【高校政治経済】マネーストックとは?意味・仕組み・物価との関係を図でわかりやすく解説

マネーストックとは? 国民経済の指標と政策
マネーストックとは?
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朝、コンビニでいつものおにぎりを買おうとしたら、「あれ、10円上がってる?」と思ったことはありませんか。

ニュースでは「物価上昇」や「金融緩和」などの言葉が流れていますが、それが自分たちの生活とどう関係するのか、ピンとこない人も多いでしょう。実は、こうした物価や景気の変化の背景には、ある“見えない数字”が関係しています。

それが――マネーストックです。

「マネーストック」とは、簡単にいえば“今、世の中にどれくらいのお金が出回っているか”を示す指標のこと。お金の量が増えたり減ったりすることで、経済は元気になったり、逆に冷え込んだりします。たとえば、財布の中のお札や銀行口座の残高、企業が保有する預金まで、すべてがマネーストックを形づくるのです。

この記事では、そんなマネーストックの正体を分かりやすくに丁寧に解き明かしていきます。

「お金の量が増える」と景気は本当に良くなるのか?日本銀行はどのようにしてその量をコントロールしているのか?

あなたの生活のすぐそばにある“経済の心臓”の鼓動を、一緒に感じ取ってみましょう。

マネーストックとは?

経済のニュースを見ていると、「マネーストック」という言葉を耳にすることがあります。

昔は「マネーサプライ」と呼ばれていましたが、2008年(平成20年)以降、この呼び名が変わりました。

なぜ変わったのでしょうか。

その理由は、経済の見方そのものが変化したからです。「マネーサプライ(Money Supply)」の“サプライ”とは「供給」という意味です。つまり、どれだけ日本銀行がお金を出したか(供給したか)という、発行する側の視点でした。

しかし、経済を動かすのは日本銀行ではなく、実際にお金を使う私たちの側です。

いくら日本銀行が紙幣を印刷しても、家庭や企業がそのお金を動かさなければ景気は良くなりません。逆に、人々が積極的に買い物をしたり、企業が投資を増やしたりすれば、経済は勢いづきます。

だからこそ、「お金を出したか」ではなく「今、世の中にどれだけお金が存在しているか」を見る方が現実的なのです。この考え方から生まれたのが「マネーストック(Money Stock)」という言葉です。“ストック”とは「蓄え」や「たまっているもの」という意味です。つまり、マネーストックとは「今この瞬間、世の中にどれだけお金がたまっているか」を表す数字なのです。

日本銀行の正式な定義では、

マネーストック」とは、一般法人、個人、地方公共団体などの通貨保有主体が保有する現金通貨や預金通貨などの通貨量の残高のことを指します。簡単に言えば、「金融機関を除いた、民間の人々や企業が実際に持っているお金の総量」ということです。

では、この“世の中にあるお金”とは、どんな種類のお金を指すのでしょうか。その範囲をあらわす3つの分類――M1・M2・M3について見ていきましょう。

マネーストックを構成する4つの指標――M1・M2・M3・広義流動性

マネーストックには、どこまでを「お金」とみなすかによって、4つの指標があります。

それが M1エムワンM2エムツーM3エムスリー及び広義流動性 です。

この「M」は “Money” の略で、数字が大きくなるほど「お金とみなす範囲」が広くなっていきます。

なお、この記事の内容をより具体的に理解するためには、以下の記事もあわせてご覧いただくと、理解がより深まります。

M1――すぐに使えるお金

M1は、もっとも身近で、日常生活ですぐに使えるお金を示します。

M1 = 現金通貨 + 預金通貨

現金通貨とは、財布の中の日本銀行券(紙幣)と、政府が発行する補助貨幣(1円玉~500円玉)のことです。

そして、預金通貨とは、銀行の普通預金や当座預金など、いつでも引き出したり振り込んだりできるお金を指します。たとえば、スマホ決済で支払うときに使われる残高や、口座から即座に引き出せる預金は、すべてM1に含まれます。

