【高校政治経済】市中銀行とは?──預金・貸出・為替・信用創造を中心にわかりやすく解説

市中銀行とは?預金業務・貸出業務・為替業務・日本版金融ビッグバン・信用創造をわかりやすく解説 市場経済のルールと仕組み
市中銀行とは?預金業務・貸出業務・為替業務・日本版金融ビッグバン・信用創造をわかりやすく解説
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あなたが今日、コンビニで買ったおにぎり。スマホ代の引き落とし。アルバイト代が振り込まれた瞬間──。これらすべてに共通しているのは、「銀行が必ずどこかで動いている」という事実です。

けれども、私たちは普段その仕組みを意識することがありません。銀行がどんなふうにお金を預かり、どんなふうに貸し、どんなふうに社会全体の“お金の流れ”をつくり出しているのか──。
そして、なぜ銀行がちょっと動くだけで、日本全体の経済が大きく揺れるのか。

この問いに向き合うと、金融の世界は単なる数字の集まりではなく、社会の血流をつくるダイナミックなネットワークとして姿を現します。

そのネットワークの中心にいるのが、市中銀行(commercial bank)です。給料の振込口座も、買い物の決済も、企業の資金調達も──私たちの生活と経済のほぼすべてが、市中銀行を通じて動いています。

にもかかわらず、その正体は意外と知られていません。

「銀行って、お金を預けたり引き出したりする場所でしょ?」

もしそう思っているなら、この記事はあなたの金融リテラシーを根本から更新する入口になります。銀行は単なる「お金の置き場所」ではなく、社会にお金を供給し、経済を循環させる“心臓”のような存在なのです。

本稿では、市中銀行の基礎から始め、日本版金融ビッグバン、メガバンクの誕生、信用創造と信用収縮の仕組みまでをわかりやすく解説します。

なお、中央銀行である日本銀行の働きについては別稿でくわしく解説していますのでぜひご覧ください。

それでは、市中銀行の解説から始めましょう。

「市中銀行」とは何か?

私たちが日常生活で出会う金融機関には、さまざまな種類があります。しかし、その中心に位置し、経済の血流を支えている存在が「市中銀行」と呼ばれる金融機関です。この言葉を正しく理解することが、民間金融機関全体を見通す第一歩になります。

市中銀行とは、一般の個人や企業と直接かかわり、預金や貸出、送金といった基本的な金融サービスを幅広く提供する銀行を指します。英語で commercial bank と呼ばれる種類で、日本では「普通銀行」という名称とほぼ同じ意味で使われます。人々の給料が振り込まれる口座、買い物で使うキャッシュカード、企業が資金調達のために受ける融資など、社会を動かすお金の多くは、この市中銀行を経由して流れています。

この市中銀行こそが、民間金融機関の要であり、他の金融機関(信託銀行・信用金庫・証券会社・保険会社など)を理解する際の基準点になります。

だからこそ、まず市中銀行の役割と業務内容を正確に押さえることが、民間金融機関という単元を学ぶ上で最も自然な入口になるのです。

市中銀行を支える基幹業務

市中銀行の仕事は、表面的には「口座をつくる場所」や「お金を預ける場所」というイメージで語られがちですが、実際には社会の資金循環をつくり出す根本的な役割を持っています。銀行の仕事を理解するためには、まず「預金業務」「貸出業務」「為替業務」という3つの基幹業務を軸に捉える必要があります。

1つ目の預金業務とは、人々がお金を安全に保管し、必要なときにいつでも引き出せるようにするための仕組みであり、銀行の最も基本的な仕事です。ここで重要なのは、銀行の世界では「貯金」ではなく「預金」という語が正式名称である点です。ゆうちょ銀行のように「貯金」を用いる例もありますが、市中銀行では必ず「預金」と表現されます

2つ目の貸出業務は、集めた預金を企業や個人に貸し出す業務であり、銀行が利益を得る中心的な活動です。預金者に支払う利子よりも高い利子でお金を貸し出すことで、銀行は収益を上げています。具体例を示してみましょう。例えば、皆さんが銀行に100万円を預け、その預金利率が年0.02%であったとします。皆さんは1年後に200円の利息を受けることができます。他方、銀行が同じ100万円を企業に年2%で貸し出すと、銀行は1年後に2万円の利息を受け取ることができます。銀行は皆さんにに200円を払い、企業から2万円を受け取るわけですから、差し引き19,800円が利益になります。このように、「安く集め」、「高く貸す」ことで得られる利鞘りざやこそが、銀行という組織を支えているのです。多くの皆さんは「銀行=預ける場所」という感覚を持ちがちですが、実際には銀行の本質は「お金を社会に供給する存在」に近いのです。銀行はどこで利益を上げているのか?という疑問はこの説明で解決できると思います。

