「ポツダム宣言」第3項の内容を解説してみた – GHQからの脅迫

ポツダム宣言現代語訳をしてみました 「ポツダム宣言」全文試訳
ポツダム宣言現代語訳をしてみました
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執筆&和訳: 加代 昌広かしろ まさひろ (KÁSHIRO Masahiro)

ポツダム宣言の全文の内容を和訳してみるシリーズです。

今回は「ポツダム宣言」の第3項を和訳してみます。構成は、英文、公式邦訳、試訳とその解説の順になっています。

なお、ポツダム宣言が作成された背景については、「ポツダム宣言の全文をわかりやすく解説してみました」というコンテンツでくわしく解説しましたので、そちらをご覧下さい。

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  1. 英文
  2. 公式邦訳
  3. 解説
    1. The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan.
      1. 主部”The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world”の構文解釈
      2. 述部”stands forth in awful clarity”について
      3. 副詞句”as an example to the people of Japan”について
      4. 1文を通して訳してみよう!
    2. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people.
      1. S+Vの部分”The might that now converges on Japan is immeasurably greater”についての構文解説
      2. 比較の対象”than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people”についての構文解説
      3. 1文を通して訳してみよう!
    3. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.
      1. 主部 “The full application of our military power, backed by our resolve”について
      2. 目的語その1 “the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces”について
      3. 目的語その2 “and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland”について
      4. 1文を通して訳してみよう!
  4. まとめ – 「ポツダム宣言」第3項試訳

英文

(3) The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan. The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people. The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.

公式邦訳

三、蹶起セル世界ノ自由ナル人民ノ力ニ対スル「ドイツ」国ノ無益且無意義ナル抵抗ノ結果ハ日本国国民ニ対スル先例ヲ極メテ明白ニ示スモノナリ
現在日本国ニ対シ集結シツツアル力ハ抵抗スル「ナチス」ニ対シ適用セラレタル場合ニ於テ全「ドイツ」国人民ノ土地、産業及生活様式ヲ必然的ニ荒廃ニ帰セシメタル力ニ比シ測リ知レサル程更ニ強大ナルモノナリ
吾等ノ決意ニ支持セラルル吾等ノ軍事力ノ最高度ノ使用ハ日本国軍隊ノ不可避且完全ナル壊滅ヲ意味スヘク又同様必然的ニ日本国本土ノ完全ナル破壊ヲ意味スヘシ

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解説

それでは1文ごと区切りながら解説を加えていきましょう。

The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world stands forth in awful clarity as an example to the people of Japan.

結論から言えば、The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world までが「主部」になります。stand forthという述語動詞の前の名詞のカタマリが主部になるからです。

1文がとても長いので、さらにフレーズごとに切りながら解釈をしていきます。

主部”The result of the futile and senseless German resistance to the might of the aroused free peoples of the world”の構文解釈

では主部の解釈を見ていきます。

まずは、The result of the futile and senseless German resistance の部分。resultは「結果」。futileは「無益な」といった感じの意味。CEFRで言うとB2レベルの単語です。senselessはsenseにlessという否定の接尾辞が付いているので「無意味な」という意味。German resistanceは「ドイツの抵抗」という意味。ここまでで、「無益で無意味なドイツの抵抗の結果」という意味になります。

次に、to the might of the aroused free peoples of the world までの部分。the mightは「力」。arouseはここでは「覚醒する」「目覚める」という感じの意味。大学受験生がよく利用する「システム英単語」や「ターゲット1900」「必携英単語LEAP」にも掲載されている単語です。peopleにsがついているので、peoplesは「民族」という意味です。ここまでをまとめると、「世界の覚醒した自由な民族の力に対して」ということになります。

主部の解釈を一度まとめてみましょう。「世界の覚醒した自由な民族の力に対して、無益で無意味なドイツの抵抗の結果は…」という意味になります。

述部”stands forth in awful clarity”について

述語動詞のstands forthは直訳すれば「前に立つ」という意味ですが、そこから意味が派生して「目立っている」「際立っている」というイディオムとして使われます。in awful clarityで「極めて明確に」という副詞句になります。述部を一度まとめると、「極めて明確に示しています」となります。

副詞句”as an example to the people of Japan”について

最後のパーツにいきましょう。as an example to the people of Japanは、を直訳すると「日本国民に対する例として」という感じになります。このasは前置詞の意味で使われています。「〜として」という意味。exampleはここでは「先例」と訳しておいた方がよいです。「例」と言うのは具体的にはドイツが連合国軍に抵抗した上に敗れたことを指しています。文脈的に砕けた表現で申せば、「ドイツのような抵抗をすると日本もこうなるぞ!」ということです。ですから、ここでは「日本国民に対する先例として極めて明確に明らかとなっている」と訳しておきます。

1文を通して訳してみよう!

