【高校政治経済】フローとストックを基礎から解説|国民所得・国富などの主要指標

フローとストックの主要指標をわかりやすく解説 国民経済の指標と政策
フローとストックの主要指標をわかりやすく解説
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「フロー」と「ストック」

――経済の授業で必ず出てくる言葉ですが、最初はどちらがどちらかわからなくなってしまう人も多いのではないでしょうか。

実はこの二つは、国民経済を理解するための“ものさし”であり、私たちの日常生活とも深くつながっています。

フローは「年収」に、ストックは「貯金や資産」にたとえるとイメージしやすいでしょう。

本記事では、GDPや国民所得といったフロー指標、国富や対外純資産といったストック指標を具体的な数字や身近な事例で解説します。フローとストックの違いを押さえておくことで、日本経済のニュースや授業内容がぐっと理解しやすくなります。

フローとは?ストックとは?

フローとは「一定期間の流れ」

フローとは、一定の期間における財やサービスの流れを表す概念です。つまり、「どれだけ入ってきて、どれだけ出ていったか」をある期間ごとに数えるものです。

たとえば、高校生のみなさんが一年間でお小遣いをどれくらいもらったかを考えてみましょう。毎月1万円ずつもらったとすれば、1年間で合計12万円入ってきます。その一方で、その12万円を全部使い切ったとすると、支出も同じく12万円です。入ってくる流れと出ていく流れを合わせた24万円が、まさにフローのイメージになります。

国全体でも同じです。日本では「年度」といって、4月1日から翌年3月31日までをひと区切りにします。家計簿をつけるように、その1年間でどれだけお金が動いたのかを記録し、経済の活動量を測るのです。

ストックとは「ある時点の蓄え」

これに対してストックは、ある時点でどれだけ資産が蓄積されているかを示す概念です。例えるなら「今この瞬間、財布にいくら入っているか」ということです。

先ほどのお小遣いの例でいうと、1年間に12万円入ってきて、同じだけ出ていったなら、最後に財布に残るのは0円です。これがその時点でのストックです。

よく使われるたとえに「お風呂の水」があります。蛇口から入ってくる水の量がフロー、浴槽にたまった水の量がストックです。10リットルの水が入ってきて、8リットルが出ていけば、フローは「10+8=18リットル」、そしてストックは浴槽に残った2リットルということになります。

つまり、フローは「時間を切り取ってどれくらい動いたか」、ストックは「ある瞬間にどれくらい残っているか」。この二つをセットで見ることで、経済の動きと蓄えの両方を理解できるのです。

小括

フローとストックの違いがわかれば、経済の指標を学ぶ準備が整いました。次回は「フローを表す指標」や「ストックを表す指標」を見ながら、実際に国の経済活動がどのように測られているのかを解説していきます。

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フローを表す指標

総生産額 ― 一年間にどれだけつくられたか

総生産額」とは、ある一年間にその国でつくられたモノやサービスをすべて合計した金額のことです。

たとえば、ある町をイメージしてみましょう。町にはパン屋さんもあれば、美容院もあり、自動車工場もあります。一年間にパン屋さんが売ったパンの合計金額、美容院が提供したカットやカラーの料金の合計、自動車工場がつくった車の合計金額――それらを全部足したものが「総生産額」です。

ただし注意点があります。同じものを二重に数えてはいけないというルールです。パン屋さんを例にすると、パンをつくるために小麦粉を仕入れますよね。ここで「小麦粉の値段」と「パンの値段」をそのまま足してしまうと、小麦粉の価値が二回カウントされてしまいます。

具体例を見てみましょう。

  1. パン屋さんは、小麦粉を 10万円 で仕入れました。
  2. その小麦粉を使ってパンを作り、一年間で 100万円分 のパンを売りました。

もし「小麦粉10万円」と「パン100万円」を両方足してしまうと、合計は 110万円 になります。ところが、パン100万円の中には、すでに小麦粉代10万円が含まれています。これをそのまま合計すると、小麦粉の価値を二回数えたことになってしまいます。