ここでいう「銀行」とは、三菱UFJ銀行や三井住友銀行、地方銀行、信用金庫などの民間の銀行を指します。一方で、ゆうちょ銀行や農協(JAバンク)・漁協(JFマリンバンク)などの公共性の高い金融機関の預金は、M1には含まれません。

これらの機関は、もともと国や地域社会と深く結びついて設立された金融機関であり、民間銀行とは異なる制度や目的を持っています。そのため、日本銀行の統計では、これらを「より広い範囲を示すM3」に分類しています。

したがって、M1は「今すぐ支払いに使える、民間の銀行にあるお金の合計」だと考えるとわかりやすいでしょう。

M2――ゆうちょを除いたやや広い範囲

M2は、M1に加えて、すぐには使えないけれど、比較的安全で換金しやすいお金を含みます。

M2 = M1(現金通貨+預金通貨) +定期性預金(ただしゆうちょ銀行や農協などを除く)

ここでいう「定期性預金」とは、たとえば「1年後までおろさない」など、一定期間預けることを約束しておくタイプの預金です。その代わり、普通預金よりも利息(利子)が少し高く設定されているのが特徴です。

このM2の範囲には、私たちがふだん利用しているような一般の銀行――たとえば、都市銀行や地方銀行、信用金庫など――が含まれます。つまり、「街で見かけるふつうの銀行に預けたお金のうちの定期性預金」がM2にあたると考えるとわかりやすいでしょう。

💡 発展:それって“準通貨”じゃないの?

実は、この「すぐには使えないけれど、あとでお金にできる」性質のお金のことを、経済の専門用語で 「準通貨じゅんつうか」 と呼びます。定期性預金のように、現金ではないけれど近い性質をもつお金の総称です。つまり、M2は「M1(現金通貨+預金通貨)」に「準通貨(定期性預金など)」を加えたものといえます。

ただし、ゆうちょ銀行や農協などの預金はM2ではなく、次に紹介するM3に入ります。

M3――日本のマネーストックの中心指標

M3は、M2よりもさらに広い範囲をカバーした、お金の全体像を示す指標です。

実際に日本銀行が毎月公表している「マネーストック統計」では、M3が最も重視される代表的な数値になっています。

M3 = M2 + ゆうちょ銀行・農協・漁協などの預金 + CD(譲渡性預金)

M1やM2では除外されていたゆうちょ銀行や農協(JAバンク)、漁協(JFマリンバンク)なども、M3では含まれます。これらはもともと公共性の高い金融機関で、地域住民の貯蓄や事業資金を支える役割を果たしています。そのため、民間だけでなく地域社会を含めた「世の中全体のお金の量」を把握するには、これらの預金も欠かせません。

さらにここで新しい概念が登場します。それが CD(Certificate of Deposit)=譲渡性預金 です。CDとは、企業などが銀行に預ける定期預金の一種で、預金証書を他の人や会社に売ったり譲ったりできる特徴があります。

ふつう、銀行にお金を預けると「預けた本人しか引き出せない」仕組みになっています。しかしCDの場合、銀行が発行する預金証書(Certificate)を持っていれば、その証書をほかの人や企業に売ったり、譲ったりできるのです。たとえば、A社が銀行に1億円を預けてCDを受け取ったとします。すると、そのCDをB社に売れば、B社が満期日になったときに銀行からお金を受け取ることができます。CDは企業同士が短期間で資金をやりくりしたいときに便利なのです。

CDは個人が日常的に使うものではありませんが、企業同士の資金移動を反映する「お金の広がり」として重要です。そのため、日常のお金の動きよりも一段広いM3の範囲に含まれているのです。

