憲法条文シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
まずは問いに答えて、それから解説を読みます。さらに、発展的な内容については<発展>という項目で解説を試みます。社会科が苦手だなと思う人は<解説>まで。得意だという人は<発展>まで読んでみてください。
復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。
日本国憲法第3条及び第4条(穴埋め問題)
第三条
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の( )と( )を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条
第1項 天皇は、この憲法の定める( )のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
第2項 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
日本国憲法第3条及び第4条(解答)
第三条
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
第四条
第1項 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
第2項 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。
日本国憲法第3条及び第4条(解説)
試験対策としては、「助言と承認」という言葉が出てくれば問題ありません。
現在の憲法学では、「助言」と「承認」という言葉には大した区別はないと解されています。試験対策的にはそれで構いません。
しかしながら、かつては「助言」と「承認」には違いがあると解されていました。日本国憲法の英訳を見ると、この部分はadvice and approvalとなっています。「助言」というのは内閣から天皇に対して行う行為です。「承認」というのは天皇から内閣に対してなされるものです。そういう感じで違いがあるという学説がかつては有力ではありました。
さて、条文の頭にある「天皇の国事に関するすべての行為」のことを、「国事行為(こくじこうい)」と言います。国事行為については具体的には憲法6条と7条に書いてありますが、天皇はこれらの条文に載っている内容以外のことについてはかかわっていけないのが憲法の建前です(憲法第4条第1項)。
そして、日本国憲法第3条に書いてある「内閣が責任を負う」というのは、天皇の国事行為については内閣が助言と承認を行ったのだから、助言と承認を行った内閣が天皇が行った国事行為についての責任を負うのだという意味です。逆に言えば、天皇は政治的な責任を一切負わないということです。これは国王がいらっしゃる君主制を採用している国では珍しい話ではありません。天皇を政治から遠ざけることで皇族を守るという意図があります。
日本国憲法第3条及び第4条(発展)
天皇は日本国憲法第6条及び第7条以外にも多くの公務を行っています。例えば、国体(国民体育大会)などに出席されてごあいさつをされたり、毎年8月15日に挙行される全国戦没者追悼式へ出席されたり…。これは憲法に載っていません。憲法学ではこういうのを「公的行為」といい、通説では憲法に書かれていなくても行ってもOKだと言われています。
他にも天皇のお仕事の中で大切なのは、宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)をとおして国民の平和と安全をお祈りされるご公務をされていることです。「宮中祭祀」とは、宮中で行われるおまつりのことです。天皇陛下は1年間でだいたい20件ぐらいの祭事を行っています。具体的にどのようなことを行っているのかはこちらをご覧ください。
やや話は脱線しますが、今では「祝日」になっていますが、昔は「祭日」と呼ばれて、これらは「宮中祭祀」と密接な関係があります。
- 四方節(現在の元日)
- 紀元節(現在の建国記念の日)
- 天長節(現在の天皇誕生日)
- 春季皇霊祭(現在の春分の日)
- 秋季皇霊祭(現在の秋分の日)
- 明治節(現在の文化の日)
- 新嘗祭(現在の勤労感謝の日)
戦前に定められた「祭日」のうち、現在でも「祝日」として残っているものをあげてみましたが、皇室は我々日本人の生活にも大きな影響があることが何となく分かってもらえると思います。皇室のおしごとについては、分かりやすく宮内庁のキッズページにまとまっていますので、これを機にぜひ勉強してみましょう。
このように、中学校や高校の公民の授業では政治に関わる部分しか習わないので、国事行為以外の天皇のお仕事(公務)を勉強する機会は学校ではまずないと言ってもよいでしょう。天皇の公務がないがしろにされているようにしか思えません。日本国民としてしっかりと勉強しておきましょう。