今回は、日本の神話が掲載されている「古事記」や「日本書紀」の中で語られている「国生み神話」についてわかりやすく解説していきます。
神様の名前を欲張って覚える必要はありません。覚えてほしい神様については強調してあるので、そこだけ覚えてくれたらよいです。また、「古事記」や「日本書紀」を理解する上で理解しておきたい言葉については解説をきちんと加えてあります。
まほろば社会科研究室の日本神話に関する記述は大雑把なものなので、くわしく「古事記」や「日本書紀」について勉強してみたいという人は、別で本を読んでみることをオススメします。
なお、このコンテンツは、竹田恒泰「現代語古事記」(学研)を参考にして作成しております。
「国生み」を神の総意で決定する
「天地初発」のお話の続きです。「天地初発」についての解説は以下にあります。
さて、高天原にいらっしゃる神様(天つ神)は、その総意によって神代七代のうちで一番最後に成った伊耶那岐神と伊耶那美神に対して、高天原の下界の海をお指しになって「この漂っている国を修め理り固め成せ」と命ぜられました。その際に天沼矛をお与えになりました。
重要な事柄は総意によって決めるという点がポイントです。
「一神教」の宗教ではあり得ないハナシですね。一神教というのは神様が独りしかいない宗教のことを言います。これまでこれまで見てきたとおり、日本の神様は数多くいらっしゃいます。
神様で話し合いをもたれる場面はこれからも「古事記」や「日本書紀」の中で何度も登場します。
オノゴロ島の誕生
伊耶那岐神と伊耶那美神は、天空に浮いている天の浮橋に立って、海に天沼矛を下ろして海水を「こうろ、こうろ」とかき鳴らして矛を引き上げました。矛からは海水が滴り落ち、塩が固まって島ができました。これがオノゴロ島です。「古事記」には淤能碁呂島と記されています。
伊耶那岐神と伊耶那美神は、高天原の神々と心を通じ合わせるためにオノゴロ島に天之御柱をお建てになり、八尋殿という大きな神殿をお建てになりました。
伊耶那岐神と伊耶那美神は、オノゴロ島を拠点として「国生み」を始められます。
「国生み」を試みるがうまくいかない…
男神の伊耶那岐神は、自分の身体はできあがっているが下半身に1カ所だけ余分に出っ張っているものがあることに気づきます。
一方の女神の伊耶那美神は、自分の身体はできあがっているが下半身に1カ所だけ1カ所だけ何か足りずにくぼんでいるところがあることに気づきます。
男神と女神は何か違うところがあるようです。他人と違うところがあると時として争ってしまうことがあります。でも男神の伊耶那岐神と女神の伊耶那美神はその違いを認め合います。
伊耶那岐神は伊耶那美神に対して、伊耶那岐神の出っ張っているものを伊耶那美神のくぼんでいる穴に挿入して塞いで国を作ろうと提案しました。伊耶那美神はこれに賛成なさいました。
伊耶那岐神は左から、伊耶那美神は右から、天之御柱の周りを回って「まぐわい」を始めます。「まぐわい」というのは夫婦の交わりのことを指します。天之御柱を回って出会ったところで、伊耶那美神から先に「あなにやし、えおとこを」と声をかけました。「あなたはなんていい男なんでしょう」ということです。続けて伊耶那岐神から「あなにやし、えおとめを」と声をかけました。「あなたはなんていい女なんだろう!」ということです。
さて、こんなふうにやってみて「国作り」がうまくいったのかというと、実はうまくいきませんでした。
国作りがうまくできる方法を太占(ふとまに)で占ってみた
伊耶那岐神と伊耶那美神は、国作りがうまくいかないので、高天原にいらっしゃる神様(天つ神)のところに相談をしに行かれました。高天原にいらっしゃる神々は太占という占いによって訊いてみることを指示しました。そうしたら、女神の方から先に声をかけたのがよくないということが分かりました。
早速、2柱の神様はオノゴロ島に戻って、今度は男神である伊耶那岐神から「あなにやし、えおとめを」と声をかけ、続いて伊耶那美神が「あなにやし、えおとこを」と声をかけました。そして再び交わりました。
国生みがうまくいった!
そうすると、立派な国が生まれました。8つの島を生んでいきます。
1番最初にお生みになった子は淡路島。
続けて四国をお生みになりました。四国は胴体は1つでも顔が4つあったと言われています。顔ごとに名前があって、それが伊予国、讃岐国、阿波国及び土佐国になります。このうち、伊予国に成ったのが愛比売という女神でした。「えひめ」っていう言葉、どこかで聞いたことがありませんか?都道府県名で愛媛県がありますね。愛媛県の由来は古事記の神様の名前なのです。ご存知でしたか?
続けて隠岐諸島をお生みになりました。
次に生んだのは筑紫島、つまり九州でした。こちらも四国と同じで、胴体が1つで顔が4つあります。顔の名前はそれぞれ、筑紫国、豊国 、肥国及び熊曾国です。
続けて壱岐島をお生みになりました。
続けて津島(現在の対馬)をお生みになりました。
次に佐渡島をお生みになりました。今では「さどがしま」と発音されますね。
最後に、大倭豊秋津島をお生みになります。これが畿内を中心とする地域です。本州を指すという解釈あります。
このように八島が生まれました。この八島が先に生まれたことで、我が国のことを大八洲国と呼ぶことがあります。古い史料にはこの表現が多く登場します。
この後、さらに6つの島を生み、「国生み」が終わりました。これで日本の国土は完成したのです。
神話ではなく、科学における日本列島の誕生については「縄文海進」によって日本列島の基礎が形作られました。縄文時代のコンテンツを振り返ってみたいという人は下のリンクをクリックしてみてください。
国生みを終えた伊耶那岐神と伊耶那美神は、次にそこに住む神様を生んでいくことになります。続きの物語(神話)はこちらです。