今回は、「因幡の白兎」のお話をわかりやすく解説していきます。
このお話、幼稚園や小学生の頃に本で読んだことのある人も多いと思います。実は肇国(ちょうこく)の神話の中に出てくるお話です。
須佐之男命(すさのおのみこと)と櫛名田比売(くしなだひめ)から数えて6世孫にあたる大国主神(おおくにぬしのかみ)が主人公のお話です。
前回のお話はこちら。
それではお話を進めていきましょう。
童謡「だいこくさま」から「因幡の白兎」のあらすじをつかもう!
いきなり童謡の話からします。
童謡「だいこくさま」は、西暦1905年(明治38年)に「尋常小学唱歌 第二学年」上に掲載された文部省唱歌です。作詞は石原和三郎、作曲は田村虎蔵が担当しています。このコンビの作品で他に有名なものとしては、童謡「金太郎」や「花咲爺」などがあります。
さて、前置きはこれぐらいにして、歌詞を見てみましょう。
童謡「だいこくさま」の歌詞
大きなふくろを かたにかけ
大黒さまが 来かかると
ここにいなばの 白うさぎ
皮をむかれて あかはだか
大黒さまは あわれがり
「きれいな水に 身を洗い
がまのほわたに くるまれ」と
よくよくおしえて やりました
大黒さまの いうとおり
きれいな水に 身を洗い
がまのほわたに くるまれば
うさぎはもとの 白うさぎ
大黒さまは たれだろう
おおくにぬしの みこととて
国をひらきて 世の人を
たすけなされた 神さまよ
童謡「だいこくさま」のメロディ
童謡「だいこくさま」の歌詞の解説をしながら物語を解説する
冒頭の歌詞はここから始まります。
大きなふくろを かたにかけ
大黒さまが 来かかると
ここにいなばの 白うさぎ皮をむかれて あかはだか
童謡「だいこくさま」の1番より
いきなりコレが来てます。前提があるので加えて解説をします。
ここでいう「大黒さま」というのは大国主神(おおくにぬしのかみ)のことです。
大国主神にはたくさんの兄弟がいました。
大国主神も含めたご兄弟は因幡(いなば)というところに向かっていました。因幡というのは現在の鳥取県の東部のあたりです。なぜ因幡に向かっていたのかについては後で解説します。
さて、まず大国主神のご兄弟たちがまず皮をむかれて皮膚が真っ赤になった一匹の白兎を気多(けた)というところにある岬の近くにある海岸で見つけました。白兎に対して、大国主神の兄弟たちはこんなアドバイスを送ります。
「海水を浴び、風にあたってから、山の峰の上でうつ伏せになりなさい。」
このアドバイスを素直に聞いた白兎だったのですが、皮膚はもっとヒビだらけになってしまいました。兎はさらに痛みに苦しんでいたのです。むちゃくちゃなアドバイスですよ。
そこに後になって現れたのが大国主神(おおくにぬしのかみ)でした。当時はまだ大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)と呼ばれていました。大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)は「大きな袋」を持っていました。「袋を担ぐ」のは普通立場の弱い人がやることです。イメージとしては、学校の帰りなどにジャンケンで負けて「カバン持ち」やっているあの感じだと思ってくれてかまいません。
そもそも、なぜ白兎は「皮をむかれて あかはだか」になっていたのでしょうか?白兎は大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)からそれを聞かれると、次のように返答します。
「隠岐島(おきのしま)からこの地に渡ろうとしたのですが、その術(すべ)がありませんでした。そこで、海に住んでいたワニ(実際はサメ?)を騙して渡ろうと考えました。ワニに対して自分の一族とワニの一族とどちらの一族の方が多いか数えてあげようと言いました。そして、この島から気多(けた)の岬まで列になって伏して並びなさいと言いました。私はその上を踏んで走りながらその数を数えていきました。数えながら渡り気多の岬に下りようとした時に、思わず私に騙されたのだと言ってしまったのです。そうしたら、一番端にいたワニが怒って私を捕らえて私の毛をはぎとってしまったのです。」
この話が前提にあった上で、童謡「だいこくさま」の2番に歌詞の物語は進んでいきます。
大黒さまは あわれがり
童謡「だいこくさま」の2番より
「きれいな水に 身を洗い
がまのほわたに くるまれ」と
よくよくおしえて やりました
歌詞の中にある「がまのほわた」とは漢字で「蒲の穂綿」と書きます。蒲(がま)というのは花の名前です。古事記には「蒲の穂の花粉」と書いてあって、内容には少し違いがありますが、ここでは細かいことは触れません。蒲(がま)は実はコレが薬草なのです。大黒さまこと大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)はそれを丁寧に教えてあげました。
その結果どうなったのかが3番の歌詞です。
大黒さまの いうとおり
童謡「だいこくさま」の3番より
きれいな水に 身を洗い
がまのほわたに くるまれば
うさぎはもとの 白うさぎ
この歌詞はもうそのままですね。
4番の歌詞は大黒さまはその後どうなったのか?ということでひとまず解説はパス。
童謡「だいこくさま」の物語後の大穴牟遅神と白兎のやりとりについて
童謡「大黒さま」はここで終わっているのですが、話はもう少しだけ続きます。が、もう少し続けるためには前提となる状況をもう少し説明せねばなりません。
大国主神こと大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)の兄弟は、みんな因幡(いなば)に住む八上比売(やがみひめ)に惚れ込み、求婚のために因幡に出かけていたのです。大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)はそのカバン持ち(袋)をさせられていたという状況でした。
この白兎は次のようなことを大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)に言いました。
「あなた以外の兄弟は八上比売(やがみひめ)をゲットすることはできません。今は袋を背負う賤(いや)しい仕事をしているけれども、あなたが必ず八上比売(やがみひめ)と結ばれるでしょう。」
神の力を持った兎だったのです。
さて、この予言は的中したのかというと、実は的中してしまいました。
八上比売(やがみひめ)は求婚に対して、
「大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)の妻になるつもりです。」
と答えました。
兄弟は怒り、話し合いをした上で、罠にはめて大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)を殺してしまいました。
さて、大穴牟遅神(おおなむぢのかみ)がここで死んでしまったらどうやって国作りを行えるのでしょう?