そこで経済の計算では、「小麦粉代10万円」は引いてしまい、最終的に新しく生み出された価値=付加価値90万円 をパン屋さんの生産額として数えます。

だから、「原材料」や「燃料」など、ほかの産業から買ってきた分は引き算して計算するのです。

つまり総生産額とは、その国が一年間で「新しく生み出したものの価値の合計」を表す数字なのです。

国内総生産(GDP: Gross Domestic Product) ― 国内で生み出された価値

国内総生産(GDP)」とは、一国の国内で一定期間中に生産されたすべての付加価値の合計額(市場価格評価)を指します。日本国内で行われた生産・サービス提供のすべてが対象で、日本企業だけでなく外国企業の国内生産も含まれます。

たとえば日本で考えてみましょう。

  • 日本の自動車工場が一年で 5,000万円分 の車を生産しました。
  • 日本のレストランが一年で 500万円分 の料理を提供しました。
  • 海外の人気アーティストが日本でコンサートを開き、チケット収入が 2,000万円 ありました。

これらはすべて日本国内で行われた活動なので、合計して 7,500万円 が日本のGDPに含まれます。

逆に、日本人アーティストがアメリカでコンサートをして 1,000万円 の収入を得たとしましょう。この場合は活動が「アメリカ国内」で行われたため、日本のGDPには入りません。アメリカのGDPに計上されるのです。

つまりGDPとは、「国内で新しく生み出された価値の合計」であり、「その国の中か外か」で区切る考え方です。

そもそも、なぜGDPという指標をわざわざ計算するのでしょうか。

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理由は、この数字が「国の経済力を比べる基準」になるからです。

たとえば同じクラスでテストをすると、点数を比べれば勉強の成果がわかりますよね。GDPはそれと同じで、国ごとの経済の大きさを比べる“物差し”なのです。

  • アメリカは世界一のGDPを持つ国で、世界最大の経済大国といえます。
  • 日本は1980年代後半から2009年(平成21年)まで第2位を維持していましたが、2010年(平成22年)に中国に抜かれて第3位に下がりました。さらに近年はインドに追い抜かれて第4位となっています。

こうした順位を知ることで、自分の国の経済の位置づけが見えてきます。またGDPの増え方や減り方を調べれば、その国の景気がよいのか悪いのかを判断することもできます。

つまりGDPは、国の経済の「成績表」として役立つ、とても重要な指標なのです。

国民総所得(GNI: Gross National Income) ― 国民が手にした所得

国民総所得(GNI)」とは、その国の国民が一年間に得た所得を合計したものです。ポイントは「国内」ではなく「国民」で区切るところです。

たとえば日本を例にします。なお、数字は架空のものです。

  • 日本の自動車工場が国内で 5,000万円 の車を生産し、その利益は日本の会社に入ります。これはGDPにもGNIにも含まれます。
  • ある日本人がアメリカで働き、300万円 の給料を得ました。これは海外での仕事ですが「日本人が得た所得」なのでGNIには含まれます。ただし、GDPには入りません。
  • 一方で、日本のコンビニで働く外国人留学生が 200万円 の給料を得ました。これは日本国内での経済活動なのでGDPには含まれますが、「外国人の所得」なのでGNIには入りません。

この場合をまとめると…

  • GDPは「国内」で生み出された→ 5,000万円+200万円=5,200万円。
  • GNIは「国民が得た」→5,000万円+300万円=5,300万円。

「国民総所得(GNI)」は、その国の国民(企業や個人)が国内外で得た所得の合計です。これに対し、GDPは国内で生産された価値の合計を示します。

たとえば日本の企業が海外で事業を広げて利益を上げれば、その分は日本の国民の所得としてGNIに反映されます。逆に、外国企業が日本国内で大きく稼いでいれば、それはGDPに入りますがGNIには入りません。

つまり、GNIを見ると「国民全体が実際にどれだけ稼いでいるのか」がわかるのです。国民の生活水準や豊かさを知るためには、GDPよりもGNIの方が大事になることもあります。

日本の場合、GNIはGDPよりも少しだけ高い傾向があります。なぜなら、日本企業が海外で工場を運営したり投資をしたりして、そこから利益や配当を得ているからです。つまり「海外で稼いだ分がプラスされている」ので、国民が手にする所得(GNI)は国内生産だけを見たGDPよりも上回るのです。