3つ目の為替かわせ業務は、現金を直接動かさずに資金を決済する仕組みであり、銀行振込・口座振替といった日常的な動作はもちろん、ドルと円を交換する外国為替にも同じ原理が用いられます。外国為替では、紙幣が国境を越えて飛ぶのではなく、銀行間の帳簿が書き換わることで取引が成立します。この「現金を介さずにお金を動かす仕組み」こそが、現代の経済を支える要となっています。

このように、市中銀行の仕事は、長い歴史の中で少しずつ姿を変えながら発展してきました。これらはどれも、社会にお金を安全に循環させるために欠かすことのできない役割で、明治期以来の銀行制度を支えてきた中核でした。預金業務は人々が安心してお金を預けられる場所を提供し、貸出業務は集まった資金を企業や個人に貸し出すことで経済活動を広げ、為替業務は現金のやり取りを伴わずに決済を行う仕組みを整えるものでした。

日本版金融ビッグバンで拡がる銀行業務

大きな転換点となったのが、橋本龍太郎内閣(平成8年〜平成10年(西暦1996年〜1998年))が推し進めた「日本版金融ビッグバン」と呼ばれる金融制度改革です。この改革は、長らく続いたバブル崩壊後の金融不安、国際的な金融取引の高度化、そしてロンドンの金融自由化に象徴される“世界的な金融の再編”に日本も対応せざるを得なくなったという状況を背景に進められました。

当時の日本では、銀行、証券、保険の3分野が強固に分離され、金融サービスは縦割りのまま閉ざされていました。

日本の金融制度が依然として日中の営業時間を前提とした仕組みのままで、国際市場のスピードに追いつけなくなっていたことがありました。しかし、海外では投資銀行と商業銀行が複合的にサービスを提供し、金融取引は24時間オンラインで動く時代に入っていたにもかかわらず、日本の制度はそれに追いついていませんでした。ロンドンやニューヨークでは銀行・証券・保険の壁を取り払い、時差を利用して資金が地球規模で回り続ける新しい金融の流れが生まれていたのに、日本は旧来の規制と縦割り構造に縛られていたのです。橋本内閣はこうした遅れを課題ととらえ、「金融の国際競争力を高めること(グローバル)」「透明性の高い市場を整えること(フェア)」「利用者にとって便利で開かれた金融を実現すること(フリー)」を目標に掲げ、銀行と証券、保険の業務の壁を段階的に取り払っていきました。

その結果、銀行窓口で保険商品や投資信託、国債などを購入できるようになり、金融サービスの姿はそれまでの枠組みを越えて複合的なものへと変わっていきます。今日、銀行が一つの窓口で幅広い金融商品を提供しているのは、まさにこの改革の延長線上にあるのです。制度の変化は急激に見えるかもしれませんが、背景には「世界の金融の動きに取り残されてはならない」という危機感と、「閉ざされた日本の金融を開く」という明確な政策目的がありました。

日本版金融ビッグバンのような金融自由化を経て、銀行はもはや「預金と貸出だけを行う古いタイプの金融機関」ではなくなりました。証券や保険の分野と相互に行き来しながら、多様な金融商品を一体として提供する「総合金融サービスの窓口」としての性格を強めています。同時に、大企業や国際金融を支える巨大な銀行グループと、地域経済を守る地方銀行、店舗を持たずに効率的な取引を提供するネット銀行──こうした民間金融機関の多層的な構造を押さえることで、日本の金融システムは単なる「お金の出し入れの場」ではなく、経済と地域社会を結びつける複雑なネットワークであることが見えてきます。

この点、別稿にて日本版金融ビッグバンの解説をしていますので、よろしければご覧ください

三大メガバンクの誕生とその背景

市中銀行の全体像を理解する上で、三大メガバンクの存在は欠かせません(三大メガバンク」についての詳しい解説はこちらを参照)。三菱UFJ三井住友みずほの3つは、日本の民間金融の中心として圧倒的な規模を持っています。しかし、この三つの銀行は最初から巨大だったわけではありません。戦後の財閥解体によって旧財閥の企業群が六つの企業集団に再編され、その後もバブル崩壊や経営危機を経て幾度もの合併が行われるなかで、現在の三大メガバンク体制が形づくられていきました。

