるのは親であり、その親に『ありがとう』と言うことが、成人としての第一歩だ」と語りかけます。この感謝の気持ちを言葉にすることで、親が20年間抱えてきた苦労が報われ、家族の絆がさらに強まります。ですから、成人を迎える若者に対し、「帰ったら両親に『ありがとう』と感謝の気持ちを伝えてほしい」と説いています。
2つ目は、目に見えない人への感謝です。山田宏元杉並区長は、靖国神社に納められた英霊の遺書を紹介し、戦争で命を捧げた若者たちの存在に思いを馳せるよう訴えておられます。特に、20歳で戦死した青年の遺書を読むことで、今を生きる私たちが彼らの犠牲の上に成り立っていることを自覚するように動画で促していらっしゃいます。山田宏元杉並区長は「この人たちの分まで立派に生きる義務がある」とし、彼らの無念を胸に抱きながら、自分自身の人生を精一杯生きることの重要性を強調しています。
この考え方は、「命のバトン 国づくりのバトン」のコンテンツでも述べたように、先人たちが築き上げた日本の歴史や文化を、次世代へと受け継いでいく責任を私たちが担っているという理念と一致しています。私たちの命は、戦争や災害、厳しい時代を乗り越えてきた多くの先祖たちから引き継がれてきたものであり、それを次の世代へと繋げていくことが、今を生きる私たちの使命なのです。
成人の日を迎えた皆さんへ
今も昔も、世の中を変えるのは若者たちの力です。
成人の日を迎える皆さんには、自らの力で未来を切り開いていく責任と誇りを持ってほしいと願います。そして、これからの人生を歩む中で、山田元区長が述べたように、感謝の心を忘れず、他者への思いやりを持ちながら、社会に貢献する大人になっていただきたいと思います。
法律が改正されても、お酒が飲める年齢は変わりませんが、成人としての自覚を持ち、素晴らしい未来を築いてください。成人の日は、皆さんが社会に出て責任を果たす第一歩となる日です。その意味を深く理解し、自らの成長を続けていってください。
国民の祝日を考えるシリーズ – 制作のねらい
日本の祝日がいくつあるのか、ご存じでしょうか?
現在、「国民の祝日に関する法律」によって年間16日の「国民の祝日」が設けられており、その日は休日になります。
この法律には国民の祝日を制定する目的が定められています。
自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。「国民の祝日に関する法律」第1条より
「祝日」が「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日」であることを踏まえ、一人一人の国民が、祝日の意義を考えて、それにふさわしい1日を過ごすことができるようになりたいものです。ところが、その意味について学校で解説されることはあまり多くありません。
そこで、日本まほろば社会科研究室のウェブサイトにコンテンツを立ち上げて、1つ1つの祝日について考えてみたいと考えるようになりました。
他の祝日については、以下のリンク先に掲載されています。