「ポツダム宣言」の第5項の内容を解説してみた -「条件」とは?

ポツダム宣言現代語訳をしてみました 「ポツダム宣言」全文試訳
ポツダム宣言現代語訳をしてみました
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執筆 & 訳: 加代 昌広かしろ まさひろ(KÁSHIRO Masahiro)

ポツダム宣言の全文の内容を和訳してみるシリーズです。

今回はポツダム宣言の第5項を和訳してみます。構成は、英文、公式邦訳、試訳とその解説の順になっています。

なお、ポツダム宣言が作成された背景については、「ポツダム宣言の全文をわかりやすく解説してみました」というコンテンツでくわしく解説しましたので、そちらをご覧下さい。

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英文

(5) Following are our terms. We will not deviate from them. There are no alternatives. We shall brook no delay.

公式邦訳

五、吾等ノ条件ハ左ノ如シ
吾等ハ右条件ヨリ離脱スルコトナカルヘシ
右ニ代ル条件存在セス
吾等ハ遅延ヲ認ムルヲ得ス

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解説

ここからは1文ずつ解説していきます。

Following are our terms.

まず最初の単語のfollowingですが、「次に述べること」「以下のこと」という意味です。大学入試レベルの英単語帳では入試で最頻出の英単語としても紹介されることが多いです。

ourはもちろん「米英中の3カ国」のことです。

termは多義語として大学入試でもよく出てくる単語ですが、ここでは「条件」ぐらいの訳を充てておけばよいと思います。

termというのはもともと「範囲を限定する」という意味を持っています。そこから、

  • 意味を限定する→用語
  • 時間を限定する→期間
  • 条件を限定する→関係、折り合い

といった意味が生まれます。

さて、訳なのですが、この文は倒置のように考えて、our termsを主語のように訳した方がきれいな日本語になると思います。

私たちの条件は次に述べるとおりです。

「次に述べる条件」というのは、具体的には第6項以下の内容を指します。「ポツダム宣言」の受諾は、第6項以下の内容を守ることを前提として当事者が結ばれたものであると解釈することができます。これが日本は「無条件降伏」をしたのではなく、「有条件降伏」であると解する論者の根拠となっているものの1つです。

第6項以下の話については、一覧では以下のリンクから見ることができます。

ぜひ第6項からご覧ください。どんな「条件」が両国を拘束しているのかが分かります。

We will not deviate from them.

Weは「私たち」、つまり連合国のことを指します。

助動詞willは意志の意味ですね。「deviate」という単語のコアイメージは、「本来の道筋や期待されたルートから外れること」です。これを元に日本語訳に当てはめると、「逸脱する」という訳語が適切だと思われます。ちなみに、あまり日常生活で使われる単語ではなく、主に学術的な文章や正式な文脈で使われることが多い単語です。

themはtermsを受ける代名詞です。もちろん第6項以下の条件のことを指します。

和訳を示しておきます。

私たちはその条件から逸脱することはありません。

この2文からどんなことが読み取れるのかというと、日本も連合国も第6項以下に書かれる条件に拘束されるということが言いたい文だということです。

There are no alternatives.

alternativeは「他の選択肢」とか「代替案」といった意味があります。alternativeの語幹であるalterにはもともと「変わる」という意味があります。そこから、「他に変わるもの→選択肢・代替案」という意味になります。

他に変わる条件もありません。

この英文は、第6項以下に提示された条件以外に検討すべきものはなく、その条件に従うしかないという状況を示しています。

前の文と一緒に考えると、この文は条件について日本と連合国は遵守すべきであることを強調する働きがあると言えそうです。

We shall brook no delay.

brookは「~を許す」という意味、delayはここでは「遅延」という名詞です。shallは聖書や法律の条文にはよく使われる助動詞なのですが、もともとある「強い意志」というところから「命令」や「義務」といった意味を持たせる場合に使います。相当に強い米英中からの意思だというニュアンスを把握しておきましょう。

私たちは遅延を許すこともありません。

この文は、「これらの条件を受け入れることに対して、何の遅れも許されない」ということを強調しています。つまり、条件を受け入れる際には即座に応じなければならず、遅れることは認められない、という厳格な姿勢を示しています。

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まとめ – 「ポツダム宣言」第5項試訳

最後に第5項の全文をまとめます。

私たちの条件は次に述べるとおりです。私たちはその条件から逸脱することはありません。他に変わる条件もありません。遅延を許すこともありません。

第6項以下では、連合国が示す「条件」を1つずつ見ていくことにしたいと思います。

「ポツダム宣言」第5項で書かれた条件が第6項以下に具体的に示されています。第6項にはworld conquest(世界征服)という言葉が登場しますが、日本政府はどのようにこの言葉を捉えていたのかもここで解説しています。
KÁSHIRO Masahiro

日本まほろば社会科研究室客員研究員
日本スペイン法研究会会員
ブロガー、インスタグラマー、音楽家、授業をしない大手学習塾の校舎長
 
共著(日本スペイン法研究会の一員として)で、「現代スペイン法入門」(嵯峨野書院)と「Introducción al Derecho Japonés actual」(Editorial Thomson Reuters – Aranzadi)の一部を執筆。他にも、日本まほろば社会科研究室サイト内で、小学校や中学校や高校での社会科教育で役立つ多くのコンテンツを執筆(コンテンツはリンク先を参照)。
 
X JAPANやThe Last Rockstarsのリーダーとして活躍されているYOSHIKIさんのファンでもある。

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