【憲法条文シリーズ】 日本国憲法第81条について – 違憲審査権について

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日本国憲法条文シリーズ
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今回は、司法権に関する条文の中でとてもよく出題される違憲審査権についてわかりやすく解説していきます。

憲法条文シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。

まずは問いに答えて、それから解説を読みます。復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。

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日本国憲法第81条(穴埋め問題)

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が( )に適合するかしないかを決定する権限を有する( )である。

日本国憲法第81条(解答)

最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

日本国憲法第81条(解説)

統治機構の条文を見る際の前提

統治機構の勉強をする場合には全体像を把握しながら学習をしていきましょう。

日本型統治の図
日本型統治のあり方

権力分立の話をする場合、必ず上の図が頭に入っていなければなりません。「権力者」の中の話をしているのだという前提が必要です。

日本型統治のありかた「シラス政治」の解説は別のコンテンツにあるので参照してください。日本の教科書からはほぼ抹殺されていますが、とても大切な考え方です。

その上で、「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「権力分立」の図を頭に置きながら、どこの機関の何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。

日本の権力分立について
日本の権力分立

今回の条文は、裁判所から内閣裁判所から国会に向けられた矢印についてのお話です。

違憲審査権について

違憲審査制とは?

裁判所というのは司法権を握っている国家機関です。具体的な法的な問題によって権利を侵害された人が最後に駆け込む場所が裁判所です。

例えば、貸した金を返してくれないので、お金を貸した相手に対して「返してくれ」と裁判所に訴えたり(民事裁判という)、人を殺した人に刑罰を与えたり(刑事裁判という)するところです。お金を返してくれないからといって、怖いお兄さんを連れて貸した相手の家に殴り込みに行ってはいけません。殺人者に怒りがあるからといって、殺された本人に代わって家族の人が殺人者のところに行って「成敗!」してはいけません。お金を貸した人にとって、殺された人にとって、何とかしてくれるトコロが裁判所です。

そういった具体的な事件の中で憲法の問題が出てきたときに、裁判所は法律が憲法に違反しないかどうかを判断する権限を持っています。これを、違憲審査権いけんしんさけんと言います。

違憲審査権を持っているのは最高裁判所だけ!?

違憲審査権は、条文上では「最高裁判所は」という主語になっていますが、下級裁判所においてもその権限を持つと解釈されている点は注意が必要です。

違憲審査の対象は!?

違憲審査の対象としては、まず条文上に出てくるものとしては、「一切の法律、命令、規則又は処分」が登場します。その他としては、地方公共団体が制定する「条例」も違憲審査の対象となります。

一方、問題となるのが、立法不作為についても違憲審査の対象となるのか?という議論です。つまり、法律を制定しなかったことによって人権侵害が起こり(つまり作るべき法律が作られていない状況を放っておいた場合)、これが立法府に対して違憲審査権が行使できるのかという問題です。この点について、「法律を作っていないものを作れ!」ということを裁判所が言えるというのは、裁判所が「法律を作れ」と言っているのに等しいと言えます。法律を作るのは立法府である国会の仕事であり、裁判所の仕事ではありません。したがって、基本的には立法不作為について裁判所が違憲審査を行うのは筋が違うとも言えそうです。

しかし、以下の判例については、立法不作為について憲法判断を行なっています。

  • 在外邦人選挙権についての判断(平成17年9月14日)
  • 女性の再婚禁止期間についての判断(平成27年12月16日)

これらの2つの判例については、立法が不作為であったことについて、「違憲である」と判断されています。

憲法の最高法規性と違憲審査制度

別の機会できちんと見ますが、憲法で次のような条文があります。

第九十八条

  1. この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  2. 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

憲法98条1項で、国の最高法規さいこうほうきだと言っています。要するに、法律の親分です。これがどのように違憲審査権とつながるのかというと、それは次のような論理でつながっています。

憲法は基本的人権(自由権など)のことが書かれている。
  ↓
国家権力であっても、公共の福祉に反しない限り人権を侵すことはできない。
  ↓
憲法を親分にすると、基本的人権に反する法律を作ったとしても「憲法違反だ!」と言ってその法律はダメだ(違憲審査権)と言えるようになる。

上のこの理屈はしっかりと覚えておくようにしましょう。憲法が国の最高法規である理由と基本的人権の保障とをつなげる理屈となります。

 

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