1文をまとめて訳しましょう。

世界の覚醒した自由な民族の力に対して、無益で無意味なドイツの抵抗の結果は、日本国民に対する先例として極めて明確に示されています。

ちょっと長かったですね。

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The might that now converges on Japan is immeasurably greater than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people.

次の文です。

ざっくりと文構造を言っておくと、”The might that now converges on Japan is immeasurably greater”の部分がSVCの第2文型になって、than以降が比較対象という文構造になっています。

この文もすごく長いので、パーツごとに解説をしたいと思います。

S+Vの部分”The might that now converges on Japan is immeasurably greater”についての構文解説

The might that now converges on Japanまでが文の主部です。「the might=力」について関係代名詞that以下が説明しています。convergeは「集結する」という意味。大学受験向けの英単語帳にも掲載されていないです。単語のコアイメージは、「異なる方向から来て一点に集まるイメージです。ですから、主部は「いま日本に集結する力は」という意味になります。

immeasurablyは「はかりしれない」という意味の副詞。measurableという単語にim-という否定の接頭辞がついていて、副詞の接尾辞の-lyがついていますね。is immeasurably greaterで「はかりしれなく大きい」と言っています。この部分が述部という解釈でよいです。

ここまでで、「いま日本に集結する力ははかりしれなく大きい」のだと言っています。これがこの文の骨格にあたる部分です。

比較の対象”than that which, when applied to the resisting Nazis, necessarily laid waste to the lands, the industry and the method of life of the whole German people”についての構文解説

S+Vの後ろにthanが来ているので、比較の対象が入ってきます。thatはthe might(=力)を指す代名詞です。その内容がwhich以下に書かれている文構造です。このwhichは関係代名詞です。the mightの内容説明が後ろにきます。

when applied to the resisting Nazisはwhichの中にある副詞節です。whenは接続詞ですが、後ろにS+Vが来ていません。ここで省略を連想しなければなりません。

主語+be動詞が省略されるパターンです。ここはit (=the might) wasが省略されていると考えましょう。apply toは大学入試の熟語帳にも掲載されている有名なイディオムで、「〜に当てはまる」とか「〜に適用される」という意味です。ちなみに、applyのコアイメージは「ある状況や対象に何かを当てはめる、適用する」という意味です。when節の意味は、「(連合国の力が)抵抗するナチスに適応した時」という意味になります。文構造がうまく取れそうになかったら、一度この部分はカッコに入れて読み飛ばすのもありです。あとで訳を付け加えればいいと思います。

続いて関係代名詞節の述部の解説に進みます。

necessarilyは「必然的に」という意味。lay waste to ~で「~を荒廃させる」とか「灰燼かいじんせしめる」という意味のイディオムになります。「lay」と「waste」が組み合わさると「何かを荒廃させる状態(使い物にならなくなる状態)にする」という意味になります。to以下にはthe lands, the industry and the method of life of the whole German peopleがありますが、これを訳すと、「全ドイツ国民の国土や産業や生活様式を」という意味になります。関係代名詞節の中の述部部分をまとめると、「全ドイツ国民の国土や産業や生活様式を必然的に荒廃させた」という意味になります。

than以下の比較対象のフレーズをまとめると、

抵抗するナチスにその力が適応した時、全ドイツ国民の国土や産業や生活様式を必然的に荒廃させたその力よりも

という意味になります。

1文を通して訳してみよう!

最後に1文を通して訳してみましょう。

いま日本に集結するその力は、抵抗するナチスに適応した時、全ドイツ国民の国土や産業や生活様式を必然的に荒廃させたその力よりもはかりしれなく大きなものです。

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The full application of our military power, backed by our resolve, will mean the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland.

次の文にいきますが、この文も長いので、フレーズに切りながら解説をしていきます。

最初にざっくりと文構造を解説しておくと、

  • The full application of our military power, backed by our resolve, の部分が主部になります。
  • will meanが述語になります。
  • the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homelandが、他動詞に対する目的語となり、andで繋がっています。

という構造です。

主部 “The full application of our military power, backed by our resolve”について

The full application of our military powerで、「連合国の軍事力を完全に使用することは」という部分までが主部。applicationは「適用する」とか「活用する」といった意味。

backed by our resolveですが、この部分は分詞構文です。主語の意味を補足的に説明するパートです。backが他動詞で使われていますね。backが他動詞で使われるときのコアイメージは「後ろから支える」とか「後方へ動かす」という意味。resolveは「システム英単語」や「ターゲット1900」や「鉄壁」などの大学入試用の単語帳に載っています。resolveという単語のコアイメージは「問題や困難を解決するために強い決意や確固たる意志を持つ」ということです。結構強い意味ですね。ここでは前の第2項でdeterminationという単語が出てきましたが、それのパラフレーズと考えてもいいでしょう。