M3はまさに、「日本全体で今どれくらいのお金が動いているのか」を知るための、最も包括的なマネーストックといえるのです。

広義流動性――お金に「変えられる」資産まで含めた範囲

ここまで見てきたM1・M2・M3は、いずれも「預金」や「現金」といった、いわば“お金そのもの”を示していました。

ところが、世の中にはすぐにお金に換えられるけれど、現金そのものではないものもあります。

このような「お金に近い資産」までを含めたのが、広義流動性こうぎりゅうどうせいです。

広義流動性 = M3 + 投資信託・金融債・国債など

ここで「お金に近い資産」という言葉を使いましたが、具体的に挙げられるのが、投資信託や金融さいや国債などです。

たとえば、あなたが将来のために貯金の一部を「投資信託」で運用しているとします。これは銀行に預ける代わりに、証券会社などを通して株式や債券をまとめて買う仕組みです。すぐに現金で買い物をすることはできませんが、売ればお金に戻せるという点では、お金に近い性質を持っています。また、「国債こくさい」は国が発行する借用証書のようなもので、買った人は将来、国から元本と利子を受け取ることができます。こちらも満期や途中売却を通じて現金化できるため、広義流動性に含まれます。さらに「金融債」は銀行などの金融機関が発行する債券で、簡単に言えば「銀行が一般の人からお金を借りるために出す証書」です。これも後でお金に換えられるため、同じく“お金に近い存在”として扱われます。

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マネーストックと景気・物価の関係

マネーストックの数字を見てわかるのは、「いま、日本の経済の血のめぐりがどれくらい活発なのか」ということです。

お金は、血液のように社会のすみずみを流れています。企業が設備を整え、家庭が買い物をし、自治体が公共サービスを提供しています。どの場面にも「お金の流れ」があります。

だからこそ、世の中にどれだけのお金が流れているか(=マネーストック)を見ることで、景気が温まっているのか、冷え込んでいるのか、物価は上がりそうなのかといった経済の“体調変化”を読み取ることができるのです。

以下の内容を読む前に、別コンテンツの「物価の話」を学習しておくと内容の理解が深まります。

お金が増えると、景気は温まる

マネーストックが増えるというのは、世の中に出回るお金の量が増えるということです。たとえば、日本銀行が「買いオペレーション(国債の買い入れ)」を行い、市場にお金を流し込むと、銀行や企業、家庭が使える資金が増えます(「買いオペ」の仕組みについてはこちらを参照)。お金が増えると、人々は買い物や投資に積極的になり、企業も設備投資や雇用を拡大しやすくなります。その結果、商品の需要が増えて価格が上がりやすくなり、経済全体が熱を帯びていきます。

その一方で、モノを買う人が増えすぎると、商品の需要が供給を上回り、物価が上がりやすくなります(インフレーション

これを需要曲線と供給曲線を使って説明すると以下のようになります。

マネーストックの増加による右シフトの価格上昇
マネーストックの増加による右シフトの価格上昇

横軸は「モノの量(数量)」、縦軸は「モノの価格(価格)」を表しています。青い線が「需要曲線」、ピンクの線が「供給曲線」です。そして、2つの線が交わる点が、モノの売り手と買い手の気持ちがつり合った価格(均衡価格)です。

最初は、需要曲線 D₁ と供給曲線の交点で均衡価格 P が決まっていました。

しかし、日本銀行が金融緩和を行ってマネーストック(世の中に出回るお金の量)が増えると人々の「買いたい」という気持ちが強くなります。その結果、需要曲線が右へシフトし、D₁ から D₂ に移動します。これはつまり、「より多くのモノを、少し高くても買いたい」と考える人が増えた状態です。

ところが、モノの供給(ピンクの線)はすぐには増えません。お店や企業は在庫や生産体制をすぐに変えられないからです。このとき、需要量が供給量を上回る――つまり「超過需要(品不足)」が発生します。

すると、モノを買いたい人たちが競って購入しようとするため、価格が上昇していきます。グラフ上では、新しい均衡点がより高い価格 P₂ で決まり、実際に市場で取引されるモノの量(=買う人と売る人が一致した量)も Q から Q₂ に増えます

