今回は国史(日本史)を学んでいく中で、どうして国の神話を学ぶ必要があるのか?についてわかりやすく解説していきます。
日本の神話は「古事記」や「日本書紀」という書物に書かれています。2つの書物は奈良時代に書かれています。合わせて「記紀(きき)」と言います。
歴史の専門家の多くは記紀を学ぶ価値を低く見て学校で神話の教育を行う必要がないという方が多いのですが、そんなことはありません。これについてくわしく述べていきます!
事実ではないかもしれないのに神話をどうして学ぶのか?
最近は少しずつ歴史の教科書の中に神話が書かれることが増えてきました。これはとてもよい傾向です。
令和2年から実施されている学習指導要領の中にも、神話についての学習の記述が存在します。
狩猟・採集や農耕の生活,古墳,大和朝廷(大和政権)による統一の様子を手掛かりに,むらからくにへと変化したことを理解すること。その際,神話・伝承を手掛かりに,国の形成に関する考え方などに関心をもつこと。
【社会編】 小学校学習指導要領(平成29年告示)解説
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387017_003.pdf
日本で最古の歴史書であるとされる「古事記」には、日本の肇国(ちょうこく)に至る過程が書かれています。同じぐらいの時期に編纂された「日本書紀」という歴史書にも同様のことが書かれています。
日本の神話を学校の中で学習しなくなったのは、先の大戦において日本が敗戦してGHQによる統治下の中で、「古事記」や「日本書紀」を「歴史的事実ではない」ことや「日本民族の意識を高揚させるため有害」のような扱いをしたからです。神話は教育現場から消されていきました。
しかしこれでは日本という国家がどんな考え方の元で成り立って肇国された国なのかを共有できなくなってしまい、個々がバラバラな価値判断の下で国の政策を議論したりすることになってしまいます。これでは議論なんてできません。
「古事記」や「日本書紀」に書かれていることの全てが史実ではありません。しかしご先祖さまの様々な智慧が結集されたストーリーであり、国づくりにあたってとても大切なことが書いてあります。
まほろば社会科研究室では、「古事記」をベースにしながらどのように日本が肇国(ちょうこく)されたのか?を何回かにわたって書いていこうと思います。
特に、小学校学習指導要領にも掲載されている
- 高天原(たかまのはら)神話
- 天孫降臨
- 出雲国譲り
- 神武天皇の東征の物語
- 九州の豪族や関東などを平定した日本武尊(やまとたけるのみこと)
などを中心に解説を行っています。
「肇国(ちょうこく)」とは?
ここで、「肇国」という言葉について説明しておきましょう。
「肇国」というのは、国を肇(はじ)めるということです。他の国を討ち滅ぼして作られた国家なのではないということです。他の国を滅ぼして新たな国ができることを「建国」と言います。現在の辞書では同じ意味で説明がされていることが多いのですが、実はこのように少し意味が違います。
日本は別の国を滅亡させて作られた国なのではなく、日本に初めて作られた国家なのです。それはとても古く、公式上では紀元前660年1月1日(現在の暦に直すと2月11日)に神武天皇が即位されて作られた世界一古い国なのです(ただ計算すると稲作が始まった時期とだいぶズレるので、実際には弥生時代や古墳時代に肇国があったという学説が有力ですが、それでも世界最古の国と言えます)。いずれにせよ、「古事記」や「日本書紀」が編纂された西暦712年や西暦720年ですら「古い」のですから、正確なことも分かっていないことは致し方ないとも言えます。だから神話で肇国を説明せざるを得ないのです。
むしろ、「古事記」や「日本書紀」を読む際は、書かれている内容が事実であったかどうかが重要なのではなく、前述したとおりで、日本人としてどのようなことを大切にしたらよいのか?を学ぶ書物としても読んでほしいなと思います。
まほろば社会科研究室では、ダイジェストでストーリーを紹介したいと思いますが、やっぱり全文を読んだ方がいい!最初から原本を読むのは大変だと思うので、マンガから入るのがいいでしょう。
よかったら読んでみてください!