日本国憲法第48条をわかりやすく – 国会議員の兼職の禁止

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今回は、日本国憲法第48条の内容を踏まえて、国会議員の兼職の禁止について、中学生や高校生の皆さんに向けてわかりやすく解説します。

今回は条文穴埋め問題はありません。

なぜ衆議院議員は参議院議員になれないのでしょうか?逆になぜ参議院議員は衆議院議員になれないのでしょうか?その謎に迫ってみたいと思います。

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日本国憲法第48条条文

第四十八条
 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

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日本国憲法第48条解説

統治機構の条文を見る際の前提

統治機構の勉強をする場合には全体像を把握しながら学習をしていきましょう。

日本型ガヴァナンスの図
日本型ガヴァナンスの図

権力分立の話をする場合、必ず上の図が頭に入っていなければなりません。「権力者」の中の話をしているのだという前提が必要です。日本型統治のありかた「シラス政治」の解説は別のコンテンツにあるので参照してください。日本の教科書からはほぼ抹殺されていますが、とても大切な考え方です。

その上で、「国会」「内閣」及び「裁判所」の条文や制度を勉強する場合には、必ず「権力分立」の図を頭に置きながら、どこの機関の何の話をしているのかを全体像を見ながら勉強してください。これは「国会」「内閣」及び「裁判所」を勉強するときの地図のようなものだと思ってください。

日本の三権分立について
日本の権力分立について

日本国憲法第48条の解説

主語が「何人も」となっています。「なんぴと」と読みます。「どんな人でも」という意味です。

同時に両議院の議員たることはできない

というのは、

  • 衆議院議員になったら参議院議員になれない。
  • 参議院議員になったら衆議院議員になれない。

ということです。

だから、もしも衆議院議員が参議院議員選挙に立候補して当選したら参議院議員になってしまうので、衆議院議員は辞めなければなりません(国会法第108条)。

なぜこのような規定があるのでしょうか?

それは憲法では二院制を採用しています。衆議院と参議院とでは異なる役割や性格があります。したがって、衆議院議員と参議院議員は別の人がなるべきであるという価値観があるからです。

国会議員の兼職規定の関連法令

また、次のような兼職禁止規定もあります。

以下の条文は国会法の規定です。

第三十九条
 議員は、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官、大臣補佐官及び別に法律で定めた場合を除いては、その任期中国又は地方公共団体の公務員と兼ねることができない。ただし、両議院一致の議決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は、この限りでない。

国会法第39条

ちょっと読みにくい条文なので整理します。条文を読むときに「〜除いては」の部分をカッコに入れてしまいます。カッコの中が例外になり、カッコの外が原則になります。条文を読むときのコツです。

  • 原則: 国会議員はその任期中に国又は地方公共団体の公務員と兼ねることができない。
  • 例外その1: 国会議員は、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官、大臣補佐官及び別に法律で定めた場合は兼職OK。
  • 例外その2: 国会議員は、両議院一致の議決に基づき、その任期中内閣行政各部における各種の委員、顧問、参与その他これらに準ずる職に就く場合は兼職OK。

簡単に言えば、国会議員は例外規定を除いた国家公務員になることも地方議員になることもできないと書いてあります。

さらに、地方公共団体の議員や長もまた国会議員になることはできません。こちらは地方自治法に載っています。2つの条文を紹介します。

第九十二条 普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。

地方自治法第92条第1項

第百四十一条 普通地方公共団体の長は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。

地方自治法第141条第1項


国会議員は、日本中の人たちを代表して国のために働く大切な仕事です。だから、国会議員はその仕事に集中しなければなりません。そのため、法律で国会議員が他の公務員にはなれないと決められています。

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現職の市長が衆議院議員総選挙に立候補した場合の法的な手続きはどうなるの?

では、現職の地方公共団体の長(市長)が衆議院議員総選挙に立候補した場合に、どのようになるのでしょうか?

それは公職選挙法第90条に細かく規定があります。ただ、条文がとても細かくて読みにくいので、エッセンスを解説します。

現職の公務員が国会議員や地方議会議員に立候補するためには、その公務員は選挙に立候補する届出をした時点で、自動的にその公務員の職を辞めたことになるという趣旨の規定です。

具体例を見てみましょう。

名古屋市の河村たかし市長が辞職届を提出 27日の衆議院選挙に出馬へ
名古屋市の河村たかし市長は、令和6年(西暦2024年)10月27日に投開票が行われる衆議院選挙で、愛知1区から政治団体「日本保守党」の候補として出馬することを表明しました。

衆議院の解散を受け、河村市長は令和6年(西暦2024年)10月9日午後9時前に、名古屋市議会議長宛てに辞職届を提出しました。河村市長は「色々な思いはありますが、精一杯やりました。名古屋市民の皆さんには感謝しています」とコメントしています。

辞職届は10月14日付で提出されていますが、市議会で同意が得られない場合、10月15日の衆議院選挙の公示日に立候補を届け出ることで、自動的に市長職を失職する見込みです。

「メ〜テレニュース」令和6年10月9日記事より

この辞表が受け付けられれば公職選挙法第90条に基づいた辞職ではなく、地方自治法第145条但書に基づく辞職になります。

第百四十五条 普通地方公共団体の長は、退職しようとするときは、その退職しようとする日前、都道府県知事にあつては三十日、市町村長にあつては二十日までに、当該普通地方公共団体の議会の議長に申し出なければならない。但し、議会の同意を得たときは、その期日前に退職することができる。

地方自治法第145条

何気ないニュースではありますが、手続きを条文で追っていくと「なるほどなぁ」と思いますね。高校入試や大学入試で頻出の条文ではありませんが、知的好奇心や時事ニュースから自分で調べてみると興味深いことがわかってきます!

 

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