主部をまとめると、

「私たちの確固たる決意によって支えられている連合国軍の軍事力を完全に使用することは」

という意味になります。

述語will meanについて

述語部分はwill meanで、「意味することになるでしょう」ということですが、その内容を見ていきます。

目的語その1 “the inevitable and complete destruction of the Japanese armed forces”について

inevitableは「必然的な」という意味の形容詞。大学入試レベルの英単語帳にはもちろん掲載されています。andは後ろの形容詞のcompleteを繋いでいます。それが後ろの名詞のdestructionを修飾しています。「必然かつ完全な破壊」と言っています。そして、何を破壊するのかというと、それがof以下に書かれています。the Japanese armed forcesつまり「日本軍」ってことです。「日本軍の必然かつ完全な壊滅を意味します」と前半では言っています。

ここまでの訳をまとめておくと、

私たちの確固たる決意によって支えられている連合国軍の軍事力を完全に使用することは、必然かつ完全な破壊(=壊滅)を意味します

となります。

目的語その2 “and just as inevitably the utter devastation of the Japanese homeland”について

andで結んでいます。

等位接続詞を見たら、何と何を繋いでいるのかを確認する作業が必要です。端的に示せばdestructionでしょうね。

あとは細かく見ていきます。just asで「同じように」。

どのように同じようにと言っているのかというと、もちろん「日本の軍隊と同じように」ということ。日本の軍隊と同じように「必然的に」という意味をjust as inevitablyは表現しています。utterは「完全な」という意味。completeという単語のパラフレーズが起こっています。devastationは「荒廃」とか「破壊」という意味。ここでもdestructionのパラフレーズが起こっています。the Japanese homelandで「日本国本土」を表します。ここで後半をまとめると、「必然的に日本国本土の完全な破壊を意味する」ということになります。

1文を通して訳してみよう!

ではここでまとめてみましょう。

文がうまく繋がるように、少しだけ日本語を変えました。

私たちの確固たる決意によって支えられている連合国の軍事力を完全に活用することは、日本軍の必然的かつ完全な壊滅を意味し、同じように日本国土の完全な破壊を意味します。

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まとめ – 「ポツダム宣言」第3項試訳

ここまで長い文を苦労して訳してきましたが、簡単に言えば、

「無駄な抵抗は止めなさい!ドイツみたいになりたいのか!」

と言っています。日本に対する脅迫のような文です。訳文でもう一度確認してみましょう。

世界の覚醒した自由な民族の力に対して、無益で無意味なドイツの抵抗の結果は、日本国民に対する先例として極めて明確に示されています。いま日本に集結するその力は、抵抗するナチスに適応した時、全ドイツ国民の国土や産業や生活様式を必然的に荒廃させたその力よりもはかりしれなく大きなものです。私たちの確固たる決意によって支えられている連合国の軍事力を完全に活用することは、日本軍の必然的かつ完全な壊滅を意味し、同じように日本国土の完全な破壊を意味します。

これは明らかに国際法違反です。

「日本国土の完全な破壊」とはどういうことなのでしょうか?「戦時国際法」においては(現在は「国際人道法」という)、「戦闘員」と「非戦闘員」は分けて考えるものです。既に「ポツダム宣言」が出される前に、東京をはじめとして日本各地が連合国から空爆を受けていました。戦争で不利になっているからやむをえないだろうと考える人も少なくないと思いますが、「人道的にこれはまずいだろう」と考えるのが筋ではなかろうかと考えます。

多くの国民の命が既に犠牲になっているので「ポツダム宣言」は受け入れなければならなかったのでしょうが(最優先はもちろん国民の命だと思います!)、その決断の中でこういう条項を飲まされるわけなので、当時の日本の国のリーダーはさぞ悔しかったのだろうなと考えられます。

ポツダム宣言の第4項について英文から和訳をして解説をしてみました!
KÁSHIRO Masahiro

日本まほろば社会科研究室客員研究員
日本スペイン法研究会会員
ブロガー、インスタグラマー、音楽家、授業をしない大手学習塾の校舎長
 
共著(日本スペイン法研究会の一員として)で、「現代スペイン法入門」(嵯峨野書院)と「Introducción al Derecho Japonés actual」(Editorial Thomson Reuters – Aranzadi)の一部を執筆。他にも、日本まほろば社会科研究室サイト内で、小学校や中学校や高校での社会科教育で役立つ多くのコンテンツを執筆(コンテンツはリンク先を参照)。
 
X JAPANやThe Last Rockstarsのリーダーとして活躍されているYOSHIKIさんのファンでもある。

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