「ポツダム宣言」第4項の内容を分かりやすく解説!-今決断の時!?

ポツダム宣言現代語訳をしてみました 「ポツダム宣言」全文試訳
ポツダム宣言現代語訳をしてみました
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執筆&和訳: 加代 昌広かしろ まさひろ (KÁSHIRO Masahiro)

ポツダム宣言の全文の内容を和訳してみるシリーズです。

今回はポツダム宣言の第4項を和訳してみます。構成は、英文、公式邦訳、試訳とその解説の順になっています。英文は1文ずつ解説をしています。

なお、ポツダム宣言が作成された背景については、「ポツダム宣言の全文をわかりやすく解説してみました」というコンテンツでくわしく解説しましたので、そちらをご覧下さい。

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英文

(4) The time has come for Japan to decide whether she will continue to be controlled by those self-willed militaristic advisers whose unintelligent calculations have brought the Empire of Japan to the threshold of annihilation, or whether she will follow the path of reason.

公式邦訳

四、無分別ナル打算ニ依リ日本帝国ヲ滅亡ノ淵ニ陥レタル我儘ナル軍国主義的助言者ニ依リ日本国カ引続キ統御セラルヘキカ又ハ理性ノ経路ヲ日本国カ履ムヘキカヲ日本国カ決意スヘキ時期ハ到来セリ

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解説

第4項は1文がとても長いので、1文を分けて解説をしていきます。

文の骨格部分 “The time has come for Japan to decide”について

The time has comeで「時が来た」と言っています。現在完了形を使っている点がポイントです。現在完了形は「過去から現在までの時間」を表現する時制です。したがって、ここでは現在の状況に対して重要な瞬間が到来したことを強調する表現です。

その後ろ、for Japanの部分はto decide以下の意味上の主語の関係になっているのが文法上のポイントです。この部分だけを訳せば、「日本は決断するときがついにやって来た」という感じになります。

この後がwhether S+Vという形が来ています。「SがVするかどうか」というカタマリになります。文末の方にもう1つor whether she will…と来ているので、”or”つまり決断のポイントが2つある点に着目します。

以下、whether節を解釈していきます。

選択肢1: whether she will continue to be controlled by those self-willed militaristic advisers whose unintelligent calculations have brought the Empire of Japan to the threshold of annihilation,

まず1つ目のwhetherを読み解きます。

sheは国名を受ける代名詞で、指している名詞はJapanです。will continue to be controlledを含めると、「日本は統制され続ける」という意味になります。

by以下を見ていくと、those self-willed militaristic advisers…のthoseはこれから関係代名詞が来ますという限定詞の役割をしています。self-willedは「ワガママな」、militaristicは「軍国主義の」、advisorsは「助言者」という意味ですね。「ワガママな軍国主義的な助言者によって」という訳になります。

次に、関係代名詞whose以下を見ていきます。self-willed militaristic advisersをさらに具体化しています。unintelligentはココでは「愚かな」ぐらいで捉えておきましょう。calculationsは「計算」という意味もありますが、「打算」と訳した方がココでは自然だと思います。the Empire of Japanは「日本帝国」、thresholdが「ふち」annihilationが「滅亡」とか「消滅」という意味の名詞。語法ではbring A to Bというイディオムで、「AをBの状態にする」「AをBの場所に連れて行く」「AをBの状況に導く」などの意味を持ちます。これを考慮すると、「彼らの愚かな打算が日本帝国を破滅の淵に導いてきたのだ」という直訳が成り立ちそうです。ここでもhave broughtの現在完了形の表現が登場します。ぼんやりではありますが、過去から現在までそういう愚かな打算が続いてきていると言いたいのでしょう。ところでこの訳なのですが、日本語として理解できなくはないですが、無生物主語なのでこれを副詞的に訳してbringの目的語であるthe Empire of Japanを主語のように訳した方が自然な日本語になりそうです。つまり、「彼らの愚かな打算によって、日本帝国は破滅の淵に追いやられた」という意訳をした方が自然な日本語になります。

ここで、by以下を全部つなげると、「愚かな打算によって日本帝国が破滅の淵に追いやられたワガママな軍国主義的な助言者によって」となります。

まとめると、「日本は、愚かな打算によって日本帝国が破滅の淵に追いやられたワガママな軍国主義的な助言者によって統治され続けるのか」という意味になります。

これが選択肢の1番目です。

次に、米英中の3国はもう1つの選択肢を日本に対して提示します。それがor以下です。

選択肢2: or whether she will follow the path of reason.

or whether以下を見ていきます。

sheはJapanのこと。followは「追随する」という意味。pathは「道」、reasonは「理由」という意味で知られていますが、ここでは「理性」という訳の方がピッタリ合います。

つまり、「日本は理性の道を追随するのか」という意味になります。

まとめ – 「ポツダム宣言」第4項試訳

訳をまとめると、次のような感じになります。

日本は三国から2つのどちらを選ぶのか?の決断を迫られている条項だと言うことを頭に置きながら、和訳を見ていきましょう。

日本は、愚かな打算によって日本帝国を破滅の淵に追いやったワガママな軍国主義的な助言者によって統治され続けるのか、あるいは理性の道を追随するのかを、決断する時が今ここに来ているのです。

この条項も一言で言えば「降伏しろ!」という脅しですね。

続いて第5項を見ていくことにしましょう。

ポツダム宣言の第5項の英文解釈をわかりやすく解説しています。「ポツダム宣言」が連合国と日本にとってどのような取り決めなのかが書いてある重要な条項です。
KÁSHIRO Masahiro [加代 昌広]

日本まほろば社会科研究室客員研究員
ブロガー、インスタグラマー、日本スペイン法研究会会員
 
法学の専門知識を活かし、日本とスペインの法制度について深く研究しています。日本スペイン法研究会の一員として「現代スペイン法入門」(嵯峨野書院)や「Introducción al Derecho Japonés actual」(Editorial Thomson Reuters – Aranzadi)の一部を執筆しました。

また、日本まほろば社会科研究室」内で、小中高校生向けの社会科教育に役立つ数多くのコンテンツの制作に協力し、自らもコンテンツの執筆を行っています(コンテンツはリンクをクリック)。

自身のさまざまな経験から得た「学びの楽しさ」を、日本まほろば社会科研究室からアップロードされるコンテンツを通じて共に学びを共有する皆さまに向けて伝えることを使命としています。

X JAPANやThe Last RockstarsのリーダーであるYOSHIKIさんの熱心なファンでもあります。

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