日本国憲法第48条「議員の兼職禁止」をわかりやすく解説

憲法条文解説第48条 - 両議院議員の兼職の禁止規定を解説してみました 日本国憲法穴埋め問題条文解説シリーズ
憲法条文解説第48条の両議院議員の兼職の禁止規定を解説してみました
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今回は、日本国憲法第48条の内容を踏まえて、国会議員の兼職の禁止について、中学生や高校生の皆さんに向けてわかりやすく解説します。

今回は条文穴埋め問題はありません。あまり試験に出る条文ではありません。当たり前すぎる内容だからです。

では、

  1. なぜ衆議院議員は参議院議員になれないのでしょうか?逆になぜ参議院議員は衆議院議員になれないのでしょうか?
  2. 現役の議員が他の議院の議員に立候補した場合、その地位はどうなるのか?

その謎を条文を丹念に読むことで迫ってみたいと思います。ニュースのなぜ?に迫る記事です。

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  1. 日本国憲法第48条条文
  2. 日本国憲法第48条解説
    1. 統治機構の条文を見る際の前提
    2. 日本国憲法第48条「兼職規定」の解説
    3. 国会法第108条 – 「議員は別の議院の議員を兼ねることはできない」
    4. 現職の議員が別の議院に立候補する場合の国会議員の地位はどうなるの?(公職選挙法第90条の解説)
      1. 「前条の規定により公職の候補者となることができない公務員」とは?
      2. 「第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項、第八十六条の二第一項若しくは第九項、第八十六条の三第一項若しくは同条第二項において準用する第八十六条の二第九項又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による届出により公職の候補者となつたとき」とは?
      3. 「当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず」とは?
      4. 「その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす」とは?
      5. まとめ
    5. なぜ憲法に兼職規定があるのだろうか?
  3. 参考: 国会議員の兼職規定の関連法令
    1. 国会法第39条 – 公務員の兼職規定(原則と例外)
    2. 地方自治法第92条第1項 – 地方公共団体の議員と国会議員の兼職禁止規定
    3. 地方自治法第141条第1項 – 地方公共団体の長と国会議員の兼職禁止規定
      1. 現職の市長が衆議院議員総選挙に立候補した場合の法的な手続きはどうなるの?
  4. 日本国憲法条文解説シリーズ

日本国憲法第48条条文

第四十八条
 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

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日本国憲法第48条解説

統治機構の条文を見る際の前提

統治機構の勉強をする場合には全体像を把握しながら学習をしていきましょう。

日本型ガヴァナンスの図
日本型ガヴァナンスの図

権力分立の話をする場合、必ず上の図が頭に入っていなければなりません。「権力者」の中の話をしているのだという前提が必要です。日本型統治のありかた「シラス政治」の解説は別のコンテンツにあるので参照してください。日本の教科書からはほぼ抹殺されていますが、とても大切な考え方です。

その上で、「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「権力分立」の図を頭に置きながら、どこの機関の何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。

日本の三権分立について
日本の権力分立について

日本国憲法第48条「兼職規定」の解説

主語が「何人も」となっています。「なんぴと」と読みます。「どんな人でも」という意味です。

同時に両議院の議員たることはできない

これは「どのような人であっても」という意味であり、例外を認めない強い表現です。

「同時に両議院の議員たることはできない」とは、一人の人が、衆議院議員と参議院議員を同時に務めることはできないということを意味しています。

言い換えれば、

  • 衆議院議員になった人は、同時に参議院議員になることはできない。
  • 参議院議員になった人は、同時に衆議院議員になることはできない。

ということです。

国会法第108条 – 「議員は別の議院の議員を兼ねることはできない」

第百八条 各議院の議員が、他の議院の議員となつたときは、退職者となる。

国会法第108条

国会法第108条は、各議院の議員が他の議院の議員となったときは退職者となる旨を定め、同時に両議院の議員となる事態を最終的に防ぐ役割を果たします。

現職の議員が別の議院に立候補する場合の国会議員の地位はどうなるの?(公職選挙法第90条の解説)

現職の国会議員が他の議院の選挙に立候補する場合(具体的には「参議院議員が衆議院議員に立候補する場合」または「衆議院議員が参議院議員になる場合」)があります。メディアでは「鞍替え」という言葉が並ぶ場合があります。この場合、国会議員の地位はどうなるのでしょうか?

これについては公職選挙法に規定があります。まずは条文を出してみたいと思います。

第九十条 前条の規定により公職の候補者となることができない公務員が、第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項、第八十六条の二第一項若しくは第九項、第八十六条の三第一項若しくは同条第二項において準用する第八十六条の二第九項又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による届出により公職の候補者となつたときは、当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず、その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす。

公職選挙法第90条より抜粋

ちょっと読みづらい条文なので1つずつ解説をしていきます。

「前条の規定により公職の候補者となることができない公務員」とは?