地域を支える地方銀行と、新世代のインターネット銀行

市中銀行には、全国規模で展開する都市銀行のほかに、地域に密着した地方銀行があります。千葉銀行や横浜銀行、静岡銀行などはその地域経済を支える重要な存在であり、地域企業の融資や個人の取引を日常的に支えています。かつて相互銀行と呼ばれていた第二地方銀行も、北洋銀行や名古屋銀行などの名前で存続しています。

一方、21世紀に入って新しい形の銀行としてインターネット銀行が登場しました。インターネット銀行とは「ネットでしか使えない銀行」ではなく、実店舗を持たずにサービスを提供する銀行のことで、セブン銀行や楽天銀行、イオン銀行などがその代表例です。コンビニATMを中心に幅広いサービスを提供し、従来の銀行とは異なる利便性をもつ新しい金融形態として広がりました。

市中銀行以外の金融機関──信金・信組・JAバンク・証券・保険・ノンバンクとは?

銀行の世界を見渡すと、「金融機関」と呼ばれる存在は銀行だけではありません。むしろ日本の金融システムは、市中銀行を中心としながらも、信託銀行、信用金庫、信用組合、農協、証券会社、保険会社、さらにはノンバンクと呼ばれる企業まで、さまざまな金融プレイヤーが役割を分担しながら成り立っています。

信託銀行は、長い時間をかけて資産の管理や運用を行う専門機関です。個人の遺産管理や企業の年金基金の運用など、「信託」という制度に基づいて、長期的な視点で資産を扱う点が特徴です。銀行の中でも特に長期資金を扱う守備範囲を担っています。

一方、信用金庫信用組合は地域住民や中小企業が協同組織として運営する金融機関であり、利益追求よりも地域への貢献や会員への支援を重視しています。金融の地場を支える存在として、市中銀行とは異なる温度感で地域の経済を支え続けています。

農協(JAバンク)漁協の金融部門は、農業や漁業といった第一次産業を支えるために設けられた金融機関で、農林中央金庫(農林中金)はその中核を担っています。農家が必要とする資金の融通や、収穫期までの資金繰りの調整など、産業特性に合わせた金融サービスを展開しています。

証券会社は株式や国債などの売買を仲介し、企業の資金調達や個人の資産形成に関わる金融機関です。日本版ビッグバン以降は、銀行と証券の垣根も低くなり、金融サービスの領域はより横断的になりました。

保険会社もまた重要な金融機関です。生命保険や損害保険を通じて大量の保険料を集め、それを長期的に運用することで、家計や企業のリスクを支える役割を果たしています。

最後に、ノンバンクと呼ばれるクレジットカード会社や消費者金融、リース会社などがあります。これらは銀行のように預金を受け入れることはできませんが、貸出を中心に金融サービスを提供しており、現代の消費生活に深く関わる存在となっています。

こうした数多くの金融機関が互いに役割を分担することで、日本の金融システム全体が一つの大きなネットワークとして機能しています。

次は、このネットワークの中心にある銀行が、どのようにして「信用創造」という独特の仕組みを通じて新しい預金通貨を生み出しているのかを見ていきましょう。

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信用創造とは? – 銀行はどうやって“お金を生み出す”のだろうか?

信用創造とは?

私たちは「銀行は預かったお金をそのまま貸している」と思いがちです。

しかし実際には、それだけでは説明しきれないことが起きています。世の中で使われている預金通貨の量は、銀行が預かったお金の総額よりもずっと大きい。これはなぜなのでしょうか。

この謎に答える鍵が、信用創造という仕組みです。

信用創造しんようそうぞうとは、銀行が持つ預金の一部を貸し出し、その貸出先で新たな預金が生まれ、その預金がまた貸し出され……という連鎖によって、当初よりも大きな預金通貨が経済の中に生み出される現象のことを言います。これも銀行の大きな役割の1つです。

