日本のお正月と天皇陛下の四方拝:新年を迎える儀式とその意味

元日についてわかりやすく解説してみました 日本の「国民の祝日」について考えるシリーズ
元日についてわかりやすく解説してみました
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執筆:加代 昌広 (KÁSHIRO Masahiro)

今回は国民の祝日を考えるシリーズで「元日がんじつ」について取り上げたいと思います。

元日というと、クリスマスが終わってから1週間後にやってくるイベントで、子どもたちはお年玉がもらえる時期でとてもウキウキする季節だと思います。

ところが、私たちがお正月を楽しんでいる頃、我が国の象徴である天皇陛下はとても大切な宮中祭祀に臨まれていることをご存知でしょうか?

今回は、お正月を迎えるにあたってのお話と、元日に行われる天皇陛下のとても大切な宮中祭祀である四方拝についてわかりやすく解説をしたいと思います。また、お正月を文化的に楽しむために、国語WORKSの松田雄一先生のYoutubeチャンネルを多く引用してみました。

なお、この記事は、船橋市内の小学校で校長を務め、「日本が好きになる!歴史授業」のプロデューサーである渡邉尚久先生のお話や、国語WORKSの松田雄一先生の授業内容を参考に作成しました。

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お正月を迎える前までの準備 – 歳神様をお迎えするための準備

年末が近づくと、多くの家庭ではお正月を迎える準備が始まります。日本の伝統では、新年を迎えるためにまず大掃除を行い、家の中を清めます。大掃除は、歳神様をお迎えするための重要な準備です。

実は皇居においても大掃除が行われます。この点について、国語WORKSの松田雄一先生のYoutubeチャンネルでとても詳しく解説されています。

天皇陛下がいらっしゃる皇居においても大掃除が行われます。明治天皇や昭憲皇太后が大掃除についての御製と御歌をお詠みになられています。

お正月は、歳神様という神様を家にお迎えし、その年の豊作と家族の健康を祈る行事です。

歳神様が無事に降りてこられるように、家の中を清め、新しい年を迎える準備を整えるのが大掃除です。そして、門松やしめ縄を飾り、歳神様が宿る場所を用意します。門松は歳神様が降臨するための目印であり、しめ縄は清浄な場所であることを示すものです。

また、全国の神社では、大みそかに「大祓おおはらえ」が行われます。これは、旧年中の穢れを清め、新たな年を清浄な気持ちで迎えるための儀式です。大祓を通じて、人々は新年を迎える準備を整えます。

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元日に行われる「四方拝」

そして迎える元日。

日本中が新年を祝う中で、私たちの国の象徴である天皇陛下は、国民のために特別な儀式を皇居で行います。これが「四方拝しほうはい」です。

四方拝とは、毎年1月1日の夜が明ける前に行われる宮中の重要な儀式です。天皇陛下は皇居内の庭で四方を拝み、国家の平和と国民の幸福を祈ります。この儀式は平安時代以前から続く、日本でも最も古い宮中行事の一つとされています。

四方拝はただの新年の行事ではありません。天皇陛下はこの儀式で「国民のあらゆる災いを、まずは自分が引き受けますように」と祈られます。この姿勢は、天皇陛下が自らを犠牲にしてでも国民を守りたいという強い思いの表れです。

特に注目すべきは、他の儀式では天皇陛下に代わって代理が務める「御代拝ごだいはい」が許されることもありますが、四方拝だけは天皇陛下ご自身でなければ行えないという点です。それだけ、天皇陛下にとっても国家にとっても重要な儀式であることが分かります。

四方拝は、元日の早朝に始まります。天皇陛下は御所で身を清めた後、「黄櫨染御袍こうろぜんのごほう」という特別なお召し物に着替えられます。雛人形の男雛が着ていることもあります。

さて話を儀式の話に戻しましょう。午前5時30分頃、元日の早朝、歳旦祭に先立って天皇陛下が宮中三殿の西側にある神嘉殿しんかでん(11月23日の新嘗祭のみが行われる御殿)の前庭で行われます。天皇陛下は金燭や脂燭の明かりに照らされながら庭に降り立ち、屏風で囲まれた御座に進みます。そして、伊勢神宮をはじめとする四方の神々を拝し、「国安かれ 民安かれ(=国が安らかでありますように、民が平和でありますように)」と祈られます。

四方拝は、かつて紀元きげん天長てんちょう明治めいじと並んで「四大節」と呼ばれ、日本にとって重要な祝祭日の1つでした。現在も、元旦に行われる四方拝は宮中祭祀きゅうちゅうさいしの中心的な行事であり、天皇陛下が国家と国民に対する責任を再確認する重要な場となっています。平安時代の記録には「国難があるときは、天皇がそれを引き受けますように」という記述も見られ、天皇陛下の「国民を守る」という役割は、長い歴史の中で変わらず受け継がれています。

