【高校倫理】古代インドの思想|ジャイナ教とは何か ― 不殺生・無所有・輪廻・解脱の思想を中心にわかりやすく解説 ―

ジャイナ教についてわかりやすく解説 源流思想 - インドで生まれた思想
ジャイナ教についてわかりやすく解説
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高校倫理で学ぶ「古代インドの思想」では、バラモン教を中心とする宗教的世界観のもとで、人々が苦しみの原因や生き方を問い続けてきた過程が扱われます。

その中から、仏教やジャイナ教といった新しい宗教が、バラモン教の思想を継承・批判しながら成立していきました。

今回はジャイナ教について取り上げていきます。

ジャイナ教は、紀元前6世紀頃のインドで誕生した宗教で、仏教とほぼ同時代に成立しました。現代のインドでも信者を持ち続けており、特に不殺生ふせっしょうを極限まで徹底する教えで知られています。

バラモン教の身分制度や儀式中心の宗教観に疑問が生まれた時代に、人々は「人はなぜ苦しむのか」「どうすれば輪廻から自由になれるのか」という問いに、さまざまな答えを探しました。ジャイナ教は、その問いに対する最も厳格な答えの一つだったと言えます。

ジャイナ教の誕生と時代背景

ジャイナ教の開祖は、ヴァルダマーナという人物です。彼は後に「マハーヴィーラ(偉大な英雄)」と尊称されるようになりました。活動したのは紀元前6世紀後半頃で、仏教の開祖シャカ(ガウタマ・シッダールタ)とほぼ同時代の人物です。

この時代のインド社会では、都市が発達し、商工業が盛んになりつつありました。一方で、バラモン教が支えてきたヴァルナ制度や、形式化した祭祀に対して、「本当にそれで人は救われるのか」という疑問が広がっていました。

こうした状況の中で、バラモン教の権威を否定し、自らの修行と悟りによって真理に到達しようとする思想家たちが現れます。ヴァルダマーナもその一人であり、仏教以外の有力思想家として「六師外道」の一人に数えられています。

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徹底された不殺生(アヒンサー)の思想

ジャイナ教の最大の特徴は、不殺生(アヒンサー)の徹底です。不殺生(アヒンサー)とは、あらゆる生命を傷つけないという考え方を指しますが、ジャイナ教ではその対象が人間だけに限られません

動物や昆虫はもちろん、肉眼では確認できないほど微細な生命に至るまで、命を奪うことは重い罪であると考えられました。そのため、熱心な信者の中には、歩く際に虫を踏まないよう地面を掃きながら進んだり、口に布を当てて呼吸とともに小さな生物を吸い込まないようにしたりする人もいました。

さらにジャイナ教では、身体的な殺生だけでなく、他人を傷つける言葉や悪意も「殺生」と同じく否定されます。言葉によって相手の心を傷つけることも、生命を害する行為だと考えられたのです。

苦行と解脱を目指す生き方

ジャイナ教の究極の目的は、他のインド思想と同様に、輪廻りんねからの解放、すなわち解脱げだつです。輪廻りんねとは、生命が何度も生まれ変わりを繰り返す苦しみのサイクルを指します。

ヴァルダマーナは、この輪廻から抜け出すためには、徹底した修行無所有が必要だと説きました。無所有とは、財産や物だけでなく、欲望や執着そのものを手放すことを意味します。

ジャイナ教が人々に強い印象を与えた背景には、修行のあり方に対する徹底した姿勢がありました。ジャイナ教は、不殺生を真に貫くためには妥協のない実践が必要であると考え、厳しい苦行や無所有を解脱に至るための不可欠な条件として位置づけました。生きることそのものが他の生命を害する可能性を含む以上、自らを厳しく律し、欲望や執着を限りなく削ぎ落とすことこそが、魂を輪廻の束縛から解放する道であると考えたのです。

このような考え方は、誰にとっても容易な道ではありませんでしたが、その分、ジャイナ教は「真理を徹底的に追求する宗教」として独自の存在感を持つようになりました。同じ時代に成立した仏教が、極端な苦行を避ける中道ちゅうどうを説いたのに対し、ジャイナ教は、苦行を通してこそ魂の浄化が可能になると考えました。こうした姿勢の違いは、古代インドにおいて多様な解脱の道が模索されていたことを示しており、ジャイナ教はその中でも最も厳格な実践を選び取った宗教であったと評価することができます。

商人たちに支持された理由

ジャイナ教は、バラモン教の身分制度を否定し、誰もが修行によって解脱を目指せると説きました。そのため、特定の階級に限らず多くの人々に受け入れられましたが、特に強く支持したのがヴァイシャ(商工業者)階級でした。

ヴァルナ制のヒエラルキー
ヴァルナ制のヒエラルキー

その理由は、不殺生の教えと生活の現実にあります。農業では土地を耕す際に虫や微生物を殺してしまう可能性があるため、厳格な信者は農業に従事できませんでした。結果として、比較的殺生を避けやすい商業に携わる人が増え、ジャイナ教徒は経済力を持つ集団へと成長していったのです。

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現代インドと世界への影響

ジャイナ教は、仏教のようにアジア全域へ広がることはありませんでしたが、現代のインドでも確かな存在感を保っています。特に商業や金融の分野で活躍する信者が多く、社会的影響力も小さくありません。

また、ジャイナ教の不殺生の思想は、後の時代に大きな影響を与えました。その代表例が、インド独立の指導者ガンディーです。彼が掲げた「非暴力・不服従」の思想には、ジャイナ教のアヒンサーの精神が色濃く反映されているとされています。

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まとめ ― 現代の高校生への問い

ジャイナ教を一言でまとめるなら、「あらゆる生命を傷つけないという不殺生を極限まで貫き、厳しい修行と無所有によって輪廻からの解放を目指す宗教」だと言えるでしょう。

仏教が多くの人に開かれた実践的な道を探ったのに対し、ジャイナ教は、妥協を許さず真理を追い求める道を選びました。どちらも、「人はどう生きるべきか」という同じ問いに向き合いながら、まったく異なる答えを示した思想です。

現代の高校生が学ぶ倫理や哲学、さらには環境問題や非暴力の思想を考えるとき、ジャイナ教の生き方は私たちに問いを投げかけます。

便利さや効率を優先する社会の中で、私たちはどこまで他者や生命に配慮できているでしょうか。

古代インドの思想は、今を生きる私たち自身の生き方を見つめ直す鏡でもあるのです。

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