ここで大事なのは、

  • お札が増えているわけではない
  • 銀行同士の口座の“数字”のやり取りの中で生まれている
  • 現金として引き出されなければ連鎖が続く

という3点です。

ちょっとわかりにくいと思いますので、具体例を交えながら説明をしたいと思います。

信用創造の具体例

あなたがA銀行に100万円を預けたところから、この物語は始まります。信用創造が始まる「最初の預金」のことを本源的預金ほんげんてきよきんと言います。

銀行はこの100万円を丸ごと貸し出すわけにはいきません。「預かったお金の一部は、いつ誰が引き出しに来ても対応できるように手元に残す」という決まりがあるからです。この割合を支払準備率(預金準備率)といいます。

もし支払準備率が10%なら、A銀行は100万円のうち10万円を手元に残し、残り90万円を貸し出すことができます。

ある日、A銀行は会社Xにこの90万円を貸し出します。会社Xは、そのお金でパソコンを購入し、代金を電気屋さんに支払いました。電気屋さんは受け取った90万円を自分の口座のあるB銀行へ入金します。するとB銀行では、電気屋さんの口座に新しく90万円の預金が記録されます。

ここで、多くの皆さんは「A銀行の預金がB銀行に移っただけなんじゃないの?」「新しいお金が生まれているという感覚がよくわからない」という素朴な疑問を持つと思います。

しかし、これは直感的にはそう見えるものの、実際の仕組みはまったく違います。

この点を理解するために、いったんA銀行の帳簿に戻ってみましょう。あなたがA銀行に100万円を預けた瞬間、銀行の帳簿には次のように記録されます。

  • 負債(銀行があなたに返す義務)100万円
  • 資産(銀行が保有する現金)100万円

この段階では、資産100万円=負債100万円でバランスしています。

ところが、A銀行が会社Xに90万円を貸し出した瞬間、帳簿は次のように変化します。A銀行から90万円の現金がなくなり、貸出金という資産が90万円新たに発生します。

  • 資産:現金 100万円 → 10万円へ減少
  • 資産:貸出金 90万円(新たに発生)
  • 負債:あなたの預金100万円(変化なし)

銀行が貸し出すとき、資産の貸出金(90万円)は「銀行が新たに作ったお金」として世の中に出ていくことになります。したがって、銀行はあなたの預金を誰かの財布へ移したのではなく、「新しい貨幣を帳簿の中で創造した」のです。

次に、会社Xはこの「新しく生まれた90万円」で電気屋さんに支払いをします。電気屋さんがその90万円をB銀行へ入金した時点で、B銀行には「電気屋さんの預金90万円」が新たに記録されます。つまりB銀行にとっては、その90万円は「新しく預かったお金」なのです。

この動きを社会全体で見るとどうなるか?

  • A銀行:あなたの預金…100万円
  • B銀行:電気屋さんの預金…90万円

つまり、合計190万円の預金が社会に存在していることになるのです。

あなたが預けた100万円だけしかないはずなのに、銀行の貸出を通じて 貨幣の総量が増えている わけです。この「預金残高が社会全体で積み上がっていく」構造こそ、信用創造の本質です。

そしてB銀行も、預かった90万円のうち10%に当たる9万円を手元に残し、81万円を新たに貸し出します。この81万円を受け取ったY社が別のお店への支払いに使い、そのお金がC銀行に入金されると、今度はC銀行で 81万円の新しい預金 が生まれます。

そして、C銀行は81万円のうち10%の8.1万円を残し、72.9万円を貸し出す。

要するに、B銀行、C銀行…と同じ動きが繰り返されるたびに、

  • 90万円
  • 81万円
  • 72.9万円……

というように、新しい預金が連鎖的に生まれているのです。

では、最終的な預金総額はどこまで増えるのでしょうか?

銀行が「預金の90%を貸し出していく」という流れは、数学の等比数列と同じ構造をもちます。その等比数列の初項が90万になり(=貸出によって「新しく生まれた預金」の総量)、公比は0.9となります。ここでは等比数列の和を求めたいので、

S=90万/(1-0.9)

つまり、「貸出によって新しく生まれる預金」の総額は 900万円となります。ここに本源的預金の100万円を加えると、最終的に、社会の預金通貨は1000万円まで増えるということになります。

この話が理屈としてちゃんとできていれば、高校生向けの学習参考書に掲載されている以下の公式の意味も説明がつきます。

信用創造=本源的預金×支払準備率〔預金準備率〕分の1の計算で算出できる。

上の公式にそのまま代入すると、本源的預金が100万円、支払準備率が10%(0.1)であれば、

100万円×(1/0.1)=900万円 となり、先ほどの等比数列の和と同じ値になります。

貸し出せる割合と支払準備率は裏表の関係です。計算上は一般の参考書の公式を代入すれば問題ありませんが、原理をちゃんと知っておくことは本質理解につながります。

信用収縮とは?