「前条の規定」というのは公職選挙法第89条の内容を指します。

原則として、公務員は、今の仕事を辞めなければ選挙に立候補できません。(公職選挙法第89条第1項からの解釈)。

但し、国会議員についてはその抜け道が公職選挙法第89条第2項に示されています。ここに国会議員について「在職中その選挙における公職の候補者となることができる」と規定されています(地方公共団体の話はここでは除外します)。

条文を出してみましょう。

(公務員の立候補制限)
第八十九条 国若しくは地方公共団体の公務員又は行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)若しくは特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員若しくは職員は、在職中、公職の候補者となることができない。ただし、次の各号に掲げる公務員(行政執行法人又は特定地方独立行政法人の役員及び職員を含む。次条及び第百三条第三項において同じ。)は、この限りでない。
一 内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官及び大臣補佐官
二 技術者、監督者及び行政事務を担当する者以外の者で、政令で指定するもの
三 専務として委員、顧問、参与、嘱託員その他これらに準ずる職にある者で臨時又は非常勤のものにつき、政令で指定するもの
四 消防団長その他の消防団員(常勤の者を除く。)及び水防団長その他の水防団員(常勤の者を除く。)
五 地方公営企業等の労働関係に関する法律(昭和二十七年法律第二百八十九号)第三条第四号に規定する職員で、政令で指定するもの
2 衆議院議員の任期満了による総選挙又は参議院議員の通常選挙が行われる場合においては、当該衆議院議員又は参議院議員は、前項本文の規定にかかわらず、在職中その選挙における公職の候補者となることができる。地方公共団体の議会の議員又は長の任期満了による選挙が行われる場合において当該議員又は長がその選挙における公職の候補者となる場合も、また同様とする。
3 第一項本文の規定は、同項第一号、第二号、第四号及び第五号に掲げる者並びに前項に規定する者がその職に伴い兼ねている国若しくは地方公共団体の公務員又は行政執行法人若しくは特定地方独立行政法人の役員若しくは職員たる地位に影響を及ぼすものではない。

公職選挙法第89条

話を公職選挙法第90条に戻すと、「前条の規定により公職の候補者となることができない公務員」に国会議員が含まれるという点です。国会議員も特別公務員であること及び公職選挙法第89条第1項の但書に載っていないからです。

「第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項、第八十六条の二第一項若しくは第九項、第八十六条の三第一項若しくは同条第二項において準用する第八十六条の二第九項又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による届出により公職の候補者となつたとき」とは?

ちょっと読みにくい部分ですが、簡単に解説をすると条文番号が指す内容は以下のとおりです。

  • 第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項【衆議院小選挙区】 への立候補の届け出を指します。
  • 第八十六条の二第一項若しくは第九項【衆議院比例代表】 への立候補(名簿登載)の届け出を指します。
  • 第八十六条の三第一項若しくは同条第二項において準用する第八十六条の二第九項【参議院比例代表】 への立候補(名簿登載)の届け出を指します。
  • 第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項【参議院選挙区・知事・市長・地方議員】 など、その他の公職選挙への立候補の届け出を指します。

これらの選挙に立候補した場合というふうに読めます。

「当該公務員の退職に関する法令の規定にかかわらず」とは?

通常、仕事をやめる時は「辞職願」を提出し、上司や任命権者に認めてもらう必要があります。

しかし、この一文は「そんな面倒な手続きは一切無視して、この法律が最優先される」ことを宣言しています。誰の承認もいらない、法的なショートカットができますということです。

「その届出の日に当該公務員たることを辞したものとみなす」とは?

これがこの条文のゴールです。 「辞めたいです」と言った日ではなく、「立候補を届け出た、その日」に、自動的に議員を辞めたことになります。「みなす」というのは法令用語で「100%そう決定し、ひっくり返せない」という非常に強い言葉です。

まとめ

要するに、簡単に述べると以下のような内容になります。

現職の衆議院議員や参議院議員が別の議院の議員に立候補した場合は、立候補を届け出た日に当然に失職する

ということです。

なぜ憲法に兼職規定があるのだろうか?

なぜこのような規定があるのでしょうか?

憲法では二院制を採用しています。衆議院と参議院とでは異なる役割や性格があります。したがって、衆議院議員と参議院議員は別の人がなるべきであるという価値観があるからです。

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参考: 国会議員の兼職規定の関連法令

憲法第48条は衆議院議員と参議院議員の兼職をすることはできないという条文ですが、他の公務員との兼職はできるのでしょうか?

