コンビニに新商品が並ぶ。
スマホが毎年のように進化する。
街には新しいカフェや企業が生まれ続ける。
こうした「変化」や「成長」は、実はすべて“お金の流れ”によって支えられています。
けれど、
そもそも企業はどうやってそのお金を手に入れているのでしょうか?
貯金してから工場を建てるのでしょうか?
それとも、宝くじにでも当たっているのでしょうか?
答えは「金融」という社会の仕組みの中にあります。金融とは、お金を必要としている人や企業に、お金を持っている人から資金が流れていく仕組みのこと。つまり、お金の“橋渡し”です。
この橋があるからこそ、企業は挑戦でき、社会には新しいサービスや技術が生まれます。
この記事では、金融の基本から始めて、企業がどのように資金を集め、経済全体がどのように動いていくのかを一緒に考えていきます。
金融とはどのような概念を指すのだろうか?
金融とは何か?
「金融」とは、お金が足りている人や組織から、足りていない人や組織へ、お金を移動させる仕組みのことです。専門的には「資金の融通」と表現します。ここでいう融通とは、まさに貸したり借りたりすることを意味しています。
お金が移動するイメージ:銀行のはたらき
たとえば、みなさんがアルバイトで貯めたお金を銀行に預けるとします。みなさんはお金が今すぐ必要でなければ銀行にお金を預けて「利子(利息)」を受け取ります。ここまではよくある日常の光景です。
一方で、「カフェを開きたい」「新しい機械を買ってもっと商品を作りたい」と考えている人や企業もいます。しかし、手元にその資金が足りないことも多いのです。
そこで登場するのが銀行です。銀行は、預金として集めたお金を、必要としている人や企業に貸し出します。借りた人は、将来そのお金に利息を付けて返します。
このようにして、「お金を使ってほしい側」→銀行→「お金を必要としている側」へとお金が移動する。これこそが「お金の融通=金融」の具体的な姿です。
金融がなければどうなるか?
もし金融という仕組みがなかったらどうなると思いますか?
お店を始めたい人は、自分で必要なお金を貯め終わるまで何年も待たなければなりません。企業も、工場や設備を大きくするタイミングを逃してしまい、経済全体の成長は止まってしまいます。
金融があるからこそ、挑戦したい人は挑戦できるし、お金を預けている人も利息を受け取って得をする。社会全体としても、仕事が生まれ、商品やサービスが増え、人々の生活が豊かになっていくのです。
小括
ここまでで、金融とは単なる「お金の話」ではなく、社会全体にお金を循環させる大切な仕組みであることを確認しました。
次は、この金融の中でも特に重要なテーマ「企業はどのようにしてお金を集めるのか(資金調達)」について見ていきます。
企業の資金調達の手段
資金調達とは?
企業が新しい商品を作ったり、工場を建てたり、店舗を広げたりするには、必ずお金が必要になります。この「企業が活動のために必要な資金を集めること」を資金調達と言います。
資金調達には大きく分けて2つの方法があります。1つは、企業が自分自身でお金を準備するやり方(自己金融)、もう一つは、外からお金を集めるやり方(直接金融・間接金融)です。
自己金融(内部資金)
まず最初は自己金融です。これは企業が、他人から借りるのではなく、自分の中でお金を用意する方法です。
内部留保
まず内部留保について解説します。
内部留保とは、企業が商品やサービスを売って得た利益のうち、株主に配当として渡さず、会社の中に残しておくお金のことです。これは企業自身の財産であるため、自己資本(自分のものとして使える資本)に分類されます。
たとえば、あるパン屋さんが1年間で1000万円の利益を出したとします。そのうち800万円を店の改善や設備投資のために取っておくとすれば、それが内部留保です。
減価償却費
企業が機械や車などの設備を買っても、その価値は何年も使ううちに少しずつ減っていきます。この「価値の減少分」を経費として毎年計算して貯めておくお金が減価償却費です。
たとえば、100万円の製造機械を10年使うとしたら、毎年10万円ずつ価値が減ると考えます。この「10万円」を毎年積み立てておけば、10年後に新しい機械を買い替える資金になります。これも企業が自分の力で貯めるお金ですから、自己資本(自分のものとして使える資本)に分類されます。
外部からお金を集める方法(その1) ― 直接金融とは?
自己金融は、安全で安定した資金源ですが、問題もあります。それは、お金が貯まるまで時間がかかるということです。
企業が成長しようとしている時、「新店舗をすぐ出したい!」「海外にも進出したい!」「大規模な工場を建設したい!」と考えても、内部留保だけを頼りにしていたら、そのスピードに追いつけません。
企業が自分の力(内部留保など)だけでお金を用意できないとき、外部から資金を集める必要が出てきます。この外部からの資金調達は大きく2種類に分けられ、そのひとつが直接金融です。
直接金融とは、企業が銀行などを介さず、投資家や一般の人々から直接お金を集める方法です。代表的な例は株式と社債です。
株式とは何か?
株式とは、企業が資金を集めるために発行する証券で、その会社の所有権の一部を示すものです。株を持つ人(株主)は、株式会社の持ち主の一人になります。株式を買った人は株主と呼ばれ、会社の一部分を持っていることになります。
株式で集めたお金は返済する必要がありません。企業が成功して利益を出せば、株主には利益の一部である配当が支払われたり、株価が上がって売却益が得られることもあります。しかし、もし企業の業績が悪くなっても、企業は株主にお金を返す義務はありません。
そのため、株式で集めたお金は自己資本(自分のものとして使える資本)に分類されます。
なお、株式会社について詳しく知りたい人は、株式会社の仕組みを解説した日本まほろば社会科研究室のコンテンツをご覧ください。
社債とは何か?
