今回は、日本国憲法第33条の条文穴埋め問題を解きながら、「不当な逮捕を受けない自由」についてわかりやすく解説していきます。
日本国憲法条文穴埋め問題解説シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
まずは問いに答えて、それから解説を読みます。さらに、発展的な内容については<発展>という項目で解説を試みます。社会科が苦手だなと思う人は<解説>まで。得意だという人は<発展>まで読んでみてください。
復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。
今回のところはやや細かいところです。読み物を読むというレベルで大丈夫ですが、刑事裁判の手続きは理解するようにしましょう。
日本国憲法第33条(穴埋め問題)
第三十三条
何人も、( )として逮捕される場合を除いては、権限を有する( )が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する( )によらなければ、逮捕されない。
日本国憲法第33条(解答)
第三十三条
何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
日本国憲法第33条(解説)
今回は、憲法33条を見ながら刑事裁判の手続きをみていきましょう。
何か犯罪を犯した人は警察官(けいさつかん)(場合によっては検察官(けんさつかん))の捜査(そうさ)によって逮捕されます。ただ、警察官であればいつどのようなときであっても逮捕できるわけではありません。(逮捕)令状と呼ばれる書面がなければ犯人を捕まえることができません。
逮捕(たいほ)とは、罪を犯したと疑われる人(被疑者)の身体(身柄)を拘束する強制処分のことを言います。逮捕されると、通常は警察署内にある留置場(場合によっては警察署ではなく拘置所)から出ることを禁止され、外部との連絡も自由にできなくなります。逮捕によって自由が制限されるのは最長72時間ですが、この間に検察官がより長期の身体拘束を請求し、裁判官がこれを許可すると、さらに最長20日間も出られなくなることがあります。つまり、身体の自由が制限されることになりますから、逮捕する時点においても慎重な手続きが要求されます。基本的人権を制限する形となってしまうからです。
みんなが不当な逮捕を受けないようにするため、慎重な手続きを日本国憲法は求めました。これが日本国憲法第33条による「不当な逮捕を受けない自由」の規定の趣旨なのです。
これについて日本国憲法第33条に規定があります。条文の作りが少し分かりづらいので、原則と例外の要素に分けて条文を整理してみます。
【原則】
何人も、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
【例外】
現行犯として逮捕される場合は令状は不要である。
条文を読む場合、「~を除いて(は)」という言葉が出てきたらカッコでくくります。その部分が例外的な部分だからです。ですから、上のように、「原則」と「例外」という枠で分けてみました。
難しい言葉が出てきていますが、司法官憲とは裁判官のことだと思ってください。
少し見づらいですが、逮捕状の真ん中の少し上のあたりに、「上記の被疑事実により、被疑者を逮捕することを許可する」という言葉は見つかるでしょうか。その次の行に日付があってその下に裁判所、裁判官の名前が出ているところがありますね。これが司法官憲の正体です。
さて、条文には現行犯の場合には令状はいらないと言っています。「現行犯」とは今まさに犯罪を行っているところを指します。電車の中でスリをやっているところを見つけたときにわざわざ裁判所に連絡して逮捕令状を書いてもらって…とやっている余裕はありません。速やかに身柄(みがら)を確保したい場面ですね。警察官だけでなく検察官だって一般人だって現行犯逮捕ができます。ちなみに一般人が逮捕したら警察に連絡をしましょう。
日本国憲法第33条についての説明はここまでです。