今回は、日本国憲法第15条の条文の穴埋め問題を通して、参政権についての解説を行います。
「参政権(さんせいけん)」というのは政治に参加する権利のことですが、今回は参政権の中でも一番大切な「選挙権」について具体的に見ていくことにします。
この日本国憲法条文穴埋め解説シリーズは、試験でよく出そうな日本国憲法の条文を解説するシリーズです。
まずは問いに答えて、それから解説を読みます。さらに、発展的な内容については<発展>という項目で解説を試みます。社会科が苦手だなと思う人は<解説>まで。得意だという人は<発展>まで読んでみてください。
復習は、条文を音読し、間違えた場合は正解を覚えましょう。空欄のまま条文が読めるようになれば合格です。
日本国憲法第15条(穴埋め問題)
第十五条
第1項 公務員を( )し、及びこれを( )することは、国民固有の権利である。
第2項 すべて公務員は、全体の( )であつて、一部の( )ではない。
第3項 公務員の選挙については、( )による普通選挙を保障する。
第4項 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
日本国憲法第15条(解答)
第十五条
第1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
第2項 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
第3項 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
第4項 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
日本国憲法第15条(解説)
文の意味まで細かく知っておかなければならないのは第3項と第4項です。1項と2項はちょっと難しいですが、結論が理解できていればOKです。
日本国憲法第15条第1項・第2項について
憲法第15条第1項と第2項は国民主権(こくみんしゅけん)について書かれたものです。公務員は国民全体のために働きなさいということです。
国民主権については、日本国憲法の前文第1段落にも書いてありますね。忘れてしまったという人は復習で確認しておきましょう。
日本国憲法第15条第3項・第4項について – 選挙の4原則
日本国憲法第15条の第3項と第4項は選挙の4原則について述べた規定です。
まずはざっくりと一覧をあげてみたいと思います。

以下、くわしく見ていきましょう!
普通選挙について
「普通選挙」とは、一定年齢以上の人はすべての人が選挙権を持つことを言います。
かつての日本は普通選挙ではありませんでした。一定程度の税金を納めた人でなければ、投票権が与えられなかったのです。歴史を表でまとめたので見てみましょう!

現在はすべての男女18歳以上に選挙権が与えられています。2015年(平成27年)6月に公職選挙法(こうしょくせんきょほう)が改正され、選挙権が与えられる年齢が、20歳以上から18歳以上となりました。条文を参考に見てみましょう。
公職選挙法第九条第1項
日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。
18歳以上の男女に選挙権が与えられた最初の選挙は、2016年(平成28年)7月に行われた(第24回)参議院議員選挙の時からです。
細かいですが、市町村議会及び市町村長についての選挙権は、「引き続き3か月以上市町村の区域内に住所を有する者」という要件がプラスで付きます。また、知事・都道府県議会議員の選挙における選挙権については、 「引き続き3カ月以上その都道府県内の同一の市区町村に住所のある者」という要件がプラスで付きますが、試験対策としてはちょっとここまではやりすぎかなとは思います。
興味のある人は、総務省のウェブサイトを読んでみてください。
秘密選挙について
「秘密選挙」とは、誰に投票をしたのかを秘密にしておくことができる原則のことを言います。投票した人を誰かに言わなければならないとすると、自由な意思で投票行動をすることができなくなります。もしも皆さんが通う学校の生徒会長を選ぶ選挙があったとして、だれに票を入れたのか分かってしまうことが最初から分かっていたら、自分の素直な気持ちで投票することなんてできませんよね。清き一票ではなくなってしまいますよね。だから秘密選挙の原則を採用し、投票用紙には自分の名前を書かずに投票を行うのです。
そのことが日本国憲法第15条第4項には書かれているのです。もう一度条文を見ておきましょう。
日本国憲法第15条第4項
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
平等選挙について
「平等選挙」とは、1人が1票を持つことだけでなく、1票の価値が平等であることを言います。一人が一票を投票するというのは分かりますね。税金を多く収めている人は一人二票にしましょうとは言ってはいけません、ということです。これはそんなに難しくありません。
ちょっと難しいのは、1票の価値が平等という部分です。下の例を見て理解してください。

A選挙区は有権者(投票できる人)が100万人いて、そこから1人の代表者を選出します。B選挙区の有権者は50万人でそこから1人の代表者を選出します。そして、C選挙区は25万人の有権者がいて、そこから1人の代表者を選出するものとします。
本来であれば、1票の価値を平等にするためには、C選挙区から1人を選出したとすると、B選挙区からは2人選出し、A選挙区からは4人選出されなければ、1票の価値は平等とは言えませんね。
ところが、A選挙区からもB選挙区からもC選挙区からも1人しか選出されないとなると、1人あたりの1票の価値が不平等になることは明らかですね。C選挙区の1票の価値はA選挙区の1票の価値と比較すると、4分の1しか価値がないことが分かります。これを分かりやすく票数で表現すると、C選挙区の一票の価値は0.25票しかないことになります。これはマズイぞということです。これが一票の格差の問題というもので、衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙が終わるとすぐに有志の弁護士さんたちが一票の格差をめぐって裁判をやっていて、ニュースにもなりますが、それはこの話なのです。
みなさんが住んでいる場所の一票の価値はどのようなものになっているでしょうか。ぜひこのサイトで調べてみてください。
直接選挙について
直接選挙(ちょくせつせんきょ)とは、直接候補者に投票することを言います。これに対応するものとして間接選挙というものがありますが、これはアメリカの大統領選挙で採用されているのが代表例です。

間接選挙は有権者と候補者の間にだれかが入るから間接なのだということさえ知ってもらえればOKです。
まとめ
どうしても覚えられないという人は、強引な語呂合わせですが、
「ち」「び」「秘密」「普通」
「ち」は直接選挙、「び」は平等選挙、「秘密」は秘密選挙、「普通」は普通選挙
と項目をまず丸暗記してもらって、少しずつ1つずつの内容を理解するというやり方もありですから、参考にしてみてください。
解説はちょっと難しかったと思いますが、4つの原則についての理解につながればよいなぁと思っています。