「ポツダム宣言」の第8項を「カイロ宣言」の内容とともに解説!

ポツダム宣言現代語訳をしてみました 「ポツダム宣言」全文試訳
ポツダム宣言現代語訳をしてみました
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執筆 & 訳: 加代 昌広かしろ まさひろ (KÁSHIRO Masahiro)

ポツダム宣言の全文の内容を和訳してみるシリーズです。

今回は「ポツダム宣言」の第8項を和訳しながら解説していきます。同時に本文の中に出てくる「カイロ宣言」についても解説を加えます。なお、構成は、英文、公式邦訳、試訳とその解説の順になっています。

なお、ポツダム宣言が作成された背景については、「ポツダム宣言の全文をわかりやすく解説してみました」というコンテンツでくわしく解説しましたので、そちらをご覧下さい。

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英文

(8) The terms of the Cairo Declaration shall be carried out and Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu , Hokkaido , Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.

公式邦訳

八、「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ

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解説

The terms of the Cairo Declaration shall be carried out

試訳

Cairo Declarationで「カイロ宣言」と訳します。carry outが「実行する」という意味です。

「カイロ宣言の条項は実行されるものとする」という意味になります。

助動詞のshallがあるので、「〜するものとする」と意味が強くなっています。法律や聖書などでよく使われる助動詞です。

「カイロ会談」で出された「カイロ宣言」に書かれた事実について

さてここで登場した「カイロ宣言」について紹介しておきましょう。

昭和18年11月6日から7日にかけて日本などが中心になって行われた大東亜会議で出された大東亜宣言が出された直後に、アメリカ大統領のローズヴェルト、大英帝国のチャーチル首相それから中華民国の蒋介石の3名が、11月22日から12月1日にかけてエジプトのカイロにて行われた会談がカイロ会談です。その会談の中で、12月1日に出されたものがカイロ宣言です。ここではイタリアの降伏を受けて行われ、日本については下に示した史料のとおり、「日本国に対する将来の軍事行動」について、その目的や基本方針を定めています。

「ローズヴェルト」大統領、蒋介石大元帥及「チャーチル」総理大臣は各自の軍事顧問及外交顧問と共に北「アフリカ」に於て会議を終了し左の一般的声明を発せられたり
各軍事使節は日本国に対する将来の軍事行動を協定せり
三大同盟国は、海路、陸路及空路に依り其の野蛮なる敵国に対し仮借なき弾圧を加ふるの決意を表明せり 右弾圧は既に増大しつつあり

三大同盟国は日本国の侵略を制止しかつこれを罰する為今次の戦争を為しつつあるものなり 右同盟国は自国の為に何等の利得をも欲求するものに非ず又領土拡張の何等の念をも有するものに非ず

右同盟国の目的は日本国より1914年の第一次世界戦争の開始以後に於て日本国が奪取し又は占領したる太平洋に於ける一切の島嶼とうしょを剥奪すること並に満洲、台湾及澎湖ほうこ島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することに在り

日本国は又暴力及貪欲に依り日本国の略取したる他の一切の地域より駆逐せらるべし

前記三大国は朝鮮の人民の奴隷状態に留意し軈て朝鮮を自由かつ独立のものたらしむるの決意を有す

右の目的を以て右三同盟国は同盟諸国中日本国と交戦中なる諸国と協調し日本国の無条件降伏をもたらすに必要なる重大且長期の行動を続行すべし

「カイロ宣言」(1943年)https://www8.cao.go.jp/hoppo/shiryou/pdf/gaikou06.pdf

ただ、これをよく読むといろいろとおかしなことがある点に注目しておいた方がよさそうです。

  1. 「日本国より1914年の第一次世界戦争の開始以後に於て日本国が奪取 (strip)し又は占領したる(occupied) 太平洋に於ける一切の島嶼とうしょ→ドイツの植民地であった諸々の島々は、国際連盟の要求に応じて「委任統治」を行っているものであり、合法的に統治を行っている場所であり、そもそも「奪取」したものではない!
  2. 「満洲、台湾及澎湖ほうこ島の如き日本国が清国人より盗取したる (has stolen from China)一切の地域」→満洲については清国とは全く関係ない!台湾と澎湖諸島については下関条約という国際条約によって「割譲」されたものである。
  3. 「朝鮮の人民の奴隷状態に留意し軈て朝鮮を自由かつ独立のものたらしむるの決意」→そもそも下関条約で朝鮮を独立国と確認したのは日本の方であり、やがて日本が韓国の併合を行い、朝鮮の近代化に貢献した。

といった感じで、赤で記した部分が実際の内容です。ここに当時の法的根拠に乏しい史実が書き連ねられている点は注目しておかねばなりません。日本を悪者にしようとする趣旨がよく見えてきます。

なお、藤岡信勝先生の「条約で読む日本の近現代史」(祥伝社新書)という書籍の解説を参考にこの部分は記述をしています。

Japanese sovereignty shall be limited to the islands of Honshu , Hokkaido , Kyushu, Shikoku and such minor islands as we determine.

解説を条文解説の訳に戻しましょう。

sovereigntyは、「主権」という意味です。

Japanese sovereignty shall be limitedで、「日本の主権は制限されるものとする」と言っています。ここでもshallが使われています。では、どこに制限されるのかと言ったら、to以下に書かれていますよ。「本州、北海道、九州、四国及び我々が決定するような小さな島々に…」ということになります。such ~ as…という表現は大丈夫ですか?「…するような~」という意味です。asが主格の関係代名詞として働いています。

まとめると、「日本の主権は日本の主権は本州、北海道、九州、四国及び我々が決定するような小さな島々に制限されるものとします」となります。

まとめ – ポツダム宣言第8項試訳

まとめると、以下の訳になります。

カイロ宣言の条項は実行されるものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国及び我々が決定するような小さな島々に制限されるものとします。

ポツダム宣言の第9項についてわかりやすく解説します!
KÁSHIRO Masahiro [加代 昌広]

日本まほろば社会科研究室客員研究員
ブロガー、インスタグラマー、日本スペイン法研究会会員
 
法学の専門知識を活かし、日本とスペインの法制度について深く研究しています。日本スペイン法研究会の一員として「現代スペイン法入門」(嵯峨野書院)や「Introducción al Derecho Japonés actual」(Editorial Thomson Reuters – Aranzadi)の一部を執筆しました。

また、日本まほろば社会科研究室」内で、小中高校生向けの社会科教育に役立つ数多くのコンテンツの制作に協力し、自らもコンテンツの執筆を行っています(コンテンツはリンクをクリック)。

自身のさまざまな経験から得た「学びの楽しさ」を、日本まほろば社会科研究室からアップロードされるコンテンツを通じて共に学びを共有する皆さまに向けて伝えることを使命としています。

X JAPANやThe Last RockstarsのリーダーであるYOSHIKIさんの熱心なファンでもあります。

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