信用収縮とは、銀行から預金が引き出され、貸出の連鎖が途中で止まり、社会全体の預金通貨が減少していく現象のことをいいます。

信用創造が「預金の足し算」だとすれば、信用収縮はその逆の「預金の引き算」です。

信用収縮は、多くの場合「人々の不安」から始まります。

たとえばある銀行に不祥事や経営危機のうわさが流れると、多くの預金者が一斉に「お金を引き出そう」とします。銀行は預かったお金のすべてを金庫に保管しているわけではなく、その多くを貸出しに回しているため、もし先に他の預金者が大量に引き出してしまうと、後から来た預金者に返す現金が不足する可能性があります。すると、「本当かどうかはわからないけれど、念のため今のうちに引き出しておこう」という行動が連鎖し、結果として実際には健全だった銀行でも取り付け騒ぎが起こることがあります。

すると銀行は、預金者に支払うために

  • 手元の現金を渡す
  • 企業への貸出の一部を回収する
  • 他の銀行にある決済用資金を動かす

などの調整を迫られます。

この過程で、

  • 銀行の貸出 → 減る
  • その銀行に生まれるはずだった預金 → 生まれない
  • すでにあった預金 → 引き出されて消える

という流れが生じ、信用創造の「連鎖」が途中で断ち切られます。

たとえば、A銀行に預けていた人々が一斉に50万円を引き出したとします。するとA銀行の内部ではどのようなことが起こるでしょうか?

まずA銀行が持っている現金が減ります。すると、A銀行は現金を確保しなければならないため、一部の貸出しをストップしたり、回収を急ぐ必要が出てきます。

A銀行が貸し出しをやめると、次の銀行(B銀行)で生まれるはずだった預金が生まれません。B銀行で預金が生まれなければ、その後の

  • C銀行の預金
  • D銀行の預金
  • E銀行の預金……

と続くはずだった連鎖もすべて止まってしまいます。

すると、社会全体の預金総額は、信用創造で増えていた分が急速に失われていくことになります。

つまり、預金が引き出されると「連鎖的な貸出→預金生成」の流れが途切れ、預金通貨が一気に減り始めるのが信用収縮の本質です。

銀行が貸し出しに慎重になり、預金の減少や不良債権の増加によって「もうこれ以上は貸せない」と判断し始めると、お金の流れは急速に細くなっていきます。

まず影響を受けるのは企業です。仕入れや投資、従業員の給料といった日々の支払いは、ほとんどが銀行からの資金調達によって支えられています。しかし、融資の審査が厳しくなれば、必要な資金を確保できず、事業の継続そのものが危うくなります。こうした企業が増えると、倒産が相次ぎ、経済の基盤そのものが揺らぎます。

家計も例外ではありません。住宅ローンや教育ローンの審査はより厳しくなり、これまでなら借りられたはずの金額が通らなくなる状況が生まれます。「貸し渋り」や「貸しはがし」と呼ばれる現象が広がると、人々の消費意欲は冷え込み、社会全体の支出が減っていきます。

こうした変化が積み重なると、経済はまるで縮み上がるように萎縮し、「お金が回らない」悪循環が生まれます。信用創造が血液の流れをつくり出す仕組みだとすれば、信用収縮はその血流が一気に細くなる状態です。血が巡らなければ体が動かなくなるように、お金が巡らなければ経済も動かなくなります。

ここまで見てきたように、信用創造と信用収縮は銀行と預金者の行動によって自然に生じてしまう現象です。

しかし、経済の血流が急に細くなると、人々の生活や企業活動に大きな影響が及びます。

そこで、日本銀行(日銀)は、

  • 金利を下げて貸し出しを促す
  • 市場に資金を供給する
  • 逆に過熱しているときには金利を上げて落ち着かせる

といった 金融政策 を行い、信用創造と信用収縮のバランスを調整しているのです。

つまり、金融政策とは、信用創造が過剰にも不足にもならないよう、経済の血流を一定に保つための役割といえます。

日本銀行が行う金融政策の具体的な内容は別稿であらためて解説します。

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