このようにして、マネーストックの増加は「お金が増える → 買いたい人が増える → 価格が上がる」という一連の流れを通じて、インフレーション(物価上昇)を引き起こすのです。

マネーストックが増えることは、景気を押し上げる力でもあり、同時に物価を上昇させる要因にもなり得るのです。

お金が減ると、景気は冷える

今度は、マネーストックが減少したときの動きを見てみましょう。

マネーストックが減るというのは、世の中に出回るお金の量が少なくなるということです。たとえば、日本銀行が「売りオペレーション(国債の売却)」を行って、市場からお金を吸い上げた場合などがこれにあたります(「売りオペ」の仕組みはこちらを参照)。そして、お金が減ると、企業や家庭の財布のひもがかたくなり、買い物や投資を控えるようになります。

その結果、「モノを買いたい」という気持ちが弱まり、需要曲線が左にシフトします。

マネーストックの減少による左シフトの価格下落
マネーストックの減少による左シフトの価格下落

つまり、グラフ上では D₁ から D₂ へと左に移動し、需要全体が縮小してしまうのです。

すると、売れ残りが発生してモノの在庫が増えます。

お店や企業は商品を売るために価格を下げざるを得なくなり、最終的に、新しい均衡価格 P₂ は、もとの価格Pよりも低い水準で決まります。取引量もQからQ₁ からに減少し、経済活動全体が縮小していく――これが、デフレーション(物価下落)の基本的な仕組みです。

小括

つまり、マネーストックが減ると景気は冷え、増えると景気が温まる――そのバランスを取ることが、日本銀行の金融政策きんゆうせいさくの大きな目的なのです。

実際の事例で見てみよう

たとえば、西暦2008年(平成20年)のリーマン・ショックのあと、世界的に景気が悪化したとき、日本銀行は国債を大量に買い取る「買いオペ」を行い、市場に資金を供給しました。

この結果、マネーストック(M3)は前年比で約6%増加し、企業や家計が持つお金の量が一気に増えました。ただし、当時は将来への不安が強く、人々はそのお金をあまり使わなかったため、物価上昇(インフレ)にはつながらず、景気はなかなか回復しませんでした

このように、マネーストックが増えても、必ずしも景気が良くなるとは限らないのです。重要なのは「お金があるか」ではなく、「お金が動いているか」なのです。

では、マネーストック統計をどのように見ればよいのでしょうか。

日本銀行が毎月公表しているマネーストック統計には、

「M1・M2・M3・広義流動性」の金額(兆円単位)と、前年同月比(前年比)が示されています。

たとえば、西暦2024年(令和6年)8月の速報値では――

M3:1,354兆円(前年比+2.3%

このように発表されています。

この「前年比+2.3%」という数字は、「去年よりもお金の量が2.3%増えた」という意味です。

マネーストックの伸び率が上がっていれば、お金の流れが活発になっている(=景気が上向きやすい)可能性があります。逆に、伸び率が下がっていれば、お金が動きにくくなっている(=景気が停滞しやすい)可能性がある、というふうに読み取ることができます。

まとめ:マネーストックを見る意義

マネーストックは、「お金の量」という“数字”を通して、経済全体の空気を映す体温計のようなものです。

体温計が高ければ(マネーストックが増えれば)景気が熱を帯び、低ければ(マネーストックが減れば)経済が冷えている可能性があります。

けれども、マネーストックはあくまで「お金の量」を示す指標にすぎません。

実際に経済が動いているかどうかを知るには、物価(消費者物価指数)やGDP、金利など、他の経済指標とあわせて見ることが大切です。

たとえば、マネーストックが増えているのに物価が上がらないときは、人々が「お金を使わずに貯めている」状態かもしれません。

こうした数字の裏を読み解くことこそ、経済を“学ぶ”ということです。

マネーストックを知ることは、社会の動きを自分の暮らしとつなげて考えるための第一歩なのです。

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