日本国憲法第60条について – 予算案の承認の条文をわかりやすく解説

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日本国憲法条文シリーズ
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今回は、日本国憲法第60条の条文の穴埋め問題を解きながら、「予算案の議決」についてわかりやすくまとめてみました。

憲法条文穴埋め問題解説シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。

まずは問いに答えて、それから解説を読みます。さらに、発展的な内容については<発展>という項目で解説を試みます。社会科が苦手だなと思う人は<解説>まで。得意だという人は<発展>まで読んでみてください。

復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。

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日本国憲法第60条(穴埋め問題)

第六十条

  1. 予算は、さきに( )に提出しなければならない。
  2. 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、( )を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて( )以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。 

日本国憲法第60条(解答)

第六十条

  1. 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
  2. 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。 
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日本国憲法第60条(解説)

統治機構の条文を見る際の前提

統治機構の勉強をする場合には全体像を把握しながら学習をしていきましょう。

日本型統治の図

権力分立の話をする場合、必ず上の図が頭に入っていなければなりません。「権力者」の中の話をしているのだという前提が必要です。

日本型統治のありかた「シラス政治」の解説は別のコンテンツにあるので参照してください。日本の教科書からはほぼ抹殺されていますが、とても大切な考え方です。

その上で、「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「権力分立」の図を頭に置きながら、どこの機関の何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。

予算案の可決までの大まかな流れ

今回のテーマは憲法第60条ですが、予算がどのように作られるのかを簡単に解説しながら憲法60条の1項と2項について解説をしてみましょう。

予算案の議決までのプロセス
予算案の議決までのプロセス

まず、予算は内閣が作ります。それを国会に予算案を提出します(憲法第86条)。予算を作成するのは内閣だという点が急所です。日本国憲法の「国会」の章以降の統治機構の条文は主語が大事です。

憲法第60条の条文は内閣が国会に予算案を提出したところから始まります。

日本国憲法第60条第1項 – 予算先議権

国会に予算案が提出されたら、衆議院から予算案が審議される点が第2の急所です。衆議院から審議を開始しなければならないとしているのは予算の作成の場面だけです。ですから、法律案の審議や内閣総理大臣の指名などは参議院から審議を開始しても法的にはOKなのです。これを予算先議権よさんせんぎけんと言います。これが憲法第60条1項の内容です。

衆議院は参議院と比べて任期が短く、解散があります。つまり、国民の意思がより反映された議院です。また、予算は国民から集めた税金を国の政治のどの部分にどれぐらい使うのかを決定する大切な意思決定の場面です。そういった意味で、衆議院から優先的に議論を始めるようにしようと考えられたのがこの予算先議権です。

日本国憲法第60条第2項 – 予算案について衆議院と参議院とで異なる決議がなされた場合や衆議院で可決後に参議院でなかなかされない場合の規定(衆議院の優越)

衆議院と参議院とで異なった結論が出た時や参議院でちっとも議論が始まらない場合に、どのような対応をすべきかという問題です。これが日本国憲法第60条第2項の条文です。結論から言えば、以下の2つの場合は、衆議院の議決が優先されます。

  1. 参議院で衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき
  2. 参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて30日以内に議決しないとき

まず1番目のパターンの参議院と衆議院が異なる議決をした場合についてです。このパターンの場合には、両院協議会は必ず開催されなければなりません。もし両院協議会が開かれなければどうなるでしょうか?衆議院と参議院と異なる決議をされた瞬間に衆議院の議決になってしまったら、参議院の立場はありません。両院協議会を開くことで、参議院にも決定プロセスにちゃんと参加してもらおうというわけです。

2番目のポイントは、衆議院から参議院に送られてきてから30日を超えて審議が行われなかった場合、自動的に衆議院の議決となってしまうという点です。国の予算がずっと決まらない状態は望ましい状況ではありません。国民の生活に大きな影響が出てしまいます。そこで、30日以内に審議をせよ!と憲法には書かれているのです。

ここで、「法律案の議決(憲法59条2項)」の場合と比較すると、内容がより理解できると思います。答えはここでは書きませんが、次のポイントで違いを整理するとよいでしょう。

  1. 衆議院の先議権はあるか?
  2. 議決に際して参議院に与えられた期間はどれぐらいか?
  3. 参議院が議決しない場合の効果はどのように異なるか?
  4. 衆議院と参議院の議決が異なった場合、衆議院での再議決は必要か?
  5. 両院協議会は必ず開かなければならないか? 

以上の観点を持って、「法律案の議決(憲法59条2項)」の場合の条文と比較をしてみましょう。

 

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