「ポツダム宣言」第12項の英文を訳してわかりやすく解説してみた

ポツダム宣言現代語訳をしてみました 「ポツダム宣言」全文試訳
ポツダム宣言現代語訳をしてみました
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執筆 & 訳: 加代 昌広かしろ まさひろ(KÁSHIRO Masahiro)

「ポツダム宣言」の全文の内容を和訳してみるシリーズです。

今回はポツダム宣言の第12項を和訳してみます。構成は、英文、公式邦訳、試訳とその解説の順になっています。

なお、ポツダム宣言が作成された背景については、「ポツダム宣言の全文をわかりやすく解説してみました」というコンテンツでくわしく解説しましたので、そちらをご覧下さい。

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英文

(12) The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.

公式邦訳

十二、前記諸目的カ達成セラレ且日本国国民ノ自由ニ表明セル意思ニ従ヒ平和的傾向ヲ有シ且責任アル政府カ樹立セラルルニ於テハ聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルヘシ

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解説

1文が長いので、主節と従属節とで分けて解説したいと思います。

主節”The occupying forces of the Allies shall be withdrawn from Japan”について

最初のThe occupying forces of the Alliesの部分ですが、「連合国の占領軍」という意味です。この部分が主語になります。

shall be withdrawnで「撤退するものとする」と言ってます。shallは聖書や法律の条文にはよく使われる助動詞なのですが、もともとある「強い意志」というところから「命令」や「義務」といった意味を持たせる場合に使います。withdrawはもともとは「~を撤退させる」という他動詞です。それがここでは受動態になっています。「撤退させられる」のままですと綺麗な日本語にしにくいので、「撤退する」とここでは自動詞のように訳すのがいいです。

ここまでの訳を記しておきましょう。

連合国の占領軍は日本から撤退するものとします。

従属節”as soon as these objectives have been accomplished and there has been established in accordance with the freely expressed will of the Japanese people a peacefully inclined and responsible government.”について

as soon as S+V…は「SがVするとすぐに」という中学校レベルの接続詞です。

同じ意味の表現はどれぐらいあげることができますか?

  1. The moment (that) 〜した瞬間に
  2. Immediately (after) 〜した直後に
  3. Directly (after) 〜した直後に
  4. Instantly (after) 〜した直後に
  5. No sooner … than 〜するとすぐに
  6. Hardly … when 〜するとすぐに
  7. Scarcely … when 〜するとすぐに
  8. On 名詞 〜するとすぐに

ちょっとした基礎トレーニングですね。

as soon asの中にある文を見ていきます。途中にandで結ばれているので、2つの内容が述べられています。

まずはandの前のthese objectives have been accomplishedについて訳してみましょう。

these objectives have been accomplishedで「これらの目的が達成される」と訳しておけば大丈夫です。

次にand以下の文です。これがちょっと構文を把握するには難しい文です。

もう1つはthere has been establishedで「設立される」と言っています。この文脈なので「樹立される」とした方が小慣れた日本語になると思います。中学校で学習するthere is構文の一種と考えましょう。

次にin accordance withという群前置詞があります。in accordance withは「~にしたがって」という意味の有名なイディオムです。前置詞を見つけたら、この前置詞の効力はどこまで及ぶのかを検討するのが英文解釈の基本です。英語教師によっては「カッコを開き、カッコはどこまで続くのかを検討しなさい」と仰るはずです。それとともに前置詞の目的語となる名詞を探す必要があります。名詞はどこかというと、実はwillなのです。the freely expressed willは「自由に表明された意志」と訳しておきましょう。ここのwillは名詞なので「意志」という意味です。助動詞ではありませんよ。of the Japanese peopleは「日本国民の」という意味になります。この部分をまとめて訳すと、「日本国民の自由に表明された意志にしたがって」というカタマリになります。

ではin accordance withの効力はどこまで及ぶのでしょうか?willという名詞があるのとof the Japanese peopleという前置詞句がwillという名詞に係っているので一度ここで途切れると判断します。

ただ、この文の骨格[スケルトン]がまだ把握できていません。in accordance with~の効力が及ぶ部分は絶対に主語にはなりません。副詞句だからです。では主語はどこでしょうか?それはこの後ろの”a peacefully inclined and responsible government”の部分になります。余分な副詞句を取り除くとこんな感じになります。

there has been established <a peacefully inclined and responsible government>.

inclineは「傾く」という動詞で大学入試ではよく出る英単語ですがここから派生した形容詞と考えましょう。「傾いた」とか「傾向のある」とでも訳しておきましょう。a peacefully inclinedを直訳すると「平和的な傾向のある〜」となります。ここでandと繋がります。responsibleは「責任ある」という形容詞です。この2つの形容詞がgovernment「政府」という名詞を修飾する働きをしています。この部分をまとめて訳すと、「平和的な傾向があり責任がある政府が」という訳になります。

「平和的な傾向があり責任ある政府が樹立される」と訳せばOKです。これに先ほどのin accordance with~の効力が及ぶ部分をくっつけると、「日本国民の自由に表明された意志にしたがって日本国民の自由な意志に基づいて、平和的な傾向がありかつ責任ある政府が樹立された」となります。

as soon as以下をまとめて訳してみます。

これらの目的が達成され、日本国民の自由に表明された意志にしたがって平和的な傾向がありかつ責任ある政府が樹立されたらすぐに…

という訳になります。

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まとめ – 「ポツダム宣言」第12項試訳

最後に全部をまとめてみます。

これらの目的が達成されて日本国民の自由に表明された意志にしたがって平和的な傾向がありかつ責任ある政府が樹立されたらすぐに、連合国の占領軍は日本から撤退するものとします。

実際のところを見ると、戦後に女性を含めた民主的な選挙が行われ、日本国憲法が制定されてもなお連合国軍は日本に駐留していました。

サンフランシスコ平和条約が締結されたのちもアメリカ軍は日本に残ったままです。

日本が独立してしばらく経っているはずの日本の現在の国防の状況に鑑みて、米軍抜きでは我が国が自衛すらできなくなっている状況は誠に嘆かわしい状況です。

次回が最終回です。第13項の英文を解説します。

「ポツダム宣言」第13項を解説します!
KÁSHIRO Masahiro

日本まほろば社会科研究室客員研究員
日本スペイン法研究会会員
ブロガー、インスタグラマー、音楽家、授業をしない大手学習塾の校舎長
 
共著(日本スペイン法研究会の一員として)で、「現代スペイン法入門」(嵯峨野書院)と「Introducción al Derecho Japonés actual」(Editorial Thomson Reuters – Aranzadi)の一部を執筆。他にも、日本まほろば社会科研究室サイト内で、小学校や中学校や高校での社会科教育で役立つ多くのコンテンツを執筆(コンテンツはリンク先を参照)。
 
X JAPANやThe Last Rockstarsのリーダーとして活躍されているYOSHIKIさんのファンでもある。

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