国民純生産(NNP: Net National Product) ― すり減りを差し引いた本当の価値

国民純生産(NNP)」とは、国民総所得(GNI)から「固定資本減耗こていしほんげんもう」を差し引いたものです。

固定資本減耗とは、かんたんに言えば「機械や設備が使っているうちに古くなって壊れていくこと」です。

難しい言葉が並んでいるので具体例を出して一緒に考えていきましょう。

たとえば、あるパン屋さんが新しいオーブンを 100万円 で買ったとします。このオーブンは10年間使えると見積もられているので、毎年 10万円分 ずつ価値が減っていくことになります。これを「減価償却げんかしょうきゃく」といいます。

パン屋さんが一年間でパンを売って 200万円 の収入を得たとしましょう。そのとき、オーブンの「10万円分のすり減り」を考慮しなければ、実際の利益を正しく表すことができません。

この場合、

  • パン屋の生産額(GNIに含まれる部分)は 200万円
  • そこからオーブンのすり減り分(減価償却費) 10万円 を引く
  • 残った 190万円 が「NNP(国民純生産)」

となります。

もし減価償却を考えずに「200万円」とだけ計算してしまうと、「毎年同じオーブンがタダで使える」と仮定したのと同じことになってしまいます。けれど実際にはオーブンは古くなって、いずれ買い替えが必要です。

だから、オーブンのような設備のすり減りを差し引いた方が、「本当に残った価値」に近い数字になります。

NNPは「国全体として一年間にどれだけ純粋な価値を増やしたのか」を示す指標なのです。

国民所得(NI: National Income) ― 国民に残る本当の取り分

国民所得(NI)」とは、国民純生産(NNP)からさらに「間接税」を引き、「補助金」を足して計算したものです。

つまり、国民が実際に手にする“本当の取り分”を表す数字です。

たとえば、ある飲食店をイメージしましょう。

  • そのお店が一年間で生み出した純粋な価値(NNP)は 1,000万円 でした。
  • ところが、この中には「消費税」や「酒税」のような間接税が含まれています。たとえば 100万円 の税金を国に払わなければならないとします。
  • その一方で、もし国から「地域活性化のための飲食店補助金」として 50万円 をもらえたとしたら、その分は実際の所得が増えます。

この場合の計算はこうなります。

1,000万円(NNP)-100万円(間接税)+50万円(補助金)= 950万円

この 950万円 が「国民所得(NI)」です。これが国民に残る実際の取り分なのです。

ここで、「間接税」について少し説明しておきましょう。

間接税とは、お店や企業を通して間接的に国に納められる税金のことです。

たとえばコンビニでジュースを買うと、値札は110円。そのうち10円は消費税です。お客さんはお店に110円払いますが、そのうち10円分をお店が国に納めます。

つまり、税金を直接国に払っているわけではないのに、結果的に消費者が負担している税金――これが「間接税」です。

ここで国民所得(NI)の意義について考えてみましょう。GDPやGNIは「どれだけ生産したか」「どれだけ稼いだか」を示してくれますが、税金や補助金を考えないと、国民が実際にどれだけの所得を手にしているのかはわかりません。

国民所得(NI)は、税や補助を考慮に入れたうえで、国民が手にする“リアルな所得”を示すものです。だからこそ、生活の実感や豊かさに最も近い指標といえるのです。

三面等価の原則 ― 見方が違っても同じ金額になる

国民所得を理解するうえで欠かせないのが「三面等価の原則」です。

これは、一国の経済を「つくった額」「分け合った額」「使った額」という3つの立場から見ても、最終的には同じ金額になるという原則です。専門的には、それぞれ「生産面(付加価値総額)」「分配面(所得合計)」「支出面(支出合計)」と呼ばれます。

たとえば、あるパン屋さんのケースを考えてみましょう。パン屋さんが生み出した付加価値の合計(生産面)、そこから支払われた賃金や利益などの合計(分配面)、そして消費者がパンを買うために払った代金の合計(支出面)は、すべて一致するように計算されます。これにより、経済統計の信頼性が保たれるのです。