社債とは、企業が不特定多数の投資家や機関投資家(保険会社・証券会社など)から資金を集めるために発行する有価証券で、一定の利子を支払い、満期に元本を返すことを約束したものです。
ここで大事なのは、銀行のような特定の相手からお金を借りるのではなく、世の中の広い投資家に向けて「お金を貸してくれる人を募集する」という仕組みになっている点です。つまり、社債は「借金」であることに間違いありませんが、銀行借入とは借り方の仕組みが違うのです。
企業は社債を買ってくれた人に対し、
「〇年後に必ず元本を返します。その期間中は利子も支払います」
と約束します。つまり、これは借金です。
そのため、社債で集めたお金は他人資本(借りたお金)に分類されます
なぜ企業は直接金融を使うのか
株式の場合は返済の必要がなく、社債でも銀行より低い金利で借りられることもあるため、企業が大きな資金を一度に集めたいときに効果的です。
特に、近年の日本では、企業が銀行に頼るだけでなく、株式や社債で資金を集める直接金融の比率が増えてきています。
外部からお金を集める方法(その2) 間接金融 ― 銀行からお金を「借りる」資金調達
ここからは後者、間接金融を見ていきます。
間接金融とは?
間接金融とは、銀行や信用金庫などの金融機関を“仲介役”として資金を貸し借りする仕組みのことです。
もう少し正確に言うと、「お金を預ける人(家計)と、お金を借りたい企業の間に銀行が入り、銀行が預かったお金を企業へ貸し出す」という形をとります。つまり、企業は投資家から直接お金を借りるのではなく、銀行という“間”に入る存在から借りるので、これを間接金融と呼びます。
なぜ“間接”なのか?
実際の資金の流れをイメージしてみましょう。
- 家計が銀行にお金を預ける(=預金)
- 銀行は預かったお金の一部を、資金を必要とする企業へ貸し出す(=融資)
- 企業は利子をつけて銀行に返済する
- 銀行はその利子の一部を、預金者に利息として支払う
つまり、お金は「預金者 → 銀行 → 企業」というルートで移動します。
銀行が真ん中に入っているからこそ、“間”接金融なのです。
冒頭の「金融とは何か?」のところで説明した「カフェを開きたい」「新しい機械を買ってもっと商品を作りたい」といった場面で銀行から借入を行う事例がまさにこの間接金融なのです。
間接金融のメリットとデメリット
銀行からお金を借りるという方法には、いくつかの特徴があります。
まず、企業は借りたお金を必ず返さなければなりません。元本に加えて利子も支払う義務があるため、銀行からの借入は「他人資本」に分類されます。これは、株式のように返済しなくてもよい資金とは性質が大きく異なります。
しかし、銀行借入には利点もあります。社債を発行したり株式を公開したりする場合に比べ、手続きが比較的シンプルで、交渉によって資金の使い道や返済方法を柔軟に決めることができるため、資金調達のスピードが速いという特徴があります。ただし当然ながら、銀行側は企業にお金を貸す前に、本当に返済できるのかどうかを審査します。さらに、借りた後も返済計画を守らなければならないという責任が伴います。
たとえば、小さなパン屋さんが「もっと大きなオーブンを買って工房を広げたい」と考えたとします。社債を発行するには専門的な手続きや信用力が必要になりますが、銀行に相談すれば、事業計画がしっかりしているかどうかの審査を経て、必要な資金を比較的早く借りることができます。
このように、銀行借入は、企業にとって最も身近で現実的な資金調達の方法として利用されているのです。
直接金融と間接金融の比較
直接金融及び間接金融で登場した事例を表形式でまとめてみました。
| 株式 | 社債 | 銀行借入 | |
|---|---|---|---|
| 性質 | 所有権の一部を売る | 借金 | 借金 |
| お金の出し手 | 株主(出資者) | 投資家・機関投資家など | 銀行などの金融機関 |
| 返済義務 | なし | あり | あり |
| 資本分類 | 自己資本 | 他人資本 | 他人資本 |
| 金融の種類 | 直接金融 | 直接金融 | 間接金融 |
まとめ
金融とは、単なる「お金の貸し借り」ではありません。家計・企業・政府のあいだでお金を循環させることで、社会全体の活動を支える“血液”のような役割を持っています。
とくに企業にとって、金融は成長するための生命線です。内部留保によって少しずつ力を蓄えることもあれば、株式や社債を通じて多くの人々から資金を集めることもあります。銀行からの借入も含め、こうした資金調達の方法があるからこそ、企業は新しい挑戦に踏み出すことができます。
もし金融という仕組みがなければ、多くの企業は夢の途中で立ち止まり、日本の社会もここまで発展しなかったでしょう。金融は、企業の活動を裏側で支え、日本の経済成長や私たちの暮らしの豊かさを生み出してきた静かな力なのです。
次にコンビニの新商品や、街の新しいお店を見かけたとき、そこにも金融という見えない橋が架かっていることを、少しだけ思い出してみてください。


