今回は、平安時代の後期の時期から始まった院政について、わかりやすく解説してみました。
歴史は大まかなところから徐々に細かく勉強した方が頭に入ります。全体像から部分という把握の仕方がとても大切なので、以下のコンテンツを読んで、平安時代の流れの復習を行って以下の解説を読むことをオススメします。
摂関政治の衰え
平安時代の中期は、藤原氏による摂関政治が全盛を迎えていました。
しかしその勢いにも陰りが見え始めました。ここではなぜ摂関政治が衰えたのかを見ていくことにします。
藤原氏による摂関政治とは何か?
藤原氏による摂関政治の特徴は、以下の通りです。
- 藤原氏に生まれた娘が天皇と結婚をする。親戚になる。(母方の親戚のことを外戚と言う)
- 藤原氏出身の娘と天皇との間に子どもが生まれると、生まれた子どもは孫になる。
- 天皇が幼少の頃には摂政として、成人になると関白になって、天皇の政治を助ける。
藤原道長と藤原頼通の時代の後、藤原氏による摂関政治が衰えるのですが、その様子を見ていくことにします。
後三条天皇の即位
藤原頼通の時代に、第71代の後三条天皇が即位をしました。
後三条天皇は藤原氏と親戚関係にない天皇でした。藤原頼通は天皇の外戚になれなかったのです。藤原氏と親戚関係にない天皇が誕生したのは、第59代の宇多天皇以来(菅原道真が登場した頃)、実に170年ぶりのことでした。
後三条天皇は藤原氏が持っていた荘園を整理します。寄進地系荘園が増えると、政府の税収が減ります(寄進地系荘園についてはこちら)。藤原氏が持っていた荘園を整理すれば、税収が上がると考えたのです。これを延久の荘園整理令と言います。
このように天皇が自ら政治を行うことを天皇親政と言います。
さらに、後三条天皇は藤原氏に政治の実権を渡さないようにするために、天皇の地位を子どもに譲って院政を行おうと考えました。
しかし後三条天皇は皇太子に皇位(天皇の地位)を譲位してまもなく崩御(天皇が亡くなることを言う)しました。
院政が実現するのは、後三条天皇の後に即位した第72代の白河天皇の御代のことです。
院政とは?
院政の始まり
西暦1086年(応徳3年)に第72代の白河天皇が8歳の息子の堀河天皇に皇位の譲位を行いました。
天皇の地位を退くと、太上天皇と呼ばれるようになります。略して、一般的には上皇とも呼ばれます。白河天皇は上皇となります。そして、堀河天皇の政治を助けます。8歳の御子では政治を行うことはできません。だから、実質的には上皇が天皇の後ろ盾として政治の実権を握ります。これを院政と呼びます。この呼び名は、上皇が住む邸宅のことを院と言いますが、そこで行われる政治であるというところから名付けられた名前です。
白河天皇が堀河天皇に譲位を行ったことをもって、院政の始まりと評価されます。
院政の特徴
摂関政治は天皇の母方の一族(藤原氏)が実権を握る政治でした。しかし、院政は天皇の父方つまり天皇の父や祖父が実権を握る政治です。
院政が開始されると、白河上皇は新しい荘園を認めるようになります。多くの荘園が白河上皇のもとに集まるようになりました。また、上皇が認めた寺社勢力も荘園の寄進を受け、寺院は僧兵を抱えて勢力を拡げるようになりました。特に延暦寺や奈良にある興福寺は広大な荘園を持っていたと言われています。
白河上皇は、こんなことを仰ったと言われています。
鴨川の水 双六の賽 山法師 これぞ我が心にかなはぬもの
「平家物語」より
俗に、天下三不如意と呼ばれるものです。「鴨川の水の流れとすごろくのサイコロと山法師(比叡山の僧兵)の3つは白河上皇でも思い通りにならない」っていうことです。これに加えて、奈良の興福寺もより大きな勢力を持つようになりました。権勢をほこっていた白河上皇ですら困ってしまうぐらい、僧兵の存在は大きくなっていったというわけですね。
上皇が実質的な政治を行うということは、院(上皇のお住まい)が政治の舞台になることを意味します。院を守るために「北面の武士」を置き、平氏の一族を用いました。後の平氏の台頭につながります。また、力を持っている人のところに人は集まるので、院はどんどん勢力を付けていきます。
もちろん政治のトップは天皇なので、朝廷はこれまでどおり存在します。しかし院の力が強くなると、朝廷もその意向を無視できなくなります。やがて、これが院と朝廷が対立する構図になっていくこともありました。
院政の変遷
白河上皇の御代以降、院政は100年ほど続きました。その流れを簡単に見ていきましょう。
第72代 白河上皇
→第73代 堀河天皇→第74代 鳥羽天皇
第74代 鳥羽上皇
→第75代 崇徳天皇→第76代 近衛天皇→第77代 後白河天皇
第77代 後白河上皇
第74代の鳥羽上皇が崩御された後、皇族の対立や貴族の対立などが相まって、大きな戦いが都で起こります。それは別稿にて解説します。