国民所得は、一つのお金の流れを三つの角度から見ることができます。それぞれに名前がついていて、生産国民所得・分配国民所得・支出国民所得と呼ばれます。

まず、生産国民所得とは、1年間に国民がどれだけの価値を生み出したかを示します。農業(第一次産業)、工業(第二次産業)、サービス業(第三次産業)に分けて、それぞれの生産額を合計し、さらに海外で日本人が稼いだ分も加えます。つまり「どれだけつくったか」を見る立場です。

次に、分配国民所得とは、生み出された価値がだれにどのように分けられたかを示します。従業員の給料(雇用者報酬)、銀行への利子や土地の地代(財産所得)、会社の利益(企業所得)といった形で分配されます。つまり「だれがどれだけ受け取ったか」を見る立場です。

最後に、支出国民所得とは、生み出された価値がどのように使われたかを示します。家計の消費、企業の投資、政府の支出、そして輸出入の差額などを合計します。つまり「どこに使われたか」を見る立場です。

改めてパン屋さんの例に戻りましょう。

パン屋さんが一年でパンを1,000万円分生産しました。これが「生産面」から見た国民所得です。

その1,000万円は、従業員の給料600万円、店主の利益300万円、銀行への利子100万円に分配されます。これが「分配面」から見た国民所得です。

さらに消費者はパンを買うために1年間で合計1,000万円を支払いました。これが「支出面」から見た国民所得です。

このように、生産額・分配された金額・支払った金額はすべて1,000万円。見方が違っても、同じお金の流れを別の角度から見ているだけなので、必ず一致するのです。

「三面等価の原則」があるからこそ、国民所得はどの側面から測っても同じ金額になり、数字の信頼性が保たれます。もし生産と分配、支出の数字が大きくずれていたら、それは統計の取り方に問題があるというサインになります。つまり、この原則は「経済を正しく測れているかどうか」を確認するための大事な基準でもあるのです。

フローの指標をめぐるまとめ

ここまで見てきたように、国民経済を理解するための「フローの指標」には、いくつもの段階があります。まずは総生産額から始まり、国内総生産(GDP)、国民総所得(GNI)、国民純生産(NNP)、国民所得(NI)へと、引き算や調整を重ねながら「より現実に近い国民の取り分」を示していきました。さらに三面等価の原則によって、「生産・分配・支出」という三つの側面から測っても、理論上は同じ金額になることを学びました。

そして近年では、GDPやGNIといった従来の指標だけでは測れない「豊かさ」を補うために、国民純福祉(NNW)やグリーンGDP、国民総幸福(GNH)、新国民生活指標(PLI)など、より多面的な物差しも考え出されています。そこには「経済の大きさ=豊かさ」ではないという発想が込められています。

フローの指標は、一言でいえば「一年間に国がどれだけ動き、どれだけ稼いだのか」を示すものです。しかし、それは単なる数字の集まりではなく、国の景気や人々の暮らし、国際的な位置づけを知るための重要なヒントです。GDPやGNIといった基本的な指標を押さえることはもちろん、新しい指標が登場している背景を理解することで、「経済とは何を測るものなのか」という問いを自分なりに考えることができるようになります。

私たちの生活はニュースや授業でよく耳にする「GDP成長率」や「国民所得」といった言葉と直結しています。だからこそ、これらの指標の意味や限界を知っておくことは、自分の暮らしをより広い視点からとらえる第一歩になるのです。

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国民経済におけるストックの指標

フローが「一年間にどれだけ稼いだか」という“流れ”を表すのに対して、ストック「ある時点でどれだけ蓄えがあるか」を表す指標です。

たとえば、蛇口から流れてくる水がフローだとすれば、水槽にたまっている水の量がストックにあたります。

国富 ― 国の資産の合計

国富こくふとは、国が持っている財産から借金を引いたものです。ここでいう財産は、大きく分けて「工場や土地などのお金以外の財産(実物資産)」と「外国に対しての貸し借りの差(対外純資産)」の二つです。なお、銀行預金などの国内のお金のやりとりは、国全体で見ればプラスとマイナスが打ち消し合うため、国富の計算には入れません。

ここから、実物資産と対外純資産について説明していきます。

実物資産(非金融資産)

