今回は、日本国憲法第59条の条文の穴埋め問題を解きながら、「法律案の議決」についてわかりやすくまとめてみました。
憲法条文穴埋め問題解説シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
憲法条文シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
まずは問いに答えて、それから解説を読んでポイントを掴むようにしましょう。
復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。
日本国憲法第59条(穴埋め問題)
- 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
- 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で( )の( )以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
- 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
- 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて( )以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を( )したものと( )。
日本国憲法第59条(解答)
第五十九条
- 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
- 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。
- 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。
- 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。
日本国憲法第59条(解説)
統治機構の条文を見る際の前提
統治機構の勉強をする場合には全体像を把握しながら学習をしていきましょう。
権力分立の話をする場合、必ず上の図が頭に入っていなければなりません。「権力者」の中の話をしているのだという前提が必要です。
日本型統治のありかた「シラス政治」の解説は別のコンテンツにあるので参照してください。日本の教科書からはほぼ抹殺されていますが、とても大切な考え方です。
その上で、「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「権力分立」の図を頭に置きながら、どこの機関の何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。
日本国憲法第59条第1項 – 法律案の議決
まず日本国憲法第59条1項の主語と述語の部分を抜き出すと、「法律案は両議院で可決したとき法律となる」となります。これが法律案の議決の原則です。まずは原則をきちんと押さえましょう。「この憲法に特別の定のある場合を除いては」という部分があるので、例外があるというということです。
その例外が以下に示す内容です。見ていきましょう!
日本国憲法第59条第2項 – 法律案の再議決
「衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案」についてはどのように解決したらよいのでしょうか。各議院は独立しているので、こういった問題は起こり得ます。その解決方法が、日本国憲法第59条第2項に書いてあります。
条文を見ると、「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる」とあります。衆議院と参議院とで異なる議決がされたときは、59条1項の理屈を貫くと法律案は可決されません。「両議院」で可決されなければ法律にならないからです。しかしこれでは国会で法律案が通りにくくなってしまいます。
そこで、衆議院で再び可決すればよいということにしました。
しかし、通常の議決「総議員の3分の1以上の出席、出席議員の過半数」よりも可決の条件を厳しくします。再議決の場面で同じ条件で可決するとなれば、参議院の意思はとても弱いモノとなってしまいます。最初から衆議院だけで可決しておけばよいという理屈になってしまいます。
そこで、「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは、法律となる」という厳しい条件を課しました。
なお、評決数についての原則と例外についての横断整理は以下の表のとおりです。試験対策的にはこれは暗記しなければなりません。
表決数 | 事例 | |
原則 | 出席議員の過半数 | 下の場合以外(56条) |
例外1 | 出席議員の3分の2以上 | 1. 議員の資格争訟裁判により議員の議席を失わせる場合(55条) 2. 両議院で秘密会を開く(57条1項但書) 3. 両議院で議員を除名する場合(58条2項) 4. 衆議院で法律案を再議決する場合(59条2項) |
例外2 | 総議員の3分の2以上 | 憲法改正を発議する場合(96条) |
日本国憲法第59条第3項 – 両院協議会の開催について
次に59条3項です。条文が少し読みにくいので簡単にすると、こういうことです。つまり、「衆議院と参議院が異なる議決をした場合に、衆議院が参議院との意見の調整を行うための「両院協議会」という会議を開くことができる」という規定です。急所は「できる」という部分で、開かなければならないわけではないという点が重要です。他の衆議院の優越の項目とはこの点が異なります(つまり「両院協議会」を開かなければならない)から、「できる」という部分は注意です。
日本国憲法第59条第4項 – 否決みなしの規定
最後に59条4項ですが、この規定は読み方に注意が必要です。「衆議院で議案が通って参議院が60日以内に議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」ということですが、もう少し細かく見ます。「衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。」とは、「60日の期間が経過すれば、衆議院が参議院が否決したものとみなすという議決をすることができる」という意味であり、「否決みなし」の決議は原則通り出席議員の過半数によって、参議院で否決したとみなすことができます。ただ、この「否決みなし」の決議が通った段階では、「衆議院=可決、参議院=否決」という状態(59条2項の表現でいう「衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案」)を作り出したにすぎません。もし、衆議院の議決を国会の意思としたい場合は、先ほど勉強した59条2項の「衆議院で出席議員の3分の2以上の多数」の再議決が必要です。59条4項は、参議院が59条2項による決議を阻止するために議案の審議をストップさせておく戦術を防ぐために、参議院の決議にはこのような時間的な制限を作りました。
59条は4項の理屈の部分が難しいですが、公立高校の入試レベルであれば、ひとまず60日という数字は明確にしてください。
試験対策的に日本国憲法59条は何を押さえるべき?
59条の条文は穴埋めがきちんとできるように復習しましょう。それと同時に、表決数の原則と例外の復習もやっておきましょう。