鎌倉時代の天皇である第84代の順徳じゅんとく天皇がお記しになられた『禁秘御抄きんぴみしょう』という書物においても、

凡そ禁中の作法は、神事を先とし、他事を後とす。旦暮敬神の叡慮懈怠なし。

つまり「禁中(宮中)での作法では、神様に関する行事が一番優先され、他のことはその後になります。天皇は、朝から晩まで神様を敬う気持ちを決して忘れてはいけません。」と記されています。

四方拝は、私たち国民にとって直接目にすることのない儀式ですが、天皇陛下が国民の幸せを願い、自らを犠牲にしても守ろうとする深い愛情を感じられる重要な行事です。

元旦に家族や友人とお雑煮を囲むとき、ぜひ天皇陛下が寒空の下で「国安かれ、民安かれ」と祈られている姿に思いを馳せてみてください。感謝の気持ちを持って新年を迎えることで、より一層お正月が特別なものになるかもしれません。

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お正月を楽しく過ごそう

元日はとてもおめでたいですね。

お正月は楽しく過ごすこともまた大切です。ここではお正月を彩る様々な文化的なものについて紹介してみたいと思います。

お節料理を食べよう!

皆さんはお節料理を食べますか?

お節料理にもいろいろな由来があります。それは国語WORKSの松田雄一先生のYoutubeチャンネルで勉強することができます。お節料理にはいろいろな謂れがあります。家族で食卓を囲むときにお話をしてみるのもいいと思います。松田雄一先生の動画は食育という面でもとても勉強になる動画です。

皆さんはお節料理の名前の謂れをどれぐらいご存知でしょうか?ぜひ一緒に勉強してみましょう。

お正月にまつわるいろいろな植物

新年には新年を祝うためにいろいろな植物が飾られます。

それについても、国語WORKSの松田雄一先生のYoutubeチャンネルで勉強することができます。

お正月はとてもおめでたい日です。それに相応しい植物というのもあるのですね。

和歌を楽しむ

お正月に和歌を詠んで慶賀を愉しむのもよいと思います。

この点について、「万葉集」を編纂した大伴家持が詠んだとても素晴らしい和歌があります。

この点についても、国語WORKSの松田雄一先生のYoutubeチャンネルでとても素晴らしい授業を展開してくださっています。

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事

この和歌は、「万葉集」の一番最後に載せられている歌です。

簡単な意味を紹介すると、

「新しい年の始まりである初春の今日、降り積もる雪のように幸福や吉事が積もってたくさんの良いことをもたらしてくれますように…」

という意味なのですが、松田先生の授業動画にはさらに深い意味が解説されています。同時に英訳の解説もあります。和歌を英語で説明できることはグローバル社会の昨今で日本の文化を世界にアピールできる素晴らしいスキルです。和歌と英訳を暗誦してもいいと思います。

4516首が収録されている万葉集の一番最後(トリ)がこの和歌ですがとても素敵ですよね?

歌「一月一日」を楽しむ!

お正月といえば歌もあります。

大祭日に祝うためとして「一月一日」という曲があります。お正月に音楽と国語の勉強をしてみませんか?昔からの歌の歌詞は国語の勉強にもなります。こちらも国語WORKSの松田雄一先生のYoutubeチャンネルで詳しく解説されています。

そして、テンポを早くしたポップスのアレンジでぜひ歌ってみましょう!こちらの動画は日本まほろば社会科研究室のYoutubeチャンネルにアップされているものです。

「1月1日」をポップスのアレンジで歌ってみよう!

念の為、千家尊福さんが作詞した「1月1日」の歌詞を掲載しておこうと思います。

年のはじめの ためしとて
終わりなき世の めでたさを
松竹たてて 門ごとに
祝う今日こそ たのしけれ

初日のひかり さしいでて
四方にかがやく けさの空
君がみかげに たぐえつつ
あおぎ見るこそ とうとけれ

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国民の祝日を考えるシリーズ – 制作のねらい

日本の祝日がいくつあるのか、ご存じでしょうか?

現在、「国民の祝日に関する法律」によって年間16日の「国民の祝日」が設けられており、その日は休日になります。

この法律には国民の祝日を制定する目的が定められています。

自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。「国民の祝日に関する法律」第1条より

「祝日」が「国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日」であることを踏まえ、一人一人の国民が、祝日の意義を考えて、それにふさわしい1日を過ごすことができるようになりたいものです。ところが、その意味について学校で解説されることはあまり多くありません。

そこで、日本まほろば社会科研究室のウェブサイトにコンテンツを立ち上げて、1つ1つの祝日について考えてみたいと考えるようになりました。

他の祝日については、以下のリンク先に掲載されています。

「国民の祝日を考える」シリーズ
本来学校できちんと教わるべき日本の祝日の1日1日の趣旨を教わることが少ない中で、日本まほろば社会科研究室は、客員研究員の加代昌広先生と共に日本の祝日を紹介するコンテンツを制作することにしました。

 

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