ここからは憲法第48条とは関係ありませんが、参考として概観していきたいと思います。

まず、基本的には他の公職と兼職することができません。ここからは条文でその内容を簡単に紹介したいと思います。

国会法第39条 – 公務員の兼職規定(原則と例外)

第三十九条
議員は、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官、大臣補佐官及び別に法律で定めた場合を除いては、その任期中国又は地方公共団体の公務員と兼ねることができない。ただし、両議院一致の議決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は、この限りでない。

国会法第39条

ちょっと読みにくい条文なので整理します。

条文を読むときに「〜除いては」の部分をカッコに入れてしまいます。カッコの中が例外になり、カッコの外が原則になります。条文を読むときのコツです。

  • 原則: 国会議員はその任期中に国又は地方公共団体の公務員と兼ねることができない。

国会法第39条の「議員」とは「国会議員」のことを指します。原則として、国会議員は他の公務員になることができないと書いてあります。

しかし例外規定があります。「-を除いては」の部分と但書の部分です。以下に示します。

  • 例外その1: 国会議員は、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官、大臣補佐官及び別に法律で定めた場合は兼職OK。
  • 例外その2: 国会議員は、両議院一致の議決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は兼職OK。

この例外は日本が議院内閣制であることを支える条文であると言えます。例えば、国会議員も内閣総理大臣も「公務員」です。これらが兼職できないとすると国会議員の中から内閣総理大臣を選ぶことができなくなります。つまり憲法違反になります(日本国憲法第67条の条文)。

地方自治法第92条第1項 – 地方公共団体の議員と国会議員の兼職禁止規定

地方公共団体の議員は国会議員になることはできません。こちらは地方自治法に載っています。

第九十二条 普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。

地方自治法第92条第1項

地方自治法第141条第1項 – 地方公共団体の長と国会議員の兼職禁止規定

地方公共団体の長、つまり県知事や市町村長は国会議員になることはできません。地方自治法に載っています。

第百四十一条 普通地方公共団体の長は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。

地方自治法第141条第1項


国会議員は、日本中の人たちを代表して国のために働く大切な仕事です。だから、国会議員はその仕事に集中しなければなりません。そのため、法律で国会議員が他の公務員にはなれないと決められています。

現職の市長が衆議院議員総選挙に立候補した場合の法的な手続きはどうなるの?

では、現職の地方公共団体の長(市長)が衆議院議員総選挙に立候補した場合に、どのようになるのでしょうか?

具体例を見てみましょう。

名古屋市の河村たかし市長が辞職届を提出 27日の衆議院選挙に出馬へ
名古屋市の河村たかし市長は、令和6年(西暦2024年)10月27日に投開票が行われる衆議院選挙で、愛知1区から政治団体「日本保守党」の候補として出馬することを表明しました。

衆議院の解散を受け、河村市長は令和6年(西暦2024年)10月9日午後9時前に、名古屋市議会議長宛てに辞職届を提出しました。河村市長は「色々な思いはありますが、精一杯やりました。名古屋市民の皆さんには感謝しています」とコメントしています。

辞職届は10月14日付で提出されていますが、市議会で同意が得られない場合、10月15日の衆議院選挙の公示日に立候補を届け出ることで、自動的に市長職を失職する見込みです。

「メ〜テレニュース」令和6年10月9日記事より

上記ニュースでは、「立候補を届け出ることで、自動的に市長職を失職する見込み」と説明されています。この点は、地方自治法第145条だけを読むと分かりにくいため、公職選挙法との関係を整理する必要があります。

まず、地方自治法第145条は、地方公共団体の長が自ら辞職しようとする場合の通常の手続を定めた条文です。市町村長は、原則として退職日の20日前までに議会の議長に申し出なければならず、期日前に辞職するためには議会の同意が必要とされています。

第百四十五条 普通地方公共団体の長は、退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府県知事にあつては三十日、市町村長にあつては二十日までに、当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の同意を得たときは、その期日前に退職することができる。

地方自治法第145条

一方で、国政選挙への立候補という場面では、これとは別に公職選挙法第89条・第90条が問題となります。

地方公共団体の長(市長)は「公務員」に該当し、公職選挙法第89条本文により、在職のまま国政選挙の候補者となることは認められていません。そのため、市長が衆議院選挙に立候補する場合には、公職選挙法第90条が適用され、立候補の届出が受理された日に、市長の地位を辞したものとみなされます。

この「辞したものとみなす」という効果は、地方自治法第145条に定められた通常の辞職手続に優先して働きます。したがって、市議会の同意が得られず、地方自治法第145条による辞職が成立しなかった場合であっても、公示日に立候補届出が受理されれば、公職選挙法第90条により市長職は自動的に失われることになります。

つまり、ニュースで用いられている「自動的に市長職を失職する」という表現は、公職選挙法第90条に基づく法的効果を端的に表したものだと理解するのが正確です。

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日本国憲法条文解説シリーズ

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条文を正確に押さえることは、暗記のためだけではありません。条文を軸に理解を積み重ねることで、知識は断片ではなく、使える判断材料へと変わっていきます。

本シリーズは、公共・政治経済の学習と大学入試対策を同時に支える、条文起点型の憲法解説です。

日本国憲法穴埋め問題条文解説シリーズ
日本国憲法を条文ベースで読み解く解説シリーズ。穴埋め問題で暗記と理解を両立し、公共・政治経済や大学入試、司法試験や予備試験、司法書士試験、行政書士試験、公務員試験に直結する力を養います。
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