実物資産とは、お金そのものではないけれど金額に換算できる資産のことです。たとえば、工場に残っている商品や原材料の在庫は、そのまま「お金に換えられるもの」なので資産に含まれます。ある工場が倉庫に500万円分の商品を抱えていたら、それは500万円のストックです。

さらに工場や機械、トラックのように長期間にわたって使われる設備も「有形固定資産」として数えられます。もしある会社が1億円の工場と3,000万円の機械を持っているとしたら、それだけでかなりの規模の資産になります。

また形がなくても価値を持つもの、たとえばコンピュータソフトや特許権などは「無形固定資産」と呼ばれます。たとえば、自社開発したソフトに1,000万円の価値があるとすれば、それもストックに入ります。

そして土地や森林のように、人が新しく作ったわけではないけれど価値を持つものは「有形非生産資産」として数えます。日本は特に土地価格が高く、東京の都心では一坪で数百万円することも珍しくありません。そのため日本の国富の中では、土地の占める割合がとても大きいのです。

対外純資産

一方で、国富には「外国との貸し借りの差」も含まれます。これを対外純資産といいます。イメージしやすくするために、国債を例に考えてみましょう。

もし日本人が外国の国債を100兆円持っていて、外国人が日本の国債を60兆円持っていたとします。この場合、日本が「貸している分」から「借りている分」を引くと、差し引き40兆円が残ります。これが日本の対外純資産です。

日本は長らく世界有数の債権国(対外純資産残高世界一)でしたが、最新のデータではドイツに次ぐ第2位となっています。これに対して、アメリカ合衆国は世界一の経済大国であるにもかかわらず、大きな借金を抱える「債務国」になっています。この対比を知ると、数字だけではなく国の経済の性格まで見えてきます。

金融資産はなぜ国富に含まれないのか?

ここで一つ疑問が生まれます。銀行に預けているお金や銀行からの貸し出しは、なぜ国富に含まれないのでしょうか。

例えば、あなたが銀行に1,000万円を預けているとします。あなたにとってはプラスの資産ですが、銀行にとっては「返さなければならない負債」です。国全体で見れば、+1,000万円と-1,000万円が打ち消し合ってゼロになります。だから金融資産は国富には含めないのです。

ただし、例外もあります。日本人が持っている外国の国債は、日本にとっては「外国から返してもらう権利」なのでプラスに数えます。逆に外国人が日本の国債を持っている場合、それは日本が「将来返さなければならない借金」になるのでマイナスとして扱われます。

ストックの指標をめぐるまとめ

ストックとは「ある時点での国の資産の蓄え」を示すものでした。国富(国民資本)は、実物資産と対外純資産の合計で表されます。工場や機械、ソフトウェアや土地のように目に見える・見えない様々な資産が積み上がって国の基盤をつくり、さらに外国との貸し借りの差し引きも加えて計算されます。

銀行預金や貸し出しは国全体で見るとプラスとマイナスが相殺されてゼロになるため含まれませんが、日本が持つ外国資産や、逆に外国人が保有する日本国債は数えられます。日本は世界一の債権国として、対外純資産が大きなプラスになっているのも特徴です。

ストックは一言でいえば、「いま現在、この国がどれだけの財産を抱えているか」を示す指標なのです。

まとめ: フローとストックの対比

ここまで見てきた「フロー」と「ストック」を並べて考えると、それぞれの役割の違いがはっきりと浮かび上がります。

フローは、一定期間にどれだけの財やサービスが生産され、どれだけのお金が動いたのかという“流れ”を示します。まるで「一年間の給料や収入」にあたるものです。

一方、ストックは、ある時点でどれだけの資産や財産が蓄えられているかを示します。これは「通帳の残高や家や土地といった持ち物の総額」に近い感覚です。

たとえば、ある家庭を例に考えると、父母の年収やアルバイトの収入といった“1年間で入ってくるお金”がフローにあたり、その家庭が持つ貯金やマイホーム、さらには借金の有無などがストックにあたります。収入が多くても貯金がなければ不安ですし、逆に収入が少なくても蓄えがあれば安心できます。

国全体でも同じで、フローとストックの両方を見て初めて経済の姿が正しく理解できるのです。

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