今回は、日本国憲法第1条の条文穴埋め問題を解きながら、憲法上の「天皇の地位」についてわかりやすく解説していきます。
憲法条文シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
まずは問いに答えて、それから解説を読みます。さらに、発展的な内容については<発展>という項目で解説を試みます。社会科が苦手だなと思う人は<解説>まで。得意だという人は<発展>まで読んでみてください。
復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。
日本国憲法第1条(穴埋め問題)
天皇は、日本国の( )であり日本国民統合の( )であつて、この地位は、( )に基く。
日本国憲法第1条(解答)
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
日本国憲法第1条(解説)
試験対策的には、「象徴」という言葉が出てくれば問題ありません。象徴天皇制(しょうちょうてんのうせい)というキーワードを覚えておきましょう。
「象徴」という言葉について、どの専門書を読んでもあんまり大した説明がなされていません。日本の肇国(ちょうこく)以来の天皇と国民の関係に基づいた解説はほとんどなされていません。くわしい解説については以下のコンテンツを参照してください。下に書いてある「しらす」という言葉と「象徴」という言葉は同じものであると解釈してほしいです。
言葉が難しい部分は、やっぱり条文の後半の「主権の存する日本国民の総意に基く」という部分でしょうか。「主権」というのは、ここでは「国の政治のあり方を最終的に決定する」という意味です。つまり、国の政治のあり方を最終的に決定するのは日本国民で、天皇陛下はそういった日本国民の支持に基づいて存在されるということです。これを主権在民とか国民主権と言います。裏から言えば、最終的に天皇が政治のあり方を決めるのではないですよ、ということを言っています。
もっとも、現実には国民を代表する国会議員の中から生まれた内閣総理大臣をリーダーとして国の政治が進んでいき、政治の失敗は内閣総理大臣が責任をとっていますが、そのすべてのおおもとには国民がいるということは忘れてはいけませんね。
日本国憲法第1条(発展)
私たちの国はこれまで天皇は国民とともに存在してきました。大東亜戦争(だいとうあせんそう)(教科書には太平洋戦争と書いてあります)に負けてから作られている歴史の教科書には、天皇と国民の関係が書かれなくなってしまいました。なので、天皇と国民の関係の歴史を学ぶ機会が今の中学生や高校生にはないのです。
くわしくは歴史の授業に譲りますが、我が国の歴史において天皇は国民とともに存在し、常に日本国の象徴であったのだということを押